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    shimotukeno

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    フーイル小説の続き 本当はもっと書いてるけどこねこねしてるのでここまで なんかローマのコンビが出てきた 完成版は支部にあります

    フーイル小説の続き朝がやってきた。イルーゾォは朝冷えの中をそろそろと起き出して、ダイニングにやってきた。テーブルには昨日飾ったばかりの数枚の写真と花瓶に生けられた花が置いてある。暗殺チームのメンバーの写真と、フーゴの持っていたブチャラティ達の写真が一緒に並んでいるのもなんだか奇妙な気分だが、悪くはなかった。彼らも好い奴らだったということを、今ではイルーゾォも知っている。
     あの後、フーゴは寄り道をして、数枚のフォトフレームとアルバムを買ってきてくれた。アンティーク調のフレームの中で、永遠に若いままの皆が笑っている。
     イルーゾォはフレームを手に取り、布で磨く。置いてからせいぜい一晩、たいして埃もついていないだろうが、そうしたかった。
     写真を磨き終えると、イルーゾォはキッチンに向かいコーヒー粉をセットしたマキネッタと、牛乳を入れたミルクパンを火に掛ける。その間にマグカップと皿を出し、ビスコッティを二枚ずつ載せた。まだフーゴが起きてこないので、冷凍庫からアイスを取り出し、品のいいガラスのカップに盛り付ける。ビスコッティにアイスをつけて食べるのがイルーゾォの最近のお気に入りだった。朝食は早く起きてきた方が好きに盛り付けていいという取り決めをしている。
     その後も上機嫌でカフェラテを作り、朝食一式をダイニングに運んでいったが、フーゴはまだ下りてきていないようだった。珍しい。イルーゾォが朝食を運ぶまでダイニングにいないというのは初めてだ。
    「フーゴ? 腹でも冷やしたかぁ……?」
     階段から二階に呼びかけるとフーゴがものすごい勢いで駆け下りてきた。が、顔色がよくない。ひどく難しい顔をしていた。
    「ど……どうしたよ?」
     ぎょっとした顔でイルーゾォがきいた。
    「ええ、それが、ジョルノからの連絡だったんですが。ポンペイの資料がないのだそうです」
    「最初から入ってなかっただろ? ちゃんと言ったのか?」
    「もちろん。しかしジョルノが準備していたのは全て揃った資料だった……。ちょっとした隙に、何者かに抜き取られたとしか。保管していた部屋に外部からの侵入の形跡はなし、鍵をこじ開けた形跡もなし。恐らくスタンド能力か何かでしょうが……」
    「ふーん。ま、とにかく朝食出来てるからさ。早く食おうぜ。カフェラテが冷めちまうし」
     イルーゾォはのんびりとした口調でそう言ってフーゴの手を引くと彼は驚いたように振り払った。
    「そんな悠長な! あなたが生きていることも、スタンド能力も、組織の機密文書を盗み取るような奴に知られたってことですよ!?」
     イルーゾォは軽いため息をつくと、眉尻を下げて微笑んだ。
    「落ち着けって。朝食食う時間くらいあんだろ。オメーみたいに頭使うやつは、ちゃんと糖分補給しなくちゃいけねえだろ? それにもうとっくに知られてるんだ。いずれ向こうから接触を図ってくるだろうよ。あれ読んだのに、パープル・ヘイズの本拠地にノコノコやってくるバカもいねえだろうしな」
     イルーゾォの言葉にフーゴも段々落ち着きを取り戻したようで、おずおずとイルーゾォの手を取った。
    「そ……そうですね。ごめんなさい。取り乱して……痛くありませんでしたか?」
    「ああ。こういう時、焦りは禁物だぜ。まあ、心配してもらえるってのも悪かねーけどな」
     イルーゾォが顎をくいとあげて、満更でもなく笑う。
    「なんだか、急に頼もしいです」
     ダイニングルームへ歩きながら、フーゴはイルーゾォの顔を見上げた。するとイルーゾォは今度は不満げに口を尖らせる。
    「おいおいおい、俺だってそれなりに場数は踏んでるんだぜ? 頼りにしてくれなくちゃ困る」
    「何言ってるんですか。最初から頼りにしてますよ」
    「そ……そお?」
     イルーゾォは髪の毛を指先でいじくりながら、目を泳がせる。彼の一挙一動を見ながら、フーゴも笑顔になった。イルーゾォは秋の空模様のようにころころと表情が変わる。黙っているときは本当に静かだが、こちらから何か働きかければ、打てば響くというのだろうか、さまざまな音色で返してくれる。それが嬉しくて、子供っぽいと思いつつ、つい構ってしまいたくなるのだ。やにわにイルーゾォの手を握ってみる。イルーゾォは一瞬指をびくりとさせて、すぐに握り返してくれた。



