向日葵 枯れて焼けたそれが風に揺すられていた。
チチ、と声を上げて雀たちが項垂れた花芯の跡をつつくたび、何粒かの黒い種が地面に溢れる。足を止めてその様子をしばらく見つめていた。
「……ウ?」
白い植木鉢には雨が跳ね飛ばしたのだろう泥の筋がこびり付いている。
「リンドウ!リンちゃん!」
「あ、悪い」
水面を隔てたように遠くから聞こえていた声はだんだんと強さを増し、呼び掛けられていたことにようやく気づく頃には周囲にしっかり響く程度になっていた。大声に驚いたのだろう雀たちがご馳走を諦めて飛び去っていく。ぼんやりしていたことを軽く詫びると、相手の顔には困ったような微笑みが浮かんだ。
「ゴメン、ボーッとしてた」
「リンちゃんさ、たまにリンドウワールドに行っちゃうよね」
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