お前からキスして 「仁菜ってキス上手くなったよな」
「そ、そうかな?」
突然の芹くんの言葉に私は動揺を含めた声を出す。そんな私を見て芹くんは楽しそうに笑う。そして芹くんは私を膝に乗せたままあることを口にした。
「仁菜、仁菜からキスしてくれよ」
「えっ…!?」
「そんなに驚くことか?」
「だ、だって…芹くん今までそんなこと…」
「うん、今初めて言った。けど可愛い彼女から俺のことを求めて欲しいって、キスして欲しいって思うのは変なことか?」
「う…じゃあ、目瞑って?それなら…する」
「はいはーい。そうそう、ほっぺとかなしだからな?ちゃんと口にすること」
「わ、分かった…」
逃げ道を塞がれてしまった私は目を瞑った無防備な芹くんと対峙することに。しかしこうしてまじまじと芹くんの顔を見ることがないからかつい見入ってしまう。
(やっぱり顔が整ってるし…かっこいいなぁ)
騙された私が言うのも何だけれど、人が良さそうな顔をしている…と思う。この顔で何人たぶらかして来たのだろうかと思えば面白くないのもまた事実で…
「……」
「おーい、仁菜サン?」
「えっ、あ、うん、大丈夫…大丈夫だよ?」
「本当か?」
「本当だってば!」
思わず考えてしまう私を現実に引き戻したのは芹くんの声で、私は腹を括るのだった。
(…よし!)
肩に手を乗せ、そっと触れるだけのキスをする。するとぱちりと芹くんの瞳が開かれてにやりといたずらっぽく笑う。
「顔真っ赤、そんなに緊張することか?」
「す、するよ!だ、だって…ど、ドキドキするし…」
「…俺とだから?」
「…そうだよ。芹くんとだからドキドキするの。芹くん以外じゃダメなの」
その言葉に重く芹くんはため息を吐いた。
「…せ、芹くん?」
「後悔してるとこ。あの時の俺は擦れまくってたとはいえ、お前のはじめてのキスを朔良なんかに譲るんじゃなかった……」
「それは、芹くんがそう仕向けたんでしょ?」
「だから余計だろ…」
こんな風に子供っぽい芹くんを見るのは珍しくて思わず頬を緩んでしまうがそんな私の唇を大人っぽいキスで芹くんは塞いでしまう。
「だから、朔良なんて考えられないくらいいっぱいキスしよう」
そんなことしなくてもとっくに私の中は芹くんでいっぱいだけど、それを口実にキスをしたいと言うこともわかっていて、それに乗ってしまいたいほど私も同じ気持ちだったからその唇を、熱を受け入れた。
-Fin-