それは、学校に着いた頃からにわかに感じていた。この、なんとも言えない浮かれた空気。大々的な行事があるとか聞いていないし、もしかしてオレが忘れてるだけとか。ずっと頭の中にはてなマークを浮かべながら教室へ入ると、いくつか視線がこちらに向かって飛んできた。男女問わず送られる視線に、どこか居心地の悪さを感じる。それでも何食わぬ顔して自分の席に着くと、クラスの中でよく話すヤツがそろそろと近づいたきた。
「なあ、新開はもうもらったよな」
「……何を?」
こっそと耳打ちするように聞いてきたそいつに、首を傾げ尋ねる。すると目を丸くした後で、そいつはぽかんと口を開けた。
「え、ほんと何?」
「いや、まさかと思うけどさ……新開今日がなんの日か気づいてない?」
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