記念日 自分達にあてがわれている休憩室に誰もいないのを確認し、そっと自艦から持ってきたものをテーブルに取り出した。冬の炬燵アイスはちょっとした憧れだ。あいにくここに炬燵は無いから窓辺に置かれたストーブを前にして、だけど。カップの蓋を開けたところでドアノブを回す音がした。思わず手に持ったまま背後に隠す。
「あれ、あきいたんだ。……ところでなにやってるの」
やってきたむろとさんがソファの入口側に腰掛ける間、ずっと中途半端な格好で固まっていたらだれが見ても怪しい。至極当然な疑問と視線に観念し、持ったまま表面が少し溶けてしまったアイスをテーブルに戻しながらおずおずと答える。
「お腹を冷やすから駄目だと言われていて、寒い時期に食べることは無かったんですけど。今日は進水日[誕生日]だからやりたいことやってみようかなあって」
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