Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    穂山野

    @hoyamano015

    読んでくれてありがとう。
    幻覚を文字で書くタイプのオタク。とうの昔に成人済。

    スタンプ押してくださる方もありがとう。嬉しいです。

    置いてある作品のCP等
    金荒 / マッキャリ/ 新中/リョ三

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 🍻 🍵 🌟
    POIPOI 25

    穂山野

    ☆quiet follow

    【新世紀中学生】『菜園』

    マックスの家にはトマトを植えたプランターがあるだろうって話を以前フォロワーさんとしたことがあり、そのとき書こうと思っていた話です。新世紀中学生、わちゃわちゃ楽しく生きていてくれたらいいな。

    #新世紀中学生

    菜園マックスが調度品や家具なんかにこだわりを持って生きていることは部屋を見ればわかるのだが、料理なんかも結構凝ったものを作ったりするのは知っている。
    ジャンクショップの喫茶コーナーでアイスティーを手渡しながら
    「ボラー、体というのは食べたものでできているんだ」っていう。
    「まあ六花とか洒落た朝飯食ってるって話じゃん。だからあんな感じなんだとしたらまあ合ってんじゃない?」
    六花は可愛らしい。ちょっと面倒なところはあるけど。まあそれをいえば裕太も可愛いし、内海もまあそう。
    「そういうことではない」
    あ、これ面倒なやつだ、ととりあえず椅子に座り直す。ていうか当たり前みたいにカウンターの中にいるのなんで?ママさんは?
    「ボラーがいってるのは黄色い草を食べたら黄色くなりました、みたいなことだろう」
    まあ、だいたい合ってるってことでいい。
    「そういうことではなく例えばたんぱく質を摂ると筋肉の成長を促進するとかそういったことだ」
    わかった。よくわかったと伝えるために二度ほど深く頷く。

    「ボラーに頼みがある」
    「今の食べ物の話、関係あった?」
    「水遣りを頼めないかと思ってな」
    マックスはそういって注文していないサンドイッチをそっと置く。
    「水遣り」
    「どうしても家を空けなくてはならない事情ができた」
    「なんか緊急事態か?」
    この平和なサツキ台にまたなにかあるとでも、と一瞬緊張する。
    「いや、ちょっと椅子を買いに行きたい」
    「え、なんて?」
    「椅子を作っているという人とSNSで知り合ったんだが」
    人として生きることを楽しもう、とはいった。期限付きの世界なのだからって確かにそういった。
    キャリバーなんか猫飼って、池の鯉に餌やって喜んでるし、ヴィットに至っては「最近思うんだけど、昼まで寝るのって贅沢な感じがするよね」とか昨日そんな話をしたばっかりだ。
    マックスは椅子かあ……まあいいけど……
    「ベランダに少しばかり野菜を少しばかり植えてあるんだが心配でな。どう急いでも一日は家を空けることになってしまう」
    「別にいいぜ。どこ行くのかわかんないけどお土産よろしくな」
    「どこまで行くか、聞くか?」
    「それはいい」両手をかざして強くノーを伝える。
    マックスは悪いな、と安堵した表情でいった。
    「他に安心して頼める奴がいない」
    二人で顔を見合わせて頷いた。二人ともちょっとしょんぼりしてた気がする。
    ママさんは池の鯉に餌をやってるキャリバーを見に行ったことをあとで知った。

    今、マックスの家の広いベランダにいる。
    プランターに植えられたトマト、日除けを兼ねたキュウリ。この葉っぱなに?これ草?っていうのが結構あって整然と並べられたプランターの前に立っている。
    これはほんの少しとはいわねえんじゃねえの?
    『日中だと根腐れするから日が落ちてから』『トマトは実を濡らさないように』とかいろいろ書いてある。丁寧なイラスト付き。マックス意外と絵上手いのな。初めて知った。
    しょうがねえ、やるか!とジョウロを手に持ったらスマホが鳴る。
    「あ、ボラー?夕飯もう食べた?」
    ヴィットだ。今日は予定がなかったから昼過ぎに起きてジャンクショップいったら誰もいなくてさ」そんなことを無駄に爽やかに話している。
    夕飯はまだなことと今、マックスの家で野菜に水遣ってるって話したら「なんか買ってそっち行くよ」と電話が切れた。
    ヴィットの買ってくるものなら特になにもいわなくても心配はない。
    じゃあやるか、と振り返るとキャリバーが立っていて「ひっ」と小さく悲鳴を上げる。
    「びっくりすんじゃねえか!」
    「で、電話していたから声を掛けそびれた」
    「ていうかキャリバーなんでいんの?どうやって入った?」
    「か、鍵を持ってる」
    「えっと、聞いていいやつ?それ」
    「家に帰るのが面倒になったとき、ベンチで寝たりしないようにいわれている」
    「ああ、そういう……」
    「ち、近い方の家に帰って屋根のあるところで寝るように、とマックスにいわれている」
    『他に安心して頼める奴がいない』マックス、お前の判断はいつも正しいよ……

