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    穂山野

    @hoyamano015

    読んでくれてありがとう。
    幻覚を文字で書くタイプのオタク。とうの昔に成人済。

    スタンプ押してくださる方もありがとう。嬉しいです。

    置いてある作品のCP等
    金荒 / マッキャリ/ 新中/リョ三

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    穂山野

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    2017.12.1 金城真護誕生日に書いたもの

    #金荒
    goldenDesert
    #BL

    夜が明けるころあの古びた温室は薬学部のもので、校舎から少し離れているから普段はあんまり人を見かけない。
    オレが金城に教えたんだ。

    部の先輩ですごく猫が好きな人がいる。
    こっそり構内の猫スポットを共有してる。
    なぜこっそりなのかと言えば、先輩は顔立ちが怖い。オレはこういう性格だから、学部とか部でも猫の話で盛り上がってたりするときなんかには混ざらない。
    先輩のリュックにはキーホルダーが付けてある。小さいやつだし普段は見えないようにポケットに突っ込まれてるけどあれは猫だと気付いた。だから小声で「先輩、もしかして、ね」まで言ったら「やっぱり荒北もか」と笑った。笑っても先輩の顔立ちは怖い。
    けど先輩とオレは細々と独り『猫道』を極めてきたみたいなところがあって気が合った。
    その話を金城にしたら「よかったな」とだけ言った。だいぶ端折った。金城の顔には「荒北がなにを言っているのかよくわからない」と力強い筆文字で書いてあるのがわかったから。

    けれどオレが教えた猫スポットでもある温室を金城は気に入っている。

    温室の窓は雨風で汚れ、キレイとはとても言えない。
    見慣れない植物がたくさんあって。小さな札には説明が書いてあるから金城はここに来始めたころそれをひとつひとつ読んでた。
    見学用にも開かれたこの温室は奥の一部だけが非公開になっていてその柵の奥は部学生と関係者しか入れないようになっていた。
    その少し手前辺り。結構広く奥に向かうほど背が高くなる植物群の辺りまで来る人はあまりなく、薬学部の学生がときどき管理に入ってくるくらいのものだ。
    その辺りの日差しがよく当たり、暖かい場所を猫も金城も知っていた。
    植え込みを囲うレンガが置いてあって金城はよくそこで居眠りをしたり本を読んだりした。
    不得手ではない。かと言って好きでもないという喧騒を金城は上手く避けた。
    ときどき姿が見えなくなって誰も連絡がつかなくなるときがある。
    そういうときは大概ここにいた。

    「明日は予定があるじゃろうから今日夜でも四人で飯食わんか」
    「荒北くん、待宮くんと私はマフラー買うたよ」佳奈ちゃんが言う。
    金城のこと昼から見かけてないから伝えてくれと待宮が言う。

