返したい想い (あそこにいたのか…)
近くの村の子供達と遊ぶ弁慶の姿にほっと胸を撫で下ろしながら義経は愛する人に一歩一歩と近づいていった。
「弁慶」
名を呼ぶと「姫!」と笑ってくるりと義経の方に振り返る弁慶。その表情があまりにも愛らしくて、飼い主に構ってもらえて嬉しくてたまらない犬っころのようで思わず義経は笑ってしまった。
「姫…?いかがなさいましたか」
「ふふっ、ははっ…いや、お前が私を見て犬っころのように笑うものだからおかしくてな。弁慶、お前私のこと好きすぎるだろう」
ははっ、とおかしくて笑うと義経が思っていたよりも真剣な声が頭上から降りてくる。
「それは当然のことです。姫」
「え、」
「あなたをお慕いしているのは当たり前のことです。あなた様のことを殿としても、そして姫としてもお慕いしております。愛しています」
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