真白の世界と黒鋼のカムイ 少女がその白い手で遺跡の扉を開けると、そこは真っ暗な空間だった。
透明な冷気が頬を撫でる。彼女はほんの一瞬だけそれに首をすくめてから、暗闇の中へと一歩を踏み出した。
空間は広く、壁には小さな窓のような穴が開いており、そこから外界の光が差し込んでいるのが見える……けれども遺跡内に射すそれは、視界の助けにもならないほどに弱々しくかすかなものだった。
じくじくと痛む左腕から手を放して、少女は後ろ手に扉を閉める。そのときに、ふと、自分の手のひらが真っ赤な色に染まっていることに気がついてしまって、彼女は反射的に目を逸らした。
ぜえぜえと激しい呼吸を繰り返す音が聞こえる。それはほかならぬ、少女自身の喉から漏れだす音だった。
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