おうるっくとディルガイ① その朝、ガイアは上機嫌だった。
天気はいいし、最近鹿狩りで売りはじめた人気のデニッシュも入手できた。
バターたっぷりに焼き上げたサクサクの生地に、練り込まれたレーズンが入っているのがたまらない一品。
数量限定だからすぐ売り切れる。朝は持ち場の見回りをしてから城門をくぐる騎士団員が味わえる確率は極めて低いのだ。
面倒な書類仕事は昨日のうちに終わらせたから、今日は残業もなし。
それに、なによりも。
手のなかの紙を大事に握りしめて、ガイアはふふんと鼻を鳴らした。今朝、エンジェルズシェアの前を通りかかった時にチャールズに呼び止められたのだ。
渡されたのはアカツキワイナリーの新商品のチラシ。不定期に発行されるこのチラシには、大抵いつもノンアルコール飲料なワイン、BARで飲めるカクテルなんかの新作が三、四種類ずつ掲載されている。
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