師弟考察①ヒュンケル&アバン ふたりの「救済」についてヒュンケルはダイのネガとして作られた存在だろうとは思っている。つまり、ダイを裏返した存在。めぐりあわせによっては、こういう運命をたどっていたであろう、ダイの持っていたもう一つの裏の可能性。それが、ダイから見たヒュンケルだと思う。
だけど、アバンを通してみると、もっと違う側面がある。
何度も書いたけど、世界を救ったはずのアバンが救いきれなかった少年が、一番弟子であるヒュンケルというこの皮肉というか、苦悩。子どもは世界の宝だと語り、子どもたちの未来のために戦ってきたのが、勇者としてのアバンだった。そのアバンが世界を救った引き換えに、たった一人の家族を奪って不幸にしてしまった少年が、ヒュンケルなのだ。
アバンの願った「戦火の中で生まれた子どもこそ平和に生きるべき」と思った子どもたちの中には、ヒュンケルもいたはずなのだ。
だから、ヒュンケルが救われなければ、アバンだって救われないのだと思う。
誰よりも、ヒュンケルに幸せになってほしいと願っているのは、アバンなんじゃないかな、と思う。
それは、バルトスの遺言を実現したいという思いでもあったとは思う。
しかし、それは、アバン先生の罪の意識からだけではなく、2年間育てたあの子がかわいかったんじゃないかなあ…とも思うのであった。
原作は、誰も不幸にしない作品だから、最終回後のことは何も書かれてないけれども、ヒュンケルにも平穏な未来があると、一読者である私は思っている。
そうでなければ、アバンだってやりきれないと思うのですよ。