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    小衿@紺紅

    @tsumuzi_gurgur

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    小衿@紺紅

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    #紺紅
    紺红
    #炎炎ノ消防隊
    flamesOfFire
    #腐向け
    Rot
    #二次創作
    secondaryCreation

    いと ある年の瀬の浅草。この日は焔ビトが出現する事もなく、第七特殊消防隊の詰所は時折双子の少女の賑やかな笑い声が響くのみで静かな佇まいだった。
     そう、あの暴れん坊が行動を起こすまでは。

     その日、相模屋紺炉は疲れていた。
     年末の事務処理に加え、詰所の大掃除や正月の出初式の準備。それに加えて近頃悩みに悩み頭を抱えている事があり、集中を欠き中々仕事が進まない状況だった。

     その悩みとは自身の上司とも言える、第七特殊消防隊大隊長・新門紅丸の事だ。

     火消しの棟梁の下、幼少の頃より実の弟のように想い面倒を見て来たこの男の事が、ここの所気になって仕方ない。
     「気になって」と言うのは恐らく恋慕の類で。十年以上も可愛がりをして来て、家族に対する愛情だとずっと思っていたものは、どうやら違うもののようなのだ。

     そう気付いた切っ掛けは、紅丸が下を向いた拍子に顔に掛かった髪を払ってやった時や、風呂屋でよく鍛えられたしなやかな身体を目の当たりにしてしまった時、そのに触りたいと思ってしまうのだ。これは明らかに弟分に抱く感情ではないと、自分でもよくわかっている。

     それこそ何百何千回と裸を見たが紅丸は間違いなく男で、自分は男色家でも無い筈なのに。ましてや世話になった先代の忘れ形見だ。うっかり手でも出してしまったら先代に申し訳が立たないと、己の感情に蓋をし続けているのだがこれが大変に精神を磨耗する作業で、紺炉は大層くたびれているわけだった。


     昼下がり、執務用の机の前に正座をし書類を片付けていると遠くから騒がしい足音が2人分聞こえ、だんだんと近付いて来る。襖がパーンと開かれた音がして、双子の少女が我先にと飛び込んで来た。

    「こんろ〜!人形の首取れちまった〜!」
    「はやく直せよーこんろ〜!」
    「ヒカゲ、ヒナタァ…お前ェらそれが頼み事をする態度かァ?」
    「文句なら受け付けてねェぞ!」
    「「うひェひェひェ♪」」
    「ったくしょうがねェなぁ…ほら、貸しな」

     ヒナタから人形を預かってよく見ると、首と胴体を繋いでいる糸が古くなり切れてしまったようだ。大福をよく寄越してくるババアが2人に、と拵えてくれた黒髪の少女を模った縫い包みはもう三年も前に貰った物だったか。丁寧に扱われているとは言い難いその人形は、ヒカゲの物も糸が千切れるのも時間の問題だろう。

    「どっちも繕い直してやるから、晩飯までは他のモンで遊んでな」
    「「おー!!頼んだぜこんろ〜ばいばいきんだー!」」

    ヒカゲとヒナタはここへ来た時と同じ様に、賑やかな足音を鳴らしながら遠ざかっていくのがわかった。


     「この部屋では暗ェな」と手元がよく見えるよう日差しがよく入る部屋に移動したため、雪空の合間の温かな陽光に当たるとぽかぽかと心まで温まるようで眠気を誘い、疲労が蓄積していた身体はすうっと意識を手放した。

    「紺炉…おい紺炉。起きろ」
    「…若?いけねェ、居眠りしちまってたみてェで」
    「おお。それよりこれ、見てみろよ」

     机に突っ伏して眠ってしまっていたようで、こんな派手な気配をさせた男が入って来たのに気付かないほど熟睡していたのかと自分に呆れつつまだぼうっとする頭を振って、座る自分の目の前にしゃがみ込む紅丸が「見ろ」と言ったものへ視線を移す。
     差し出された左手をよく見てみれば、小指に赤色の細い糸が巻きついて蝶結びになっている。そこから長い糸がこちらに向かって垂れていて、目で辿れば紅丸とは反対側の糸の端が自分の左手の小指に絡んでいる事に気が付いた。


