落花流水つれづれに — 桜 —— 序章 —
「義勇さん、不死川さんもこちらに来られてると聞きましたが、どちらにいらっしゃるかご存知ですか?」
義勇と鱗滝、恩人二人と久しぶりの再会を大いに喜んだ後、炭治郎が義勇の顔に目を向ける。すっかり色素が変わってしまった彼の左側の瞳の向く方向が僅かに自分からズレているのに義勇は気づいてしまった。
そんな機能を果たしてない彼の目の事実を改めて思い知らされ、義勇の胸の奥がキリキリと傷んだ。
「どうかしました? 義勇さん。急に難しい顔をして……」
一瞬、表情を翳らせた義勇に直ぐに気がついた炭治郎が、ピクっと僅かに眉をひそめ、鈴のような丸くて大きな瞳をクルクルと動かして反応する。
「いや——。それより、お前は不死川を探しているのか?」
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