秘密の箱庭 一日の授業の終わりを告げるチャイムが高らかに鳴り響くと、学校内はにわかに賑やかになった。押し込められていた環境から解放されたように、わっと騒ぎだす学生たち。これから明日の朝までは、彼らの時間である。
高校生の放課後。それも金曜の授業が終わったばかり、これから来週月曜までの長い自由時間、青春の最前線ともいうべき時を前に、彼ら彼女らが色めき立つのも当然だ。教室の中は一気に秩序を失い、今日一番の盛り上がりを見せる。
今日どうする? とか。あそこのお店の新作見に行こ、とか。そんなことを口々に言いあってはきゃあきゃあと騒ぐ同級生たちの中で、夏油傑は一人のんびりと鞄を片付けていた。
「夏油はどうする?」
前の席の同級生が振り返ってそう尋ねる。今日はゲーセンに行こうと思っているのだと、彼はにこやかに言う。顔を上げた夏油は、ゆるく首を横に振った。
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