むらさきの紫草のにほへる妹を憎くあらば
人妻ゆゑに我恋ひめやも
ー大海人皇子
ラーハルトは数日かけて、パプニカ城下の武具屋、道具屋を軒並み回っていた。旅の準備のためだ。
主の命で、魔界へ降りる。
このところきな臭い動きを見せているヴェルザーの動向を探る必要があった。
「ごめんね、本当はおれが行きたいんだけど」
申し訳なさそうに話すダイに、
「お側に控えるだけが忠義を示す方法ではございません。ダイ様の命であればなんなりと」
ラーハルトは片膝をついて恭しく答えた。
主の役に立てることは誇らしかった。
魔界では人間は満足に活動できない。
主君には地上で為すべきことがある。この探索には命じられた通り、自分とクロコダインが適任だ。
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