ただいまの贈りもの「あら、ダイ君! おかえりなさ……」
言い終わる前に抱きすくめられた。ぎゅうっと力強く。
「ちょ……ちょっと、どうしたの? ダイ君……」
「…………」
ダイ君は何も言わないであたしを無言で抱きしめたまま。頭に頬を摺り寄せているのがわかる。
なにかあったのね、きっと。
時折ダイ君は、やるせない思いを胸にかかえたまま帰ってくることがある。そんな時はたいてい、こうして無言で抱きしめられる。言葉として発することもまた彼にとって負担になるのだろう。
だからあたしも何も言わない。
あたしの言葉を求めている時は、ダイ君は言葉や眼差しでなにかを伝えようとしてくれるから。
今はきっとこのまま彼の腕の中にいるのが一番。あたしを抱きしめることが、なんらかの癒しになるのなら、それでいい。
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