     紅丸はというと、何か思い当たる節があったようで小首をかしげ自らの小指を見つめながら口を開いた。

    「…なァ紺炉知ってるか?皇国ではよォ『運命の相手』ってェのとの間は赤ェ糸で繋がってるって言うらしいぞ」
    「これがそうだって言うんですかい?」

     紺炉は眉を潜めながら、目線まで右手を掲げまじまじとそれを見つめた。細い細い繊維を捻り合わせてできている、ただの縫い糸のように見えるのだが。

    「若ァ、燃やしてみてはどうです?」
    「そりゃあお断りだ。ンなけったいなもん燃やして、俺たちどっちかがくたばりでもしたらどうすんだ」
    「燃やしたら死ぬだと?」

     雲行きの悪い方へと向かう話の流れに紺炉の顔がさっと青ざめる。

    「いいか、紅…絶対ェ燃やしたり引っ張ったり、乱暴なことするんじゃあねェぞ…」
    「わかった、わかったからンな怖ェ顔すんなよ…」

     荒くれどもの集う浅草火消しをまとめ上げる中隊長と言う大役を背負う男は、何故か幽霊だとか怪奇の類が恐ろしくて仕方なかった。唯一にして最大の弱点だった。

     恐る恐る、確認するよう捩ったり引っ張っている内に紺炉は気付いてしまった。その燃えるように真っ赤な色をした糸には全くの伸縮性が無いことに。

     糸の長さは一尺と五寸程で、ぴったりと寄り添わねばならない程ではないが、それぞれ行動をするには不便な長さで。

    「(まさかこのまま生活しろって言うのか?紅と?流石に不味いだろう…)」

     先刻は突然の心霊現象の気配にそれどころではなかったのだろう、ようやくそこまで考えの至った紺炉が心の中でため息を吐きつつ、紅丸の顔を伺いながら語りかける。 

    「『運命の相手』がこんな死に損ないで済まねェなあ。すぐにこれをほどく方法を見つけてやるからな」
    「あァ?」
    「この状況だと四六時中引っ付いて生活しねェとならねェだろ?どうせなら可愛い娘の方が良かっただろって」
    「…お前ェこそ残念だったな。俺が小股の切れ上がった良い女じゃなくてよォ」
    「紅、」
    「文句があんなら言えよ、紺炉」

     こちらをじっと真っ直ぐに見つめる紅い瞳がふたつ。その視線に耐えられず逸らしてしまう。いっそこのまま自らの想いを告げて仕舞えば楽になるのか。そう頭を過ったが兄貴分として、中隊長として、それは正しい判断ではないと言葉を飲み込む。

    「…文句なんざねェよ。皇国の嬢ちゃんから聞いた噂ってこたァ、うちの若い衆に聞いてみりゃあ何かわかるかもな」
    「…おう」

     若い衆を探しに詰所の広間へ歩き出した紺炉は、応えを返し大人しく着いて来ている紅丸が、背後から鬼のような形相で睨み付けている事には気付いていなかった。


    「糸ですかい?何も見えやしやせんが」

     広間で初めに会った隊員に赤い糸の伝聞を確認する前に実物を、と手を差し出してみたのだが可笑しな事に糸などは見えないと言う。

     その後も会う隊員皆んなに見せたが漏れなく全員とも、紺炉と紅丸の指と指を繋ぐ物など何もありはしないときっぱり言い切るのだった。

    「紺炉中隊長、お疲れなんですよ…若は今日非番ですし、たまにはお二人でゆっくりしてくだせェ」

     終いには脳味噌の心配までされる始末で、不本意極まりない。

    「とりあえず一日過ごしてみるか」

     紅丸の方は広間に移動するまでの機嫌の悪さは何だったのか、あっけらかんと現状を受け入れていて。紺炉は先程飲み込んだため息も我慢できず深く深く吐き出してしまった。

    「あんたは左手だからまだ良いだろうが、俺ァ利き手を塞がれてるんですぜ?仕事になりやしねェ」
    「さっき若い衆連中にも言われたろうが。互いにたまにはゆっくり休もうぜ」
    「もし焔ビトが出たら…」
    「あ?いいじゃねェか、そん時はお前ェも纏に乗って火事場に行きゃあよォ」

     素面だと言うのにけらけらと楽しそうに笑う様子に面食らい、昨晩自分に内緒で博打をうち珍しく勝ちでもしたのかと、紺炉は訝しげな視線を送ってみるが全く気に留める様子も無かった。


