「教授~……ほんっとうに大丈夫なんでしょうねェ!?」
褐色の腕を擦りながら、間宮陣一郎は喚いた。その声には怒りと不安が入り交じっている。
都心から遠く離れた山にある小さな限界集落……の更に奥に陣一郎はやって来ていた。
といっても別に遊びに来ているという訳ではなく、研究の為にだ。
大学院で所属している民俗学研究室のフィールドワークの一環である。
研究室といっても自分と教授の二人しかいないし、研究費も僅かばかりの貧乏研究室だ。ここまでの旅費だってほぼ自腹である。しかも、自分の研究や論文執筆やアルバイトの合間に教授の身の回りの世話や、こうして趣味……もとい研究のお供もしなければならない。今回だってそうだ。
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