8 -最終章-ギルモアの執務室へドラコルルを案内し終えた副官は、給湯室で紅茶を淹れながら静かに考えた。
…まさか気づかれていたとは…。
ドラコルル長官は、自分が将軍からどんな仕打ちを受けているのか全て見抜いていた。見抜いていたからこそ、俺にこの毒を渡した。あの将軍から解放してやると。
紅茶を淹れ終えた副官は、ポケットにしまい込んでいた薬包紙を取り出した。キッチンの天板には紅茶の入った2つのカップ。薬包紙を開き、その中身をカップに入れた瞬間、この紅茶はただの飲み物ではなく、恐ろしい凶器に成り変わるのだ。
『貴様にはずっと副官でいてもらう』
床に倒れ込み、この任を解くよう嘆願する自分の顔を将軍はつま先で持ち上げた。あの時の屈辱と絶望は、忘れられたものではない。自分には将軍の顔が、鬼か悪魔のように見えたのだ。副官は薬包紙を開くと、ギルモアの紅茶に毒を盛るべく、それをカップに近づけた。
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