【転生ED未来IF】不安を晴らす光となれ 「あまり鍋に近づきすぎるなよ」
「分かってるって!」
今日の夕飯は春巻きにしようとスーパーで決め、今は一緒に作ってる最中。昔から夜に鍛えられたおかげで一緒にキッチンに立つことも今は許されている。けど――
「あつっ…!?」
近づきすぎたわけではないけれど、油が跳ねて私の手首に跳ねた。するとそんな私の声を聴いた夜によって腕を掴まれ手早く蛇口から流れる水によって火傷痕を冷やされてしまう。
「ったく…だから言ったんだ」
そうぶつくさ文句を言いながら冷やしてくれる夜はやっぱり優しいと思う。それを言ったらきっと夜は怒るだろうから言わないけれど。
「俺が鍋見てるから心はそうやって冷やしてろ」
「う、うん…」
ぱっと手が離され夜はそのまま鍋の方へと向かう。その様子を眺めながらぽつりと思っていたことを口に出す。
「……夜ってさあ、」
「ん?」
「…昔から思ってたけど、なんでそんなにって思うくらい…過保護だよね」
「っ…………そ、そうか?」
「自覚してなかったの!?」
「だって、普通じゃないか?」
「普通じゃないよ!さすがに鈍い私でもわかるよ!?だって、私と他の子じゃ対応違うし!」
「……それは、まあ…違うだろ。ただの知り合いと…恋人じゃ、」
「~~~、それはそうだけどそうじゃなくって!」
「???」
「恋人相手だとしてもやりすぎだと思うの!私、別にそんなに弱くないし…夜が思ってるより強いよ!?一人でも生きていけるよ!?」
それはずっと、ずっと、昔から夜に言いたかった言葉だった。面食らったような顔をした夜は揚げたての春巻きを皿に上げると火を止め、こちらを見た。
「まあ、そうだな…やりすぎなのは…心の言う通りだな」
そう言って夜は苦笑いをした。
「…まあ、今更直せそうにもないんだが……昔から、心がいつか俺の前から、俺の手をすり抜けてどこかに消えてしまいそうな気がして…それが怖くて。だから過保護に拍車がかかったのかもしれない...」
「…どうやったら夜の不安はなくなる?」
「…お前が傍にいてくれたら、なくなるかもしれないな。…確証はないが」
自分で夜を追い詰めたのだけれどこうやって弱気な夜はどこか可愛くて私は好きだった。自分なりに笑顔を隠しながらそっと夜に抱き着く。
「わ、……心?」
「ハグってストレスをなくす効果があるんだって。こうしてたら…夜の不安はなくならない?」
「………まだ、まだ足りない」
付き合い始めの頃は違うけれど最近の夜は欲張りになった。けど、謙虚な夜よりも私は好きだった。顔を上げると夜の顔が近づく。
「…目、閉じろよ」
「えー…」
「俺の顔なんて見て楽しいか?」
「楽しいよ?」
「はあ……」
「あはは、分かった分かった!」
そうやって目を瞑れば夜のキスが降りてくる。ちょっとだけ目を開けていたのは夜には内緒だ。…こうやって、夜の不安を取り除けたらいいのになあと思う私だった。
-Fin-