     実際手と手を繋がれたまま生活をしてみると言うのは、想像よりも遥かに難しいものだった。

     ただ真っ直ぐ歩くのでさえ付かず離れずの距離を保つこともコツが必要だったし、厠に入ればもう片方が扉の外に張り付くように立つ気配を感じながら用を足さねばならなかったし、紺炉が食事の下拵えをすればその三歩ほどの背後を紅丸がついて回る様子が「若がガキの頃を思い出す」と隊員たちに揶揄われるし。

     着替えに至ってはどう頭を捻ってみても手と手が繋がったこの状況では不可能だったし、今晩の風呂もどうすれば良いのか検討もつかず、紺炉は一旦考えるのを辞めた程だった。

     不便だ。

     不便で仕方ないと言うのに、やはり紅丸は機嫌が良かった。普段の短気さ加減を見ればさっさと燃やすなり引き千切るなりして蹴りをつけてしまいそうなのに、どこか楽しんですらいる様子である。

     もちろん紺炉も今すぐに、何としてでも離れたい、と思っているわけではない。

     ただ、想いを成就させる事ができないと言うのに、その好いた相手と四六時中共に過ごすなど、これではただの苦行ではないかと紺炉は少し泣きたくなった。

     すぐ側に立つ紅丸を見下ろすと視線に気付いたようで顔を上げる。こちらを真っ直ぐに見つめるその目は幼い時と全く変わらず、だからこそこちらの劣情まで見透かされてしまいそうで、つい逸らしてしまう事が近頃は多かった。

     紺炉はそんな己の邪念を打ち消す様にかぶりを振り、この状況のせいで少々動きの鈍った脳みそを働かせる。ただぼうっと過ごしていては余計な事ばかり考えてしまう。何か集中できる事は無いものかと頭を回らすと、ふと紅丸の使っている書机の事を思い出す。

     紅丸は机に向かってじっとしている事は性に合わないようで、事務仕事を任せて四半時でも目を離せばふらりと消えてしまうので、紺炉用の物と比べて使用頻度の随分低いその机の上には決裁待ちの案件が溜まっていたのだった。
     堆く積まれた大隊長の印鑑待ちの書類を片付けるには、紅丸が逃げられない今が好機なのではないかと紺炉は気付いた。

    「若ァ。夕飯の時間まであと一刻ほどなんですが、ひとつ頼み事を聞いてくれやせんか?」
    「おォ、言ってみろよ。なんでも聞いてやるぜ」

     珍しく紺炉が自分を頼って来た事に更に上機嫌になり口元を緩ませ「なんでも聞く」と言い切った紅丸だったが、行き先が執務室でその頼みが事務仕事を片付ける事だと聞くと低くうめき、見るからに不満そうな表情をする。
     そんな紅丸を紺炉は書机の前の座布団に引き据え、自分はその少し後ろを陣取り目を光らす。

     正座をし背後からじっと見つめてくる鋭い視線に観念した紅丸が、真面目に仕事に取り掛かると一刻もすれば締切の迫った分は粗方片付き、その場で胡座をかいたまま伸びをして一息をつく。
     紺炉はそんな紅丸に労りの言葉を掛けつつ、書類を一枚一枚確認しながら状袋に仕舞っていると記入漏れの不備を発見した。

    「あ、いけねェ。晩飯の前にあとここにだけ署名して貰えますかい?」
    「わかったよ…」

     ん、と書類を受け取る為に紺炉の方に向き直った紅丸の左の頬には気付かぬ間に筆で擦ったのであろう、墨汁がこびり付いていて、それに気付いた紺炉は思わず破顔し右手を伸ばす。

    「若ァ…顔に墨が付いてますぜ。全く、ガキじゃあるめェし」

     紅丸の頬に付いた汚れを親指で拭い取りながら紺炉が笑う。顔を手で覆われるのに心地良さそうに目を細めるその様子に心臓が飛び跳ね、(拙い、駄目だ)と焦って頬から手を外し可能な限り遠くまで身体を離す。

    「この有り様じゃ風呂も入れねェしなァ…やっぱりこの糸、切ってみやしょうか?」

     未だ心臓がばくばくと早鐘を打っている。動揺したままそれを誤魔化す様に紺炉が焦って放ったその言葉に、紅丸はひどく傷ついたような顔をしたかと思えば、徐ろに立ち上がりこちらを睨みつけている。

