冬のおにぎり屋。冬。
冬は美味しい食べ物がたくさんある。
夏のように、スープ類のネタにも困らない。
光熱費は高くなるけど、知り合いから冬野菜をもらったりお客様からも差し入れがあったり。
冬のおにぎり屋は大繁盛。
なのは、良いんだけど。
「み、御幸?」
「……」
「御幸!」
「……え?」
名前を呼ばれた気がして顔を上げると、見知った顔が心配そうに俺を見ていた。
「またぼんやりしてたぞ……」
クリスさんに言われて俺は苦笑いする。
「すいません……」
「包丁や火を使っているときは気をつけろよ」
「はい……」
悄然としながら、焼いていた鮭をひっくり返す。
よかった、焦げてない。
「まさか御幸がこんなに寒さに弱いとはな」
「人間誰でも寒さには弱いです」
寒いと動きが鈍るし判断力も低下する。
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