同細胞生物「駒はたいそう困っております」
和装の少女はそう言い、ふうとちいさく肩を落とした。ちんまりとしたその風情はまさに東国一の美少女の名にふさわしい。
食堂の一隅、テーブルを囲むひとびとはみな少女を心配そうにみつめている。
本来ならマスターの勉強会の時間、どうやら飛び入りのお悩み相談がはじまったらしいと、孔明もまた吐息とともに席に着く。未熟な自分をどうにかしたいというマスターに請われ、週に1度勉強会を開いているのだけれども、近頃はこうして邪魔がはいることも多くなった。
学問を蔑ろにする者どもめ、と内心悪態をつく孔明にはけれども気づかないように、駒姫はふたたび口を開いた。
「駒はみなさまと楽しく過ごしたいのですけれども、どうやら利休さまはお考えが違うようなのです。とりわけ石田三成さまにご執心のご様子、石田さまの怯えるお姿が見たいとあちこちに罠を仕掛けるものですから、最近では駒でいるときでさえ石田様に逃げられるようになってしまいました」
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