     元々距離を取っていた事もあり、紅丸が立った事により糸がぴんと張り詰める。そんな糸と同じくらい緊張した声色が響いてくる。

    「そんなに俺といるのが嫌かよ」

     座ったままの紺炉の胸倉を掴んだかと思えば全体重を掛け覆い被さって来た。紅丸のあまりの形相に反応が遅れ、紺炉が抵抗しようと思った時には既に仰向けに畳に転がされていて、己の腹の上に紅丸が跨りじっとこちらを見下ろしていた。

     紅丸はそのまま言葉を発する事も無く、紺炉の厚い胸板の中心に手を置き、そのまま法被の合わせに手を滑らせる。まさか紅丸が自分にその様に触れて来るとは夢にも思っていなかった紺炉は驚き息を飲む。

     合わせから侵入した手は腹掛けに隠されていない脇腹部分をくすぐる様に撫ぜ、身体を折り包帯の巻かれた首筋に鼻先をぐいぐいと押し付けて甘えてくるような仕草まで見せてくる。まるで恋人同士の睦合いを思わせる雰囲気に都合のいい幻でも見ているのかと紺炉は困惑する。
     そして好いた男に触れられた事により下腹部が反応を示してしまい、それを紅丸に気取られては拙い、と咄嗟に拒絶の言葉が口から飛び出してしまった。

    「勘弁してくだせェ若!先代に顔向けできねェよ!」
    「先代だとか野朗同士だとか今は置いとけよ!」
    「若…頼むから退いてくれ…」
    「余所余所しく若なんて呼ぶな…!俺から目を逸らすんじゃねェよ…」

     手足に力は全く入っていないのに、その痛々しい程全身を強張らせた様子に身動きが全く取れない。紅丸の真意も何一つわからず、ただじっと身を委ねて様子を伺う事しか出来なかった。

    「だってよォ、『運命』なんだろ?ならこうなるのが必然だろうが」

     紅丸は指と指を絡めて重ねた手を自らの顔に寄せ、糸の絡んだ小指ににそっと口付ける。

    「紺炉は…俺が相手じゃ不服なのか…?」

     そう寂しそうな色を浮かべた眼で問われては、自らの数年分の葛藤や辛抱など容易く崩れ落ちて行くばかりで。

     (あぁもうクソが)紺炉は腹の中で悪態をついた。深い青の両眼は、もう目の前の愛しい人から逸らせない。

    「紅、」

     理性の糸がぷつりと切れる音がした。


     紺炉は、男同士とはいえ体格差のある身体を上からすっぽりと覆い被さる様に組み敷き、夢中で紅丸の唇を貪る。

    「紅……」
    「ふ、はぁ…紺炉…」

     息を荒げ、二人分の唾液で顔を汚した紅丸の姿に、己の一物が膨張したのを感じた。ぐり、と紅丸の後孔に押し付け「ここに侵入したい」と示す。すると大袈裟に身体をびくつかせる様子に、もっと乱れた姿が見たいと性急に服を脱がせた。

     法被の帯を外し前を広げると、腹掛けと鯉口はそのまま上へとたくし上げる。すると鍛え上げられた腹筋と相対するような慎ましやかな突起が現れ、紺炉は堪らず喉を鳴らす。

    「紺炉、それくすぐってェ」
    「くすぐってェのか?」
    「ン、駄目だ…」

     その可愛らしい突起を指の腹で軽く擦ると、むず痒さに紅丸は身体をくねらせその感覚を逃そうとする。その様子は性的な物を知らぬ子供のような振る舞いで。

    「紅、お前ェもしかして女を知らねェのか?」
    「っは、…女とも男ともこんな事しようと思った事すらねェよ」
    「第八の連中に兄貴ヅラしてる新門大隊長が童貞とはなァ…」

     口が滑って飛び出した失言に紺炉を睨みつける紅丸だったが、特に中断して部屋から飛び出したりする気はないらしく仰向けのままじっとしている。じっくりと時間を掛ける必要がありそうだが、どうやら紅丸は情事のこの先に期待しているようだった。

