とろ火でことこと煮るような「しばらく首の隠れる服しか着れないね」
ざっくりとしたニットの襟ぐりから剥き出しになった肌には、うすべに色や赤の花弁がいくつか散っている。アズールの着ているニットと色違いのデザインを着ているイデアの首もとから肩口も、似たようなありさまだった。
「後悔してます?」
「僕はまだ在宅だからいいけど、君が困るでしょ」
イデア・シュラウドの大誤算。若い頃、青年実業家としても、その美貌でも有名だったアズールに悪い虫がつかないよう、彼が残した[[rb:徴 > しるし]]は翌日中に噂になり、各紙とニュースチャンネルを賑わす大騒ぎとなった。良かれとおもってしたことが、あだになってしまったのだ。
アズールが中性的な容姿だったため、噂のお相手は異性はもちろん同性、それも同族の人魚からあらゆる種族にまで及んだ。最終的にイデアが名乗り出ることでお相手探しは終わったのだが、今度はふたりの性生活がゴシップ誌を中心に広がり、彼らを困惑させる事となったのだ。
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