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    kaminaroy14

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    kaminaroy14

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    シルヴァ×コンスタン
    まだ付き合ってないけど矢印は向かい合ってて無自覚な二人って感じ。

    #コンスタン
    constantan
    #シルヴァ
    silva
    #シルコン
    silicon

    雪溶けて春【シルヴァ×コンスタン】




    森の景色は直ぐ様形を変える―――。
    雪道ならなおの事あっという間に―――。



    微かに雪がチラついてきてこれは不味いとは思ったが、まさかこんなにも早く気候が急変するとは今までの経験からも推測できなかった。

    吹雪ブリザードだ。

    何度も踏み入れた山だが、まだまだ自分にも分からぬ景色を隠していたか、と、死地に踏み入れた頭は背筋が冷えるほど冷静だった。
    まぁ、頭の先から爪先まですっかり凍えていたのだが。

    「随分と今日は機嫌が悪いみたいだな。」

    膝より高く積もった雪が体力を無慈悲に奪っていく。
    目的地付近の気候は何時だって不安定ではあったが、此処までの仕打ちを受けることは今の今までの一度もなかった。
     しかし、引き下がるも突き進むも今の自分にとっては同じ茨の道を歩いているわけで、僅かな希望にと人がいる目的地へと重たい体を引きずった。
    頭に、肩に、積もる雪は衣服や髪が腹一杯に喰らい、体を冷やし重くのし掛かった。


    ああ、この酷い眠気は、もう駄目だろうか――…。


    目を開けているのも億劫で、微かに感じた花の香りを頼りに。















    カサ――…。


    カサカサ――…。


    「ん…………う……。」

    微かに身動ぐと森の香りと落ち葉が擦れ合う音。
    目を開くと、自分が小さな洞窟の中にいることがわかった。パチパチと耳に心地良い焚き火の音と、見覚えのある銀髪と小さな背中。
    以前、外の世界を知りたいと俺に色々な物語を語らせた彼だった。

    「シルヴァなのか……?」

    俺の声に驚いた彼は肩を揺らし勢い良く双眼がこちらを向け、そしてそれは直ぐに安堵したような温かなものへと変わる。

    「魔法の壁に異変があったっていうから、暗鬼が入ってきたんじゃないかって見回りに来たら風脈の森との境で貴方が倒れてるからビックリしたよ。あの辺りはいつだって予測がつかないからね。無事で良かった。」
    「やはりお前が…。また世話になってしまったな。」

    また、とは初めてこの地に踏み入れた時。クレバスに足を取られてしまい、落ちることはなかったが酷く負傷したときの事だった。
    運良くこの地にたどり着き、小川で傷口を冷やしながら途方にくれていた所を発見され、彼に治療してもらったのだ。
    今回もこうして助けてくれたのだ「困ったときはお互い様だ」といって。
    眠る俺に温かな毛皮のコートを被せてくれていたことにも、上体を起こしてようやく気付いた。

    「………」

    自分が裸であることも。

    これには少し驚いた。

    どこへやったのかと辺りを見渡すと、服達は外春風を浴びて気持ち良さそうに泳いでいた。
    どうやら雪水を吸った服まで面倒みられたらしい。
    仕方なく先程までかけられていた、自分が着るには幾分小さ過ぎるシルヴァのコートを、腰の部分で袖を縛るよう巻いてシルヴァの横へと移動する。

    「雪山の方から暗鬼が押し入ろうとしてね。防壁にするために気候を乱したんだ。わざとね」
    「そうだったのか。山に嫌われでもしたのかと思った」

    横に座るように促されて腰を下ろすと、森の青々とした春風とともに、焚き火の上の鍋でぐらぐらと煮込まれたスープの美味そうな香りが鼻を擽る。
    シルヴァはそれを一口毒味をすると、木の器にトロリとよそって俺に手渡してくれた。
    冷えて衰弱しきっていた体は目の前の温かな食事に歓喜して腹を鳴らす。

    「ふふ、好きなだけ食べて」
    「いただきます」

    ジャガイモや人参、蓮、ラディッシュにマッシュルーム、それらがごろごろと入った山羊のシチュー。
    山羊乳のチーズが少し癖の強い香りを放っていたが、慣れた俺には懐かしく食欲をそそるものだった。
    木の匙で掬い上げると、チーズが微かにとろりと糸をひく。
    ふぅふぅっと軽く息を吹き、冷ますとそっと、しかし大きな口で喰らう。

