雪道 「へぶっ!」
慣れない雪道に躓き、雪の積もった場所に頭から突っ込んでしまう。
「いたた……」
顔を上げ、寒さに顔を顰めているとイヴァンの笑い声が頭上から聞こえてくる。
「何やってるんですか、あなたは」
「だって~~…」
イヴァンの辛辣な言葉に唇を尖らせながら顔を上げると呆れたような、けれど慈しむような顔をしていて思わずそのまま固まってしまう。すると、そのまま顔についた雪をイヴァンが払いのけてくれて思わずお礼を口にした。
「お礼を言うくらいなら、こけない努力をして下さい」
「が、頑張りま~す…」
苦笑いが零れるが本気でイヴァンが怒っていないことを知っている私は差し出された手を掴んで立ち上がった。
「雪って歩きづらいから大変だなあ」
「慣れたらそんなことないですよ」
「慣れるかなあ…」
「私と一生を共にするんですから頑張って慣れてください、それにあなたは意外と頑張り屋ですから。大丈夫ですよ」
イヴァンに珍しく褒められて嬉しくなってしまう。
「えへへ…そう」
「何、間抜けな顔してるんですか」
「あうっ…」
イヴァンに小突かれ、じとりと睨めばくすくすとイヴァンは笑った。
「…おや、アージェがお呼びのようです。ほら、ゲルダ行きますよ」
「う、うんっ…」
それでも私のペースを気遣ってゆっくり歩いてくれるイヴァンの優しさを実感してしまって私は握る手の力をそっと強めるのだった。
-Fin-