    暫くしてヴィットがやってきて「キャリバーもいたの」となんだか少し嬉しそうにいった。
    「なんだかんだ集まっちゃうんだよねえ、今日は家主いないけど」と三人分から四人分のサラダや肉料理、ご飯はパエリアにしてみたよ、とマックスの家のいつもの洒落たテーブルに並べる。
    「余ったら冷蔵庫入れとけばマックスが帰ってきて食べるでしょ」
    ママさんの付き添いでいったデパ地下?っていうの見て歩くと面白いからたまにふらっとひとりでいく、と日々の楽しみを増やしているみたいだった。
    キャリバーがコップと冷蔵庫から冷えた炭酸水を出してきた。
    「レ、レモンがなかったが」
    マックスがいつもレモンを添えるから、なければないでなんとなく気になるから不思議だ。
    三人で手を合わせ「いただきます!」といってから食べる。
    これはたぶん皆、宝多家で覚えた。
    「マックスは凝り性だねえ」とヴィットがベランダを眺め半ば呆れたようにいう。
    「こ、この建物は隣の建物との関係でベランダが広くなっているから、なにか育ててみたいとはいっていた」
    「あー、『ニッショウケン』っていうんでしょ」
    最近見たことや知ったこと、他愛もない世間話とともに食事は続く。
    「キャリバーは今日なにしてた?」穏やかな口調でヴィットがキャリバーに尋ねる。
    「お、俺は学校周辺を見回ったあとママさんとお茶を飲んだ」
    「ママさんと?」
    「友達かよ!」
    うむ、とキャリバーが頷く。
    「そうなんだ?!」
    「ママさんの知り合いの人の池に鯉がいる。鯉はかなりでかい」
    「なるほどねえ」
    ママさん、キャリバー好きだな。好きっていうかただただ心配なのかもしれないけど。
    「あの人面倒見いい人だよね、ほんと」
    「そうだな。だいぶうっかりしてるとこあるけど」
    「マックスどこまでいったんだろうね」
    「長い話になりそうな予感がしたから聞かなかった」
    「正解かも」そういってヴィットは笑った。キャリバーは炭酸水を勢いよく飲んだせいで噎せた。
    いつものように和やかな夕食の時間は過ぎていく。うるさいファミレスでもジャンクショップでもマックスの家でも皆と一緒に『食事』するのは楽しい。

    片付けは俺がやる、とキャリバーがいうので任せることにして任務である水遣りをやってしまうことにした。
    「この辺り草ばっかりじゃね?」
    ヴィットはメモを読み、プランターを確認する。
    「ボラーこれ草じゃなくて。まあ草だけどハーブ」
    「へー」
    「水はたっぷりだって」
    「ん」
    「これも草じゃなくて紫蘇」
    「マックス、こういうのが面白いんだなあ」
    「そうだね」
    土が水を吸い込む匂いがする。夏の初めはいろいろなことを思い出させる。
    「ボラーはなにが面白い?」
    ヴィットが聞く。

    今、ここに立ってること。人として生きていること。それがあとどれくらい続くのかはわからない。それでも日々は続いていく。
    サツキ台を中心に世界は少しずつ広がって人々は営みをやめることはない。
    自分も人として日々を紡ぐ。それはこの街の人々と同じように明日への希望を紡いでいくということだ。それはとても面白い。
    「人間やってるの、面白い」
    「そっか」となぜかヴィットは少し嬉しそうに頷いた。

    マックスからのすべてのミッションをこなしヴィットと二人、室内に戻るとキャリバーが冷蔵庫からなんだか高そうな箱に入ったアイスクリームを出してきた。
    「箱、金の枠とかついてるけどこれ大丈夫なやつ?」
    「マ、マックスがたまに夜中、箱を見て笑ってるときはある……」
    「こわっ!」
    ヤバそうなのでその箱を冷蔵庫に戻し、一番アイスクリームを食べたがっていたキャリバーが近くのコンビニに買いに出かけた。

    ヴィット、と声をかけると「んー?」とのんびりした返事が返ってくる。
    「人として楽しい、と思いながら暮らしてると終わるとき寂しいかな」
    「どうかな。終わるときじゃないとわからない、かな」
    だよな、とひとりごちる。
    「俺は明日、この暮らしが終わったとして楽しかった、と思いながらここを去りたいなって思ってるよ」
    マックスの椅子も見てみたいし、あのトマトも食べたいじゃない?もしそれが叶わなくてもそれを楽しみにした気持ちは消えないから。
    「……だな」
    明日もこの街で楽しみを紡いで生きていく。