     二時間後、フーゴの元に一通のメールが送られてきた。差出人は不明。しかし、何をしでかした者かはすぐにわかった。メールは『ポンペイの資料を返したい』という内容だった。
     待ち合わせは午前十一時、ネアポリス市内の立体駐車場。返却の条件は、こちらの指示に従うこと、そしてイルーゾォを伴って来ることだった。
    「やはりイルーゾォの身柄が目的か……。しかし、ジョルノに知らせるなとは書いていないんだな」
    「なんか臭うなァ。だが、すぐ出ないと間に合わねえ。出発しようぜ」
    「ええ。イルーゾォ、鏡を」
    「わかってる」
     イルーゾォは自室に入ってから三分後に戻ってきた。二人は家を出て、車をとばして指定された立体駐車場に向かう。道すがらジョルノに連絡をすると、彼は近くを回っている組織のメンバーに二人を追わせると言ってくれた。
     立体駐車場に駐めると、また同じ差出人からメールが届く。どこかから監視しているのだろう。車で十分ほど離れた海沿いのホテルに来いという指示だった。車を発進させると、ほとんど同時に別の車も発進した。恐らく、ジョルノが遣わしたメンバーだろう。しっかりついてきているようだ。だがそれは向こうも知るところである。むしろ、尾行者を想定してこの立体駐車場を指定したと考えていいだろう。
     指定されたホテルは一等地に構える瀟洒な建物で、いわゆる五つ星ホテルだ。こんなホテルで白昼堂々荒事に発展しかねない交渉を行うとは考えにくい。何か狙いがあってのことだ。路肩に車を駐めて中に入ると、ドアの傍にいた従業員がフーゴに声を掛ける。
    「パンナコッタ・フーゴ様ですね? お客様よりお手紙をお預かりしております」
    「あ、ああ……ありがとう」
     ホテル内はやけに混雑していた。それもそのはずである。土曜日と言うこともあり、午前十時半からロビーでコンサートが行われていた。宿泊客も、そうでないものも集っている上に、ホテル前を歩く通行人もコンサートが行われていると知って次々と入ってくる。おそらく、最初の立体駐車場で尾行者を確認し、このホテルでその尾行者を撒かせる狙いがあるのだろう。
     フーゴとイルーゾォは人波に流されながら、手紙を開封する。中には部屋のカードキーと、当然のごとく次の指示が書かれていた。


    「せっかくのオフだってのによォ~ボスの奴……。重要取引だっつーけど。フーゴの野郎、何やってんだ?」
    「さーな。そんなこと知らねー。でも、上手くいきゃあバカンスが待ってんだろ? どこでも好きなチケットを用意してくれるって話じゃねーか」
     せっかくのオフの日に、急遽任務を入れられた気の毒なサーレーとズッケェロは車内からホテルを覗く。ポルポの隠し金争奪戦に敗れて病院送りになっている間にブチャラティチームの新入りがボスを倒し、成り代わったと聞いて面食らっていた二人だったが、仕事も報酬もちゃんとくれるので、二人はそれなりに満足していた。サーレーも口では文句たれながら、埋め合わせのバカンスに期待を寄せている。
    「とりあえずホテルに入ったあのお二人さんを追っていくか」
    「急いだ方がいいかも。なんか、どんどん人が入っていくぜ……」
     ズッケェロはホテルの入り口に次々と人が入っていくのを見て、心配そうな面持ちになる。
    「うわ、イベントやってんのかよ! 急げ、見失うぞ!」
    「応援頼むか……」
     この後待っている楽しいバカンスに早速暗雲が立ちこめるのを察して、二人は顔を見合わせるのだった。

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