1225【1225】
「クックック……浮かれているな」
人間界。イルミネーションが街中を煌びやかに彩り、年末特有の浮き足だった気配に満ちている。人々の様子は常以上に忙しない。ただその足取りは軽く、どこか希望に溢れている。
今日は12月25日。人間の言うところのクリスマス。日暮れ時ではあるが、街並みのそこかしこから光が溢れ、夜の気配を感じさせない。電飾の施された街路樹の中には一等目立つものがある。背の高いもみの木が今日という日のアイコンとして飾られており、天辺にはベツレヘムの星。そして木の元には黒いコートに身を包んだ男が一人佇んでいる。その足元を良く見れば、人々の映す影よりも昏い何かを纏っていたが、行き交う人々の誰一人、そのことには気付かない。
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