    「……ふ、……は」

    熱い、だが、胃は悦びもっと寄越せと唸る。
    ジンと内側から温まり、心臓が心地よく握り潰されるような感覚に陥る。

    「…ん……んぐ…………ふは、ん。」

    食べ進めれば熱さにも慣れ、適温になっていきガツガツと胃袋に流し込むことが出来た。
    器を空にすると、細い手指がもう一ついがかと伸びてきたので甘えることにした。
    次は、一杯目よりもゆっくりと味わうように具材を噛み締めた。
    シルヴァは暫く俺の食べる姿を観察していたが、満足すると自分もゆっくりと食事を始める。
     胃袋を満たし心身ともに温まった俺は、そのまま後ろに倒れ込んだ。死にかけることは多々あるが、今回もまたしぶとく生き延びることができた。

    ―――感謝しなくては。

    「……馳走になった。美味しかった。」
    「良かった。」

    器を片付けようとするシルヴァを見て投げ出していた体を起こすと、同じ様に空になった鍋を持ち自分も手伝うと告げる。
    近くの小川に2人で向かい、食器の汚れを洗い流し初めた。
    キンと冷たい、。
    次いでに顔も、と、乱暴にばしゃばしゃと洗った。
    そのまま頭まで水洗い流しているとシルヴァが背後から近付いてくる気配がする。

    「……どうした?」

    振り返りシルヴァの顔を見上げると彼は随分と意地の悪い顔をしていて、クスクスと笑いながら、とんっ、と背を押された。
    あまりにも急な出来事に体勢の整わない俺は、最も容易く浅い川に転がり落ちることになる。

    「……シル…ヴァ…?!」
    「っぷ、ふふふ。はははっ。」

    文字通り頭から冷や水を被ったわけだが、彼は大いに楽しそうで、呆気に取られた俺は行われた悪戯よりも腰に巻いていた彼の衣服を濡らしたことに慌てた。

    「ふふ、良いよコンスタン。貴方の服もすっかり乾いたはずだ。」
    「いや………そういう意味では。」
    「しっかり水浴びをしてきなよ。随分汗のにおいがしたよ。」

    言われてグッと返す言葉を無くしてしまった。





    その後は彼の住む里へと歩みを進めながら旅物語を聞かせた。
    彼の行った事の無い世界について。
    美しい城のある国は下層と上層で貧富の境を作り、熱砂広がる自由で広大な土地の夜は昼とは違い過酷な寒さが襲い、科学技術で出来上がったシェルターは鉄と煙が呼吸をしている事。

    そして、今の自分は現段階でたった一人の生き残りとされた空の末裔と共に、空飛ぶ巨像に乗って旅をしている事
    その物語のどれもが彼の目を輝かせるには容易だった。

    「貴方の物語は嘘偽り無いのに何処か現実味がなく面白いよ。僕も見てみたいな貴方の見てきた世界」

    彼の視線の先に広がる緑豊かな平凡な里。俺にとっては久方ぶりに田舎に帰ってきたようなそんな感覚だが、彼にとってはこのいつだって春風が吹き続けるこの里は一種退屈なのかもしれない。

    「お前も来ると良い。末裔のボウズならきっとお前を歓迎するさ」

    里に続く丸太で出来た階段を、滑らぬようにゆっくりと下る。
    隣を歩いていた彼が遠退く気配に振り返る。
    雪山とはうって変わって晴れ渡る空を見上げていたシルヴァが、ゆっくりと俺を見た。

    二人の間を、甘く噎せるような花の香が色とりどりの花びらと共に強く吹き抜ける。

    「コンスタン、貴方も歓迎してくれるかい?」

    その言葉の意味が一瞬わからず目を見開いた。
    俺が拒絶する理由もなければ、俺の意思など彼が巨像に乗る上で何の意味もなさないからだ。
    黙っていると「…やっぱり迷惑かな」と、小さく呟くので「そんなことはない。」と答えた。

    「お前と話している時間は俺にとって、貴重な旅の休息だからな。来るなら、巨像を案内しよう。わかる範囲でな」

    それを彼が歓迎ととったのかは定かではないが、フッといつも以上に穏やかに微笑んだ彼を美しいと思ったのは確かだ。
    里に続く道をまた二人で歩き出した。
    また数日後には巨像へ向けて旅立つことになる。
    その時のシルヴァは、俺へ御守りだと言って乾燥させた蔓を加工したチャームを手渡し大手を振って見送ってくれた。

    来るときとは違い、風脈の森の外は晴れ渡った静かな音の無い雪原となっていて、これはこれで照り返しが厳しい世界に変わっていた。
    風脈の森で仕入れた鹿の肉や皮や角を背中に山のように抱え、巨像との待ち合わせ地点へと足を進める。
    深々と降り積もった雪を掻き分け、ざくりざくりと。



    次はシルヴァに何を話してやろうか――……。



    その彼との再開が思いの外早いこととは知らず、春風に思いを寄せながら雪を踏み崩すのだった。





    END
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