Happy birthday, our love. 六日前
あのね、ははうえのおたんじょうびにね、ケーキつくるの。ないしょだけど、ははうえにはおしえてあげる。ちちうえとヘンリーには、しー、よ?
愛らしいくちびるをリチャードの耳にぴたりと付けて、小さな我が子がささやく。注ぎこまれる音色のくすぐったさに思わず微笑を浮かべると、気を良くした我が子はヒヒッと楽しげな声をあげ、あのね、あのね、と繰り返した。
四日前
どんなケーキにしたいか、絵を描いて教えてくれないか。父が仕事を終えたら、見せてくれ。
二人の子どもたちにそう言い聞かせた日の夜、己によく似た上の子は、得意げな笑みで一枚の画用紙を差し出してきた。
描かれているのは、子らの母であり、バッキンガムの伴侶であるリチャードの誕生日ケーキ、その完成予想図だ。
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