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    hokui39

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    hokui39

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    大黒柱の日のつもりで、入れたい要素がまとまらなくて頓挫した遊修。

    甘やかしていいよ 空閑遊真には、最近気になっていることがある。
     それは、修がヒュースを構いすぎじゃないかということだ。

     捕虜から自分のチームの隊員に立場が変わったのだから、隊長として気にかけるのは当然だ。しかし、それがどうにも気になっている。
     そのことを周囲の人間にこぼしてもみたのだが、どうやら気にしているのは遊真だけのようなのだ。というのも、先日、師匠である小南と戦闘訓練で2人きりになったとき、休憩中にドリンクを飲みながらふと思いついてその話題を振ってみた。
    「修が? べつに、ヒュースは誰といてもあんなだから、ぜんぜん気にならなかったわ。みんなと同じようなもんじゃないの?」
     小南からは迷う余地もなく即答された。さらに、「一番構ってるのは陽太郎だし、なんならあんたの方がよっぽど絡みにいってる感じあるわよ」とばっさり切られたので、「たしかにそのとおり」と神妙に頷かざるを得なかった。
     遊真にとって見ればヒュースとは遠征までの協力関係ではあるが、チームのためにも、オサムのためにもしっかりフォローしようと思っている。何より個人的にもやれることが増えてわくわくする気持ちが大きかった。それに、いざチームメイトとして付き合ってみれば、態度がでかいのはそのとおりだがなんだかんだ真面目なやつだし、なかなか負けず嫌いなところもあってつい構ってしまうことは身を以て実感している。
     そう、面倒見の鬼の修だけではなく、みんな構っている。
     それなのに、修が構っているところがとりわけ目について、胸にもやもやとした何かが燻ぶっているのはなぜなのか。


     そんな気持ちを抱えたまま数日が経った。遊真の姿は本部のラウンジにあった。予定していた時間きっかりで対戦を終えたので、一緒に立ち話に興じていた緑川から振られた話題に、怪訝な顔をしていた。
    「やっぱりさ、玉狛第二の大黒柱はゆうま先輩だよね!」
    「ん? ダイコクバシラ?…て、なんだそれ」
    「えぇ……あー、まあ、俺が言いたいのはチームの中心で支えてる人が遊真先輩だよねってことだよ」
    「ふむ、中心で支える…ね。おれからしたら、うちの中心ってオサムのことだと思うけどな」
     結成のきっかけを作ったのはオサムだし、と遊真は首をひねる。
    「え~、三雲先輩じゃ、柱!支える!って感じしなくない?」
    「ダイコクバシラは柱っぽくないとだめなのか? というかしゅんの言い分だとおれは柱っぽいということに……? 日本語はむずかしいな」
     遊真の返しのどこかがツボにはまったのか、緑川は無邪気にけたけたと笑いながら言葉を続ける。
    「だってエースだし、遊真先輩がいなきゃ点取れないでしょ? そーゆーとこで大黒柱だよねって言いたかったんだけど……まあ、遊真先輩が三雲先輩中心なのはもうしょうがないか」
     緑川がやれやれと肩を竦めたところで、タイミングよく待ち人が到着した。
    「空閑、ごめん! けっこう待っただろ」
     呼ばれた方にぱっと振り向いた遊真が、微笑んだ。
    「おう、オサム。そんな待ってないよ」
    「お。お迎えが来たんなら、俺はこれで! 三雲先輩、あとよろしくねー」
    「うん?」ときょとんとする修を置いて、緑川は何やら遊真にこそっと耳打ちしてから、「じゃあね!」と手を振ってそそくさと立ち去った。
    「……空閑、緑川に何かしたのか?」
    「いーや、よくわからん。ただ話してただけなんだけどな。まあ、いいから早く帰ろうぜ」
     遊真は早く早く、と修をせっついて支部への帰路についた。今晩の献立は小南のカレーなのだ。


