視線② 見ていただけ春の風がまだ冷たい今日。
両面宿儺を飲み込んで通い始めた、この高専を卒業する。
最初から死刑宣告をされていて、それを受け入れて過ごしてはいた。だけど、まさか卒業式を迎えることが出来るとまでは思っていなかった。
「先生には言ったのか?」
先生に最後の挨拶をして戻ってきた俺に伏黒が聞いてきた。
「言ったよ。でも、俺のとは違った」
「あの男も、絶対、あんたのこと好きだと思ったんだけど」
2人とも最後の挨拶の内容は知っている。乱暴な口調でも、釘崎に心配されていることは伝わる。
先生の事、ずっと好きだった。
きっかけというきっかけはない。ただ一緒にいる時間に安心できて、何かしていても先生のこと考えていた。いつしか、それが恋愛の意味での好意だと気づいた。
1282