柔らかな宝物 ハデスの館において、眠りの神であるヒュプノスの仕事は基本ステュクスの泉の監視と、ハデス王への謁見者の管理である。
勿論その他にも諸々の仕事を抱えている。タナトスやヘルメスより送られてくる死者数のリストアップ、カロンが送ってきた死者の整列、ハデス王への謁見者の書類作成と整理などなど……すべてを彼一人が行っているわけではないが、それでも本来「居眠り」する暇もないほどの仕事を抱えている。
なので、時としてヒュプノスも持ち場となる謁見の間を離れることがある。特に書類整理は廊下の真ん中では行えない。場合によっては執務室を使う事が多く、その時も瞬間移動を使うのが常であった。
だから「たまには歩いて行こう」などと本当に、本当にただの気まぐれだった。だがその気まぐれのお陰で、かの神は普段目にしない光景を見ることとなる。
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