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    よしざわ

    @nameisyoshizawa

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    よしざわ

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    【6/12❤️♠️webオンリー】
    (開催終了の為、鍵外しました!)
    付き合いたてのエスデュ🐥
    デュースからの好きがほしいエースと、好きを形にしたいデュースのお話

    恋心にひよこ「おやすみ、エース」
    また明日な、と軽く挨拶を交わした後、デュースの影がカーテン越しにベッドに沈んでいく。暗がりの部屋のなか見えなくなった背中をぼんやりと眺めながら、エースはため息をひとつを溢した。



    先日思い切ってデュースに告白をして、返ってきた答えはまさかのイエス。友人という関係が恋人に進展したあの日、エースは幸せを噛み締めながら一夜を過ごし一睡もできないまま翌朝を迎えた。朝一番に顔を合わせたデュースの目の下に揃いの黒い隈が浮かんでいたことにエースは気付いて、誰にもバレないように頬を緩ませた。
    そう、そこまでは順調だったのだ。
    問題はその後、おつきあいをしている筈のデュースの態度がそれ以前と変わった様子がないことだった。エースは人知れず心を曇らせていた。


    (もしかして伝わってない……とか?)
    イヤイヤイヤ、そんな訳ない。
    今日から恋人同士だなと、はにかんでいた強烈に可愛いデュースは幻なんかじゃない筈だ。いや、もしかして都合の良い夢だったりするんだろうか。エースの幸福は日に日に萎んでいくようだった。
    何だか自分ばかりがデュースを好きな気がして、付き合い始めた筈の今も一人で余裕がない。そんな自分が悔しかった。自分と同じ温度の好きが欲しい、なんてそこまで望むつもりはないけど、せめて少しくらいデュースからの好意を感じたいと願うのは至極真っ当なことだとエースは思う。
    (あ〜もう…!)
    考えれば考える程ドツボにハマる気がして、エースは頭からすっぽり布団を被って目を閉じる。暗闇のなかに浮かぶのはやっぱりデュースの姿で、悶々としながら夜が更けていった。


    「エース、放課後時間貰えないか?」
    退屈な魔法史の授業から解放されてエースが伸びをしていたときだった。隣の席のデュースに声を掛けられた。
    「今日?部活は丁度休みだしオレは別にいいけど……お前は?陸上部は練習あるでしょ」
    「あ、えっと……僕は休むって言ってあるんだ」
    本日最後の授業を終えたばかりだというのに、デュースの顔には開放感の欠片もない。どこかハッキリしない態度もエースはなんとなく釈然としなかった。
    「なんで?」
    「……大事な用があるから」
    真面目の前にバカがつくデュースに限って怪我や病気でもないのに部活を休むなんて言い出すとは思わなくて、つい訝しげな目を向けてしまった。目が合うと居心地悪そうにデュースはパッと視線を逸らして続ける。
    「無断で休む訳じゃないんだし良いだろ。……それでその、今から一緒に来て欲しいんだけど……ダメか?」
    「……いいけど何処に?」
    「ほんとか!じゃあ薔薇の迷路に移動しよう」
    ここじゃ話せないことでもあるんだろうか。人気のない薔薇の迷路に行こう、なんて。やけに緊張した面持ちのデュースにエースのなかで嫌な予感が膨れ上がっていく。


    (もしかして……別れ話、とか?)
    絆されて数日間付き合ってはみたけどやっぱり好きじゃないと気付いたとか、友達のままの方が気楽でいいと思ったとか。ありえすぎる展開にマイナスな想像ばかりが広がっていく。デュースが嫌がるようなことをした覚えはないけど、もしかしたら無意識のうちに何かやってしまった…?
    どんどん妄想が現実味を帯びていく感じがしてエースの身体は鉛みたいに重くなっていた。その間にもデュースの背中は迷いなく薔薇の迷宮に向かって進んでいく。重い体を引き摺ってエースはその背に着いていくしかなかった。


    無数の薔薇を浴びているうちに、とうとう迷路の一番奥まで辿り着いてしまった。
    ハーツラビュル寮生が交代で手入れこそしているが、当番や寮の行事以外でここに来る奴なんてほとんどいない。今日もやっぱりエース達以外に人の姿はなかった。ベンチに座るようデュースに促されて言われるがままエースは腰を下ろす。当のデュースは立ったまま、落ち着きなく視線を彷徨わせている。
    「こんなとこまで連れてきてなに?」
    エースの声は明らかに苛立っていた。こんなの八つ当たりだ。分かってるけどささくれ立った自分の気持ちをコントロール出来なかった。


    「……エースに渡したいものがあって」
    エースの態度に不安げに眉を垂らしたデュースがブレザーのポケットを弄って、掌にちょこんと何かを乗せた。
    赤と青のリボンをつけたひよこのキーホルダー。色違いの2匹のひよこがデュースの手の上で仲良く寄り添っている。
    「……ひよこ?」
    「昨日購買で見つけたんだ」
    予想外の光景に怒りなんて一瞬で忘れてしまった。可愛いだろ、と微笑むデュースに急速に肩の力が抜ける。
    「はぁ……なんだよ、もう…!……別れ話切り出されるのかと思ってめっちゃビビったじゃん……」
    「……別れ話!?な、なんでそう思うんだ?」
    「部活休んでこんなとこまで連れて来るし、お前なんか緊張してたじゃん。そんなん嫌な話かもってなるでしょ!」
    そんなこと微塵も考えていなかったようで、デュースは目をぱちくりさせた。
    「いや、まぁ…勝手に勘違いしたのはオレだけどさ」
    「……別れたいなんて思う訳ないだろ」
    返事をするより先に、デュースがひよこをエースの眼前に掌ごと差し出した。
    「人前で渡すのはなんとなく憚られて……。でも早く渡したかったんだ。その……僕とエースみたいだなって思って買ってしまって。良かったらどっちか貰ってくれないか?」
    デュースとひよこ。あまりに可愛い組み合わせにエースは目眩がした。
    「どっちでもいいの?」
    「……出来たら青い方をエースに持っていて欲しい」
    なんで、と開きかけた唇をそのまま閉じる。デュースの頬が真っ赤に染まっていて、理由なんて聞かなくたって分かってしまった。
    ひょい、とデュースの手中からひよこの片割れを受け取った。勿論選んだのはブルーのひよこで、デュースの掌に残った片割れはとぼけた顔でこちらを見ている。
    (オレはこんなに間抜けな顔してないっつーの)
    エースは口元を緩めながらひよこ達を交互に眺めた。
    「スート描いたらもっとオレらっぽくなるんじゃね?」
    「……いいな、それ」
    宝物を包むみたいに赤いひよこをぎゅっと閉じ込めて、デュースがかんばせを綻ばせた。
    「ありがと、デュース。……大事にする」
    「僕も大事にする」
    エースが手の中のひよこを柔く撫でた。
    デュースに想われていることを実感する。腹の底から込み上げてくるこの衝動を何て呼べばいいんだろ。温かくて、むず痒くて、ホッとするようなソワソワするような、不思議なそれ。
    「エース」
    デュースが隣に腰を下ろした。その響きは優しくて甘い。
    「僕を好きって言ってくれてありがとう」
    抱きしめてもいい?、なんて聞く余裕もなくエースは引力に引き寄せられる。ぐぇっという色気のない声はデュースのものか、ひよこのものか。エースは思わず笑みを溢した。
    薔薇の迷路に吹き抜ける風は穏やかだ。エースはデュースの肩口に顔を埋めて、そしてそっと囁いた。どうかこの気持ちのほんの一欠片でもその胸に届きますように。
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