聖者の行進いつか2人で見た映画の主人公は、罪を犯し、追手から逃れるために南を目指して旅立った。
俺たちは何の罪を犯したのだろう。
断片的に脳に流れ込んでくる情景は曖昧で、一度に理解するにはあまりにも鮮烈。
オレンジ色の西陽が差し込む駅のホーム、何度も乗り継ぎして南へ向かう俺たちが辿り着いたここは、自分たちを知る人間は誰もいない。
電車の揺れにウトウトしていた俺は圭介さんに手を引かれて、アスファルトが所々剥がれてでこぼこになった小さなホームに降り立った。
人の気配は無くて、駅名を示した看板は錆びて端が茶色く変色している。改札口も無人で、ブリキの切符入れがポツンと置かれていた。
目の前の一本しかない線路の向こう側の景色は見渡す限りの田園風景と山ばかり。
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