    「(もっと直接的な快感をくれてやらねェとな)」

     防火ズボンの帯革を手際良く外し、足袋ごと脱がせ下半身を下帯一枚にする。薄い布に覆われた紅丸の下腹部を無遠慮に見つめると間違いなく勃起していて、先端が収まっているであろう箇所の布地はぐっしょりと濡れ、肌色が透けていた。

     くすぐったいとは言いつつも自分との口吸いでここまで陰茎を腫らした紅丸が愛おしく、脱がす時間も惜しい、はやく可愛がってやりたい。脳内がその感情で溢れた紺炉は躊躇いもなく紅丸の下腹部に顔を近付ける。

    「おい、紺炉待てお前ェ、な…ァッ!?」

     下帯の生地ごと陰嚢から亀頭までを一気に舐め上げられ、紅丸が嬌声を上げる。横向きに口に含み強く吸ってやるとまた膨張したのがわかった。下帯を緩め、布地の中で苦しそうなそれを解放してやる。じゅぽじゅぽとわざと大きな音を立ててしゃぶりつけば、紅丸は無意識に腰を揺らし、ただただ快感を享受する事しかできなかった。

    「気持ちいいか、紅?いいなら『気持ちいい』ってちゃんと口に出して言えよ」
    「うぁッ…こんろ、気持ちいい、いいっ」
    「あァ、紅の摩羅も気持ちいいって言ってるな。玉もこんなにぱんぱんにしてよォ」
    「そこで喋るんじゃねェっ…!」

     陰嚢を口に含みながら強く竿を扱かれ、昇ってくる射精感にかぶりを振る。思わず腰が引けそうになるがそれを紺炉は許さず、太い腕でがっちりと紅丸の腰を抑え込む。絶頂の気配を感じると、紅丸が顔を引き離そうと腕を伸ばし髪を乱すのも気にせず、陰茎を喉奥まで咥え込み射精を促した。

    「こんろ!出る!出ちまうから、あぁッ!口はなせッ…!!」

     食いしばった口元から低い呻き声を漏らし紅丸が達すると、紺炉は口腔内に吐精された物を一滴残らず飲み下す。それを紅丸は愕然とした表情で凝視していたのだが、興奮が勝ったのかみるみる内に陰茎がまた硬さを取り戻していく。

    「すげェ濃いのが出たな。溜まってたのか?」
    「はぁ、はっ…なんで飲むんだよ…」

     頬を紅潮させ「きたねェだろ」と呟く紅丸のあまりに扇情的な姿に、今すぐにでも己の怒張を突き入れたい衝動に駆られそうになったが準備も何もしていない以上、このまままぐわえば紅丸に怪我をさせてしまう事は必至で。どうにか己の欲望を鎮められない物かと紺炉は考え、自分も一度射精してしまえば落ち着くだろうと結論に至った。

     自らの下半身の衣類を下帯までまとめて取り払うと、紅丸が身を乗り出すように期待に満ちた眼差しで凝視してくるのを感じた。その痛いほどの視線を躱す意味も含めて、胡座をかきその上を紅丸に跨らせ、お互いの陰茎を擦り合わせる。

    「…でけェ」
    「だから無理だっつってんだろうが。絶対ェ挿入らねェよ」

     紅丸のモノも恐らく平均を下回る事は無いだろう大きさだが、紺炉のモノが桁外れに巨大なのだ。その上血管や筋がゴツゴツと目立つ醜悪な見た目をしたそれは、何度女に泣かれて来たことか。だが紅丸はそれを見せつけられても怯まずに食い下がる。

    「痛くても構わねェから、はやく寄越せよ…」
    「まあ待てって。そりゃあ俺だってお前ェのケツに摩羅ぶち込んでめちゃくちゃに犯してやりてェけどな」
    「だったら、」
    「紅のことは大事にしてェんだよ。な?」

     そう宥めつつ限界まで勃起をした剛直を二本、糸で結ばれた紅丸の左手ごと握り込んでやる。時折鈴口を爪で軽く引っ掻いてやるとこぷりと先走りの汁をこぼした。

     二人分の滑りを全体に広げながら扱けばぐちゅぐちゅと厭らしい音が部屋に響き、音が大きくなっていく。それに伴い紅丸も大きすぎる快感で涙をこぼし、力の入らない身体を紺炉に預けるように寄りかかる。

