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    いぬさんです。

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    いぬさんです。

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    勝手に再開します。11話目です。

    11私は必死で修行(?)した。


    私は私の球体を「バリア」と呼んでいたので、それの強化を図ることにした。
    私が無意識にバリアの中に入れる人間に許可を出しているのであれば、既に許可している人間でも意識的に不可にできるのではないかと思い至ったのだ。
    不可にできれば、誰も私に触れる事はできない。悟の無限みたいな感じじゃないかと。

    物理的な接触を断ってみようというこころみ。人の体温は何にも替えがたい。私もそれは知っている。接触があるから特別に思えるのだ。私は悟と接触しすぎた。接触回数を減らせば、悟も成長するにつれ私より他の人に気が向くかもしれない。
    時間はかかるだろうが、バリアを薄く薄くして私に接触する時間を短くすれば上手くいくと思った。

    子供の浅はかな考えだった。
    しかし、最善と思えた。
    出産に立ち会い、大事に大事にしてきた弟と結婚するなど、5年生の私にはあり得ない話しだった。悟が立派な大人になって、素敵なお嫁さんをもらうのを祝福するのが妥当だと思っていた。
    そして私も、非術師として平凡に結婚し、子供を生みたいというささやかな夢を持っていた。

    どうやら全ての人やモノとの接触を不可にできていると確信できたのは6年生になった初夏だった。夏休みは両家で一週間の国内旅行に行くのが恒例だったので、なんとかそれまでにはと思ったが予定より早く私のバリアは完成した。

    初潮を迎えたあたりから私の体も女性へとかわりつつあったので、ママに相談して悟とお風呂に入る事はなくなっていたし(悟は相当ゴネた)、くっついてくる悟から少しずつ距離をとってきた。


    意を決して本家の門をくぐった金曜の夜。
    いつも通りの訪問。
    部屋でマンガを読んでいるという悟に食事の時間だと告げに行った。
    マンガ本から顔をあげた悟は固まった。

    「実、俺をなめてんの?」

    今度は私が固まった。

    「さとー」

    そう言いかけた瞬間、悟は爆発した。

    「六眼なめてんのか?!六眼教わんなかったか?!俺が!見えてるのは!」

    私は何も言えなかった。

    「あぁ、六眼なんて何百年も居なかったから、もう誰も知らねんだな……」

    悟は静かに言った。

    「全部、色があるんだ。実は『蒼』見ただろ?あんのふうに皆の呪力、術式には色があるんだ。すごく鮮やかに見えるよ」

    「敵対してるのか好意的なのか、それでも色は変わってくるけど」

    「実のはいつも桜色なんだ。バリアも透明じゃないよ」

    「聞かれたこと無かったから言わなかったけど、今度じいちゃんにも教えてやろうかな」

    「あとな、俺は母親の腹の中にいる時から実の声を聞いてたよ。全部覚えてる。早く会いたかったよ。」

    「俺が医術師に連れて行かれそうになった時、実の声が聞こえて桜色の光に包まれたのも覚えてる。」

    覚えてるなんてそんなわけないー

    「ようやく会えたって……安心したのも全部……」
    「実が本家を出て帰るって言った時も泣く事しかできなくて……」



    悟が泣いてるよ


    碧い瞳から
    大粒の涙が


    「今のお前のバリアの色が何色か教えてやろうか?!」
    「黒だよ!黒!真っ黒!なんも見えねぇよ!!」
    「全身真っ黒なバリアで来るとかなめてんだろ
    !!」
    「俺をそんなに拒否したいならもう来んな!今すぐ出てけ!!!」


    静かに扉を閉めることしかできなかった。
    純粋に真っ直ぐに自分にぶつけられた怒りに恐怖で震えがきた。





    悟を泣かせるのはいつも私だ____






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