    ポケットのスマホが鳴り、見てみるとマックスからだ。
    送られてきたのはなんかカッコいい椅子に座ったマックスの自撮りだった。
    「嬉しそうだね」とヴィットが笑いを堪えていう。
    キャリバーがアイスクリームとビールを買って帰ってきた。マックスの自撮りを見せると珍しく盛大に声を出して笑った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖🙏💴💴💴💖💖🍅🍅💛💚💙💜💛💚💙💜🍅🍅👏❤💕🍅🍅🍅🍅🍅🍅🍅🍅🍅🍅
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    穂山野

    DONE【リョ三】Sign

    インターハイが終わり、新学期が始まったころの幻覚です。
    二人がゆっくり距離を詰めていったらいいな、という幻覚をずっと見ていたので。
    二人で幸せを作っていってくれ…
    相変わらず拙い文章ですが、似たような性癖の方に届いたら嬉しいなあと思います…
    Signもう殆ど人がいなくなったロッカールームの小さな机で部誌を書いているとどこからか「宮城ィ」ともうすっかり聞き慣れてしまったデカい声がする。
    「なんすか?!」とこちらもデカい声で応じると「おー、今日一緒帰らね?」と毎回こっちがびっくりするくらいの素直な誘い方をするのが三井寿だ。
    最初はその理由がよくわからなかった。自分が部長になったことでなにか言いたいことがあるとかそういうやつ?と若干の警戒心を持って精神的に距離を取りながら帰った。でも三井にはそんなものまったくなく、ただ部活終わりの帰り道をどうでもいいような話をしたり、それこそバスケットの話なんかをしたいだけだった。
    最初は本当にポツポツとした会話量だった。家に着いてドアを閉め「あの人なにが面白えんだ?」っていうくらいの。そのうち誘わなくなるだろう、と思っていた。しかし三井はまったく気にしていないようで当たり前のように隣を歩いた。
    9412

    穂山野

    REHABILI【リョ三】『ふたりにしかわからない』
    リョ三になる手前くらいのリョ+三。うっかり観に行ったザファで様子がおかしくなり2週間で4回観た結果すごく久しぶりに書きました。薄目で読んでください。誤字脱字あったらすいません。久しぶりに書いていてとても楽しかった。リョ三すごくいいCPだと思っています。大好き。
    木暮先輩誤字本当にごめんなさい。5.29修正しました
    ふたりにしかわからない9月半ばだというのに今日もまだ夏が居座っていて暑い。
    あの夏の日々と同じ匂いの空気が体育館に充ちている。その熱い空気を吸い込むとまだ少し胸苦しかった。いろいろなことがゆっくり変わっていく。
    自分は変わらずここにいるのに季節だけが勝手に進んでいくような変な焦りもある。でもその胸苦しさが今はただ嫌なものではなかった。

    木暮が久しぶりに部に顔を出した。
    後輩たちが先輩、先輩と声をかける。あの宮城ですら木暮に気付くと「あっ」って顔をして5分間の休憩になった。
    部の屋台骨だった人間が誰か皆知っている。誰よりも穏やかで優しくて厳しい木暮は人の話をよく聞いて真摯に答えてくれるヤツだ。
    後輩たちの挨拶がひと段落したあと宮城も木暮に話を聞いている。
    4209

    related works

    recommended works

    kumo72783924

    PROGRESS魁のパート。ビール飲んでる。
    流心〜ドイツ編〜魁1
     十一月のドイツは想像以上に寒く、訝しがりながら持ってきたダウンが大活躍だった。見るもの全てが痛いほど新鮮に映る中、隣で穏やかに微笑む恋人が旅の緊張を解してくれる。距離も時差も超えて、こうして二人並んで歩くだけでも、思い切ってここまで来て良かったと思うには十分だった。
     ターミナル駅からほど近いその店は、入口の様子からは想像出来ないほどに中は広く、何人もの客が酒とおしゃべりに興じていた。柱や梁は艶のあるダークブラウンで、木製のテーブルや椅子が落ち着いた雰囲気を醸し出している。ぐるりと店内を見渡したときに目を引くのは、なんと言っても大きなビール樽だろう。その樽から直接ビールが注がれたグラスをびっしりと乗せて、店員がお盆を手に店内を動き回っている。その様子に目を奪われていると、店員の一人から“ハロー”と声をかけられた。こちらもひとまず“ハロー”と返すと、何か質問を投げかけられたようだったが、生憎俺は返す言葉を持ち合わせていない。助けを求める間もなく楓吾が最初の注文を済ませ、席に着くなりビールが二つ運ばれてくると、ドイツに来て初めての食事が始まろうとしていた。ふと向かいに目をやれば、赤銅色に染まるグラスの向こうで楓吾が再び店員と何やら話している。ガヤガヤと騒がしい店内で異国の言葉を話す恋人は、まるで別人のようだ。ひょっとして、話す言語によって人格も多少は変わるのだろうか。俺の知らない楓吾の一面があるのだろうか……そんなことを考えながら二人のやり取りをぼんやり眺めていると、楓吾がこちらに向き直って言った。
    3238