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    若干R18G
    愉快なマオタイはおりません

    #R-18G

    天命 来るもの拒まず去るもの逃さず。人々の理想をこね合わせて焼き固められた仙界は魔皇にして邪帝、賢者にして強者であるマオタイによって治められていた。
     皇は慈悲深い。「現世に疲れた。楽しい生を謳歌したい」「死ぬのが怖い。死にたくない」などの民草による数えきれない願いを知っては何も言わずに実現した。
     皇は冷徹だ。だが何事であれ甘い汁だけを啜ることはできないのだ。永遠の生を得た、と故郷へ戻った人々は仙界に吸われ尽くした故郷の荒廃に気がつくと目の色を変えて懇願した。
    「こんなはずではなかったのです! 私どもが生き延びようと、故郷の山は生きていけない」
     魔皇の御前、煌びやかな石畳に男は、何度も繰り返し頭を擦り付けては塩辛い水たまりを作っていた。所々に赤い刺繍の入った着物には見覚えがある。大方城門の傍で薄汚い露天商が売っていたものだろう。自然と眉間に力が篭る。下民め、誰が掃除すると思っているのか。
    「顔を上げよ」
     簾の奥から低音が響いた。男はサッと頭を上げた。そして期待に輝く目を見開いたまま、ごうという音に続いて首を飛ばした。咄嗟に屈んだ身体をよろよろ持ち上げる。
    「片付けておけ」
    「……は」
     再び静かになった城内で生臭いそれを拾い上げて肩に積んでいく。
     これで三日連続だ。どうしてこうも愚か者ばかりなのか。ここで在るためには何かを得るために他を捨てることでようやく受け入れられる。今の人間も数年前に全てを捨てて不老長寿を手にしたはずだが、周囲の変化に切り離された自身の存在に恐れを抱いたのだろう。よりによってそれを与えたマオタイ自身に慈悲を求めた不敬者は相応の報いを受けたのだ。クーリングオフなどないのだ。
     俺にとってそういった莫迦者ほど鬱陶しいものはない。どこまでも都合の良いマヌケな弱者のせいでこうやって尻拭いをさせられる。
    「コイツらに手を差し伸べる価値なぞあるのか?」
    「価値なぞない」
     ハッとして後ろを振り向いた。その拍子に担いだ肉塊がべちゃりと廊下に染みを作るがそれどころではない。人一人分にも満たない間を隔てて放たれる威圧感に痙攣するだけの手足を恨めしく睨んでゆっくり目を上へ持ち上げる。光を映さずこちらを見下ろす黄金色の瞳に息を飲んだ。
    「わが民にも、その救済そのものにも価値などない。天命を授かりし余がそれを実現することにのみ意味があるのだ」
    「余を真似て何か意味はあったか?」
     マオタイは微かに口を吊り上げ、息をするので精一杯の俺の肩を撫でると傍から通り過ぎていった。緊張が解けて振り向いたが、肉塊で汚れた廊下に西陽が差し込むだけでマオタイの姿はすでになかった。
     力の抜けた足を畳んでその場に腰をつく。真似て何か意味があったか、だと?
    「俺がいつ、貴様を真似た? 俺がいつ、己の全てを捨て去って何者かの言いなりになることを選んだ……?」
     ボケた廊下のタイルの模様は、呆れたような困ったような下がり眉を作って滲んだ。
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