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    saku2442

    pdl 荒新の字書き
    幸せな推しの妄想をするのが日課です

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    saku2442

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    高校生荒新
    お互いの進路が決まり、離れることが不安でたまらない新開さん

     トクッ、トクッ、と規則正しく刻まれるリズム、同時に深く静かな寝息も耳に届く。いつもならその心地よく安心出来る音に、すぐに眠気はやってくる。なのに今日はどれだけ時間が経っても眠れそうになかった。
     ――その理由はよくわかっている。
    「オレ、洋南に決めたわ」
     一ヶ月前、靖友に告げられた進路。その時は「そっか、頑張れ。靖友なら大丈夫」と笑って言えた。けれど不安の種はここで蒔かれたらしく、そいつはいまオレの中で根を張り始めている。
     このところ気づけば、東京と静岡の距離や交通手段、新幹線やバスの料金なんかを調べていた。そうしてわかったのは、新幹線で一時間半、バスだと三時間はかかるということ。遠距離と言うほど長くはない、それでも部屋を出て数歩で会えるこの距離よりは絶対に遠い。会いたい触れたいと思っても、すぐには会えない触れあえない、そんな距離だ。この距離に阻まれて、オレ達はうまくやっていけるのだろうか。
     どんどん不安だけ募っていく、でも靖友のこれからをオレが縛る権利なんかない。一緒にいたい、そんな理由だけで自分のこれからを決めることだって出来なかった。
     二人の未来のため、お互いの決断を曲げることは絶対にしちゃダメなんだ。そう思えば思うほど、オレたちの恋人としての未来は見えなくなっていく。
     ずっと考えていても出てこない答えに、涙が溢れそうになる。ぎゅっと靖友にしがみつき泣くのを堪えていると、んっと小さく息が詰まる音が聞こえてきた。
    「……しんかい、ねれねぇのぉ」
     寝起き独特のかすれた声に、少し舌足らずな喋り方。こんな状態じゃなかったら、すぐにでもその顔を覗いて「靖友、可愛いな」って言えた。でもいまは無理、たぶん靖友の顔を見たら泣くのを堪えられなくなる。
     このまま寝たふりして、靖友がもう一度眠りにつくのを待とう。そう考え靖友の胸に顔を埋め、じっと動かずにいたらふわりと温かな手が頭を撫でた。
    「なァに、なんか不安になった?」
     さっきよりもハッキリと柔らかく聞こえた声に、ずっと我慢していた涙がついに零れる。靖友の首に腕を回してきつく抱きつけば、何も言わずに抱きしめ返してくれた。
    「新開、なんでも溜め込むなって」
     しばらくオレの頭を撫でながら、抱きしめてくれてた靖友がポツリと呟く。
    「離れちまったら、オレはこうやっておまえをすぐ抱きしめてやれねェんだ」
     靖友の言葉に、自分達の間にできる距離を思ってまた胸がぎゅっと苦しくなる。
    「だから、思ったことは全部言え。じゃねェとたぶん続かなくなる」
    「……やすとも」
     まるで別れを示唆するような言葉に、思わず顔を上げて靖友を見つめた。かち合った視線の先、靖友は目を細めて微笑んでいる。
    「いいか。不安も、ワガママも、情けねェ弱音だって、我慢しないで全部オレに言え」
     するりと靖友の手が頬に伸びて、見つめる瞳は柔らかく揺れていた。
    「いまさらそんなんで、おめーを嫌いになんかなんねェし。……オレはな新開、おまえがそーやってひとりで抱えてんのがヤなんだヨ」
     頬をなぞるように靖友の親指が滑って、目尻に溜まった涙を掬ってくれる。
    「やすとも、オレ……靖友と離れるのイヤだ」
    「ん」
    「でも、靖友のこれからも、……オレのこれからも、大事だからそんなこと言ったらダメだって」
    「んでだヨ」
    「だって、言ったって靖友はオレと同じ大学行ってくんねぇだろ?」
     堰を切ったようにオレの弱音がぽろぽろと口をついて出て、もうこれ以上はダメだと思っても止まらない。
    「だったら言うことに意味なんかねぇし。オレと靖友のこれからだって、どーなんのかもわかんねぇし」
     一度は止まった涙がまた溢れてくる。靖友の肩に顔を埋め、必死で堪えても一向に止まる気配がない。
    「バーカ」
    「……バカってなんだよ!」
    「バカだからバカって言ってんのォ。おまえさ、オレがそう簡単に手放すと思ってんのか?」
     ポンポンとあやすように背中を叩きながら、靖友は耳元で囁いた。
    「そんなの、先のことはわかんないだろ。大学行ったら色んな子がいんだぜ」
    「どんなヤツだっておまえにゃ敵わねェつーの」
     ぐいっと両頬を靖友に掴まれ、無理やり顔を上げさせられる。どうしても止まらない涙が、靖友の手のひらを濡らしていく。ふっと口許を緩めた靖友の顔が近づいて、オレの目尻に唇が触れた。
    「オレは、おまえが思ってるよりずっとおまえに……新開隼人にホレてんだヨ。ま、オレだって不安がないつったら嘘になる」
     コツリと額を合わせ、靖友はふぅと息を吐いた。
    「でもなァ、オレの気持ちはぜってー変わんねェ! だから新開、おまえはなーんも考えねェでオレのこと信じときゃいいんだ」
     ニッと口角を上げた靖友が、啄むようなキスをくれる。そして思い切り抱きしめられ、耳に甘い声を吹き込まれた。
    「しんかい、好きだ」
     ふわりと胸に柔らかな明かりが灯る。靖友の言葉はいつだってオレを照らして、導いてくれるんだ。先のことはまだわからない。でもオレの気持ちだって絶対に変わらないから、だから靖友……これから先もずっと、ずっとオレを好きでいてくれよ。
     ――信じてるからな。
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    saku2442

    DOODLE大学生荒新
    お昼時にメッセージのやり取りをする荒新のお話。待宮さんも登場します。
    だって、君は特別。
     うどんを一口すすったところで、テーブルの上のスマホが震えた。すぐに止まったそれは、通知を知らせるためにピカピカ光る。箸を置き、代わりにそいつを手に持った。素早くロックを解除し、送り主を確認すると想像していたヤツからのメッセージ。
    『うまそうだろ!』
     その一言と共に送られてきた写真。そこには分厚いカツの乗ったカレーが写っていた。昼食にしては中々のボリュームだが、こいつなら平気で平らげるだろう。口いっぱいに頬張り、幸せそうに食べる姿を思い浮かべ自然と口元が緩む。
    『うまいからって早食いすんなよ』
     そう文字を打ち込んでから、テーブルへスマホを置き食事を再開させた。
     新開はこうして、自分の食べる物を撮ってよこすことがある。それ以外にも澄んだ青空、季節の花や路地裏の野良猫。何気ない日常を切り取ったようなそれらに、オレはいつも癒やされている。本音は恋人の写った写真の方がいい。けど自撮りが下手なこいつは、まともな写真をよこしたことがなかった。たまに福ちゃんが送ってくれる写真の方が、よっぽど上手く撮れている。
    2084

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