身勝手な告白をする葉山隼人告白された。
卒業式が終わり、次々と人が帰っていく中、俺は珍しい人物に声をかけられていた。
ちょっといいかな、と声をかけてきたそいつは俺の返事なんてどうでもいいみたいで、すぐ歩き出してしまう。
別に帰っても良かったが、流石に無視を決め込むのは、とため息をついてそいつを少し離れな距離から追っていく。
背中だけでも分かるキラキラしたあのオーラ。廊下ですれ違う女の子たちが、ほら!早く!と友達に急かされているところをみると、この卒業式というラストイベントに色々期待と気合を込めているらしい。
でもさっきからそいつは話しかけられるたびに、ごめんね、と申し訳なさそうに謝ってまた歩き出していく。それを後ろから見る俺。え?なに?試練か何かですか?俺があいつの通った道を通るたびにえ…みたいなヒソヒソ声に変わるのやめようよ……。傷ついちゃうよ…。流石のダイヤモンドメンタルでも衝撃が強すぎるよぉ……。
俺が訳もなく傷付いている一方で人がどんどんとまばらになる、というか俺がいつも飯食うところに向かってないか?
一通り廊下を歩いて、やはり俺の特等席があるところへつくと、そいつは振り返った。
目の前は曇った空とそいつが立っていて、笑っていた。
「ごめん、こんなところまで連れてきて。」
「いや、まあ…断る理由もなかったし…
それでなんなんだよ。こんな人がいないところまで連れ出して。」
なんだろう、恐喝かな?今頃になって俺を殴って金目のものを奪い取るつもりなのかな。急にお前とんでみろよ!とか言われちゃうのかな…。
まあそんなことないとは思うが、こいつに面と向かって何か伝えられるのは変に緊張する。
でもそいつは笑ったまま片手を出してきた。
「え??なんすか?金っすか?」
思わずヤンキーの舎弟みたいな口調になってしまった。いやこの手の出し方はなんかだせやテメェ、みたいなスタンスな感じではなく?
ビクビクしてると、俺の言葉に失笑して違う違うと俺の片手を掴んだ。
そいつの指は少し冷たくて、また少しだけ震えていた。
「え……」
するとすぐに手を引かれて俺はそいつの胸の中にすっぽりと収まってしまった。
あまりにもびっくりしすぎて声出ないし、てかめっちゃこいつの心臓なってね??いや俺の心臓じゃね?っべー!
戸部語が出てしまうくらい俺は内心焦った。
耳元に息が当たるたび、俺は身体を硬直させてしまう。
不思議と、拒否はできなかった。
「君のこと、好きなんだ。」
耳元でそう囁いて、俺はそれに単純にびっくりして少しそいつの体を押してしまう。
体の間に隙間ができるだけの距離、そいつは腕を俺から離そうとしない。
目と目が合う。
キラキラと輝いている、その瞳に俺は耐えきれなくてそらした。
それ以上離れることが出来ず俺の心音は加速する一方で、また耳元で囁かれる。
「返事」
目を逸らしたままで分からないけど、そいつは笑っていたと思う。
俺は逆にそれが怖くて、ふるふると震える唇から出た言葉は。
「え、……ええ…………」
それはただ単純に困って出てしまった声だった。
目の前の男葉山隼人は何を思って、どう行動したいのかが俺には理解不能だった。