    「こんろ、口吸いてェ…」
    「ああ、おいで紅」

     上半身同士をぴったりとつけ、紺炉は左腕を紅丸の後頭部を抱え込み深く口付ける。息継ぎを必死にしながら「こんろ」と自分の名前をうわ言のように呼び続ける紅丸に気持ちが満たされて行くのを感じた。

    「紺炉、ずっと俺の側にいろよ…」

     唇と唇が触れ合うほどの至近距離で、じっと真っ赤な瞳に見つめられ、そう想いを告げられては堪え切れず絶頂しそうな感覚を覚える。

    「紅、もう出すぞ…!」
    「うぁッ、おれも、また…ああっ」

     ほぼ同時に果て、荒い息のまま出した物が混じり合いお互いの身体を汚したのを見つめ、紺炉は大きく息を吐く。

    「紅」
    「あ…?」
    「…紅、俺は紅のもんだし紅は俺のもんだよ。一生な」

     紺炉の言葉に満足したように紅丸は目を閉じ、そのまま意識を手放した。

     
     まだ時刻は甲夜の頃、誰が二人を探して部屋に来てもおかしく無い時間帯。紺炉は紅丸の身体を簡単に清め衣類も直してやる。自身の膝に丸く形の良い頭を乗せ、眠っている様子をつぶさに眺める。

     布団も敷かずに事に及んだせいで、畳に擦られた後頭部の髪は絡まってしまっていた。それを大きな手で丁寧に解いたり撫で付ける。そして四半刻ほど経ち目を覚ました紅丸がむくりと起き上がり、糸をじっと見つめたかと思えば。

    「…こいつはもう必要ねェな」

     そう言った紅丸の指先に灯された炎は、糸を燃やしながら伝い二人の丁度真ん中程までを進み、自然にふっと消えた。

    「…あァ!?」
    「お前ェまじで信じてたのか?そんな都合のいいモンあるわけねェだろうが」

     あっけらかんと言い切った紅丸に言葉を失い、紺炉は口をもごつかせる。その様子を見て、まるで悪戯が成功した子供のように満足げに目を輝かせながら種明かしを始めた。

    「さっきお前ェを探して居眠りこいてるのを見つけた時、この赤の糸が落ちててよォ。こないだ第八の嬢ちゃん達が喋ってた事思い出したんだよ。『いつか結ばれる人間同士は、お互いの小指と小指が目に“赤い糸”で結ばれている』ってな」

     確かにその内容には心当たりがあった。先週だったか「旨い酒が手に入ったから」と非番の桜備が第七の管区内にある縁結びの神社への参拝目当てのマキと環、そしてアイリスを伴って遊びに来た時の事だった。

     『赤い糸で繋がった運命の人なんて本当にいるんですかね〜?』『絶対いますよ〜!きっとわたしの糸、白馬に乗った王子様と繋がってるもの♪』『マキさん、また頭の中お花乙女畑になってますよ〜』そんな会話がキャッキャと詰所の広間で繰り広げられていたのを聞いたし、その場に紅丸がいた事も確かに見ていた。

     しかし惚れた腫れたの色恋事に関心があるとは微塵も思わなかったし、聞いた話題を利用し自分と関係を結ぼうとするなどとはまさに青天の霹靂であった。そしてどうしても腑に落ちない点が一つ。

    「若い衆は糸なんざ見えねェって、」
    「お前さんを休ませるための方便だっつったら皆んな納得して話を合わせてくれたぜ」

     やられた。全て紅丸の意図するままに泳がされていたのだったのだ。用心深い性質の筈なのについつい騙されてしまったのは惚れた弱みか。

    「お前ェは義理堅い男だからよ、既成事実さえこさえちまえばこっちのモンだってな」
    「性質の悪ィ女みたいな事言うなよ…」

     人間不信になりそうだ、と目頭を押さえて小さく呻く紺炉の小指に残った糸を解きながら紅丸が言う。

    「俺が運命なんてモンを信じると思うか?俺が信じてるのはずっとお前ェの事だけだ、紺炉」

     そう不適に笑われては怒る気力も湧かず。

    「敵わねェなあ、紅にはよォ」

     強く強く握り合った手の傍には、燃え残った赤い糸がそっと寄り添うように落ちていた。




    「いと【糸、意図】」
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