    いつもの場所に行ってみると金城は腕を組んでなんだか難しい顔をして寝てた。
    無精髭で腕を組んで眠る姿は昔の武将とか浪人みたいだナァ。
    今日はなにがあって、なにを避けてここにいるんだろう。鳴らないスマホだけをポケットに突っ込んで。
    武将の寝顔を見ながら思う。
    聞いてもたぶん答えない。聞くつもりもない。
    金城の中にいるのはひどく老成した『金城さん』とある種の無垢と無邪気さを持った『真護くん』とを色違いの粘土にしてくつけ、無理やり丸くしたみたいな塊でそれをときどき持て余してるように見える。
    誰にだって多かれ少なかれそういう部分はあるヨ。
    そりゃそうなんだけどさ。
    もどかしさとかやるせなさみたいなのを飲み込む。噛み砕けないから丸飲みばっかりで消化することもできない。
    そんなことを思いながら無精髭の生えた顎を指でなぞる。
    金城は目を覚まし、オレに気付いて笑った。
    寝呆けた顔で「ちょっと疲れてた」とそう言ってふうと大きくため息を吐いた。
    金城の隣に座り坊主頭をグリグリと撫でた。
    「なんか食いたいもんある?」
    金城はしばらく考えてから
    「肉かな」
    「括りが大雑把すぎてわかんねえ」
    「じゃあ鶏肉」
    「そういうことじゃねえからァ」
    下らない会話と金城が笑う声で、どこか張り詰めていた部分が溶けていく。
    心の底でなにごともないと思いたかった自分の。
    日を浴びていた金城は温かい。普段よりもずっと。
    その体温が自分に教えた安堵と不安は嬉しくて憎い。それはたぶん金城にとっても同じだ。
    戸惑いながら始まった。でも今はもうそれを手放すことはできない。
    「明日、オレ運転すっからどっか行こうぜ」
    「荒北の運転で?」
    「ドキドキさせてやるからさァ」
    「ドキドキは別の意味でしてるから遠慮したいが」
    「……オレ、お前のそういうとこホント憎いわ」
    行ったことのないところに二人で行ってさ。
    できれば夜が明けるころに。
    初めて見る景色を二人で見よう。
    いつか思い出す。
    冬の朝の寒かったこと。それが十九歳の始まりの朝だってこと。
    そしたら一緒に思い出せ。温室の木立に隠れてキスしたことを。
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    👏👏👏❤
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    穂山野

    DONE【リョ三】Sign

    インターハイが終わり、新学期が始まったころの幻覚です。
    二人がゆっくり距離を詰めていったらいいな、という幻覚をずっと見ていたので。
    二人で幸せを作っていってくれ…
    相変わらず拙い文章ですが、似たような性癖の方に届いたら嬉しいなあと思います…
    Signもう殆ど人がいなくなったロッカールームの小さな机で部誌を書いているとどこからか「宮城ィ」ともうすっかり聞き慣れてしまったデカい声がする。
    「なんすか?!」とこちらもデカい声で応じると「おー、今日一緒帰らね?」と毎回こっちがびっくりするくらいの素直な誘い方をするのが三井寿だ。
    最初はその理由がよくわからなかった。自分が部長になったことでなにか言いたいことがあるとかそういうやつ?と若干の警戒心を持って精神的に距離を取りながら帰った。でも三井にはそんなものまったくなく、ただ部活終わりの帰り道をどうでもいいような話をしたり、それこそバスケットの話なんかをしたいだけだった。
    最初は本当にポツポツとした会話量だった。家に着いてドアを閉め「あの人なにが面白えんだ?」っていうくらいの。そのうち誘わなくなるだろう、と思っていた。しかし三井はまったく気にしていないようで当たり前のように隣を歩いた。
    9412

    穂山野

    REHABILI【リョ三】『ふたりにしかわからない』
    リョ三になる手前くらいのリョ+三。うっかり観に行ったザファで様子がおかしくなり2週間で4回観た結果すごく久しぶりに書きました。薄目で読んでください。誤字脱字あったらすいません。久しぶりに書いていてとても楽しかった。リョ三すごくいいCPだと思っています。大好き。
    木暮先輩誤字本当にごめんなさい。5.29修正しました
    ふたりにしかわからない9月半ばだというのに今日もまだ夏が居座っていて暑い。
    あの夏の日々と同じ匂いの空気が体育館に充ちている。その熱い空気を吸い込むとまだ少し胸苦しかった。いろいろなことがゆっくり変わっていく。
    自分は変わらずここにいるのに季節だけが勝手に進んでいくような変な焦りもある。でもその胸苦しさが今はただ嫌なものではなかった。

    木暮が久しぶりに部に顔を出した。
    後輩たちが先輩、先輩と声をかける。あの宮城ですら木暮に気付くと「あっ」って顔をして5分間の休憩になった。
    部の屋台骨だった人間が誰か皆知っている。誰よりも穏やかで優しくて厳しい木暮は人の話をよく聞いて真摯に答えてくれるヤツだ。
    後輩たちの挨拶がひと段落したあと宮城も木暮に話を聞いている。
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