     夕食の後、修は自室でランク戦のログを見るのに夢中になっていた。
     「オサムいる? 時間いいか?」
     すっかり没頭していた修は、外からの声がけにはっとして返事をすると、開いたドアの向こうから遊真が「ちゃんとノックはしてたんだぞ? しかも何回か」と言いながらするりと部屋に入った。
     自然な動作で軽く断りを入れてから、オサムのベッドの端にぽすんと腰掛ける。
    「なんかあったか?」
    「ううん。とくにないんだけど、なんとなく。ちょっとオサムと話がしたい気分で」
    「そうか? じゃあ、折角だからちょっとおまえの意見を聞かせてくれ」
     用事がなければ部屋を訪ねないというような仲ではないので、しばらくは何のログを見ていたとか、ログを参考にした上で考えられるいくつかの戦略や予想される展開とか、ざっくばらんに意見を交わしていた。
     ある程度会話が落ち着いたところで、修がはっとして「結局ぼくの話しかしてないけど」と遠慮がちに切り出した。自分だけ満足したことが忍びなくなったのだ。遊真は「うーん」と少し迷ってから「じゃあ、オサム、こっち」と自分の隣をぽふぽふと叩いた。
    修は首を傾げたが、深く考えることでもないのでさっさとデスクチェアから立ち上がって、指定されたところへ腰掛けた。
    「あのな、おれはチームのダイコクバシラらしい」
    「……大黒柱?」
    「しゅんから言われたんだ」
     遊真はにこにこしながら答えたが、修は唐突な話にいまいちピンと来ていない様子だ。補足すると、緑川が言うことには、エースとしての戦闘の強さはもちろん、チームの戦略とチームメイトを支える大黒柱、とのことらしい。
    「それはたしかに、そうだなあ。空閑にはいつも助けられてるよ。ありがとう」
     ストレートに礼を言われた遊真がうれしそうに続ける。
    「というわけだから、おれには甘やかされる権利がある!」
    「んん?」
    「ダイコクバシラとしてすごくがんばってる分甘やかされる権利があるって、緑川が言ってたぞ」
     今日の別れ際に耳打ちされたことを包み隠さず伝える。
    「ふっ、なんだそれ」
    「おれもよくわからん。けど、使える権利は使おうと思って」
    「そういうものか?」
     遊真がうんうんと力強く頷くと、修がまた軽く笑った。
    「でも、甘やかすってよくわかんないけど……」
    「オサムが思うように、存分にやってくれ。たぶん、何されてもうれしいから」
    「うっ……そういうの、一番困るんだからな」
     修はそういいながらも、ちょっと顎に手を当てて視線をさまよわせてから、迷う素振りを見せつつ自分の太ももをぽんぽんと叩いた。
    「ど、どうぞ?」
     目をまるくしたのは一瞬のことで類まれなる反射神経で太ももに突っ込んだ遊真は、おでこをぺち、とやさしく叩かれた。それでもすぐに修がぎこちない手つきで頭を撫で始めたので、満足気に目を細めた。修がこういうことをし慣れていないのがよく分かって、なおさら気分がいい。
    (オサムに世話を焼いてもらうのもいいけど、今のおれにはこっちのがいいかも)
     結局もやもやとした気持ちの原因はわからなかったけれど、もう遊真の心はおだやかだった。

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    Replies from the creator

    hokui39

    TRAINING遊修が恋だと気付いたのは目が合ってからそらされたとき です。
    #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/558753
     人と話すときは目を見て話すものだ。
     そう言う人がよくいるけれど、それが礼儀だかららしい。
    「包み隠さず話そう」という相手への意思表示なのか、真剣に聞いていることをアピールしているのか。あるいは、言葉から読み取ることができない情報を得るための合理的な術なのか。そのあたりは人によって主張がさまざまあるようだ。

     これを踏まえて言うならば、オサムは意外と、話していて目が合わないことがわりとある。作戦とか先のこととかを考えながら話しているとき、あとは、これは人間の習性だろうか、過去を見ているときもだ。(生返事のときもあるが、そういうときはおれの声すらまったく耳に入っていない)
     もちろん、あのまっすぐこちらを捉える翠の瞳と目を合わせて話すのは好きだ。でも、おれはオサムと話すときは、目が合わなくても、顔が見えなくたって平気だ。オサムの声にはそのままの感情がのっている、というのだろうか。決意も、不安も、後悔さえも。こと戦場においては弱点とも言えるだろうけど、言葉と気持ちが合っている感じがして、安心できるんだと思う。答え合わせをしたわけじゃないけど、きっとそうなんだ。
    1841

    hokui39

    DONE高校1年生の遊修が別クラスだったら
    ガトーショコラ 移動教室のために1階の廊下を通ったとき、冷え切った空間にチョコの甘い匂いが漂っていることに気付いた。そういえば、今日は空閑のクラスが調理実習の日なんだったと、ぼんやり思い出した。


     高校に上がって、空閑とは別のクラスになった。
    ふつうに考えればその可能性はあったのに、なぜ同じクラスになるような気がしていたんだろうか。4月にそれが現実となったとき、自分でも思った以上の衝撃を受けたのを覚えている。
     一方、空閑はあっさりしたもので、「なんだ、オサムとはちがうクラスか」とだけ言って教室に向かって歩き出した。そして、中学校のときにそうだったように、やっぱり僕なんかよりよほどクラスメイトと上手くやっているようだし、幸い空閑の学力についても周りが世話を焼いてくれているらしい。それは喜ばしいことのはずだ。それなのに、胸がもやもやするのを感じているから、きっと素直に喜べていないんだと思う。日常生活のこともボーダーのことも、僕が教える前に教えてくれる人はたくさんいるし、ついに学校でのことも一番に教えるのが自分じゃなくなってしまった。きっと、ぽっかりとそのスペースが空いてしまったような気持ちなんだと思う。たぶん。
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