「シデンくんさ〜なんでいっつもそんな仏頂面なわけ?もう少しアイドルらしく可愛げのある笑顔を振り撒いてみたらどぉ〜お?」
「誰がアイドルだ」
吐き捨てるようにかつ端的にカゲロウへ言い返すシデンだが、たしかに笑顔という笑顔を見せたのはいつだったっけと思ったりもする。若干目を伏せたさまが、傷ついた表情に見えたのか「わー!ごめんてシデンくん、泣かないでくれよ〜!」と慰めを大声で喚きながら抱きついてくるので「やめろ!暑苦しい!泣いてない!」とシデンはじたばたしながら引き剥がそうとする。
「あの写真みたいにいっっっっつもニコニコしてりゃあ、もっと人気出ると思うけどなぁ」
カゲロウは、アジト内にあるカサネ隊、ユイト隊の全員で撮ったパノラマ写真を指差しながら、また心にもなさそうなことを言う。
「うるさいな。僕はこれでも昔と比べて愛想よくしてるほうだぞ」
「あら、昔は愛想なかったの自覚してたのね」
「カサネに言われたくないな!?」
突発的にいつもの喧嘩が始まってしまったのでカゲロウも苦笑いしてしまう。
「シデンくんてば、ほんと感情豊かになったよねぇ」
「そういうカゲロウだってわざとおどける必要がなくなったせいか、感情がほぐれている感じはするね」
クッションを抱いて床に寝そべるアラシがにんまり笑いながら言う。
「んー、とりあえず隠し事なくなったからだいぶ軽くなったかも」
「言動は相変わらず軽いがね」
「おわー手厳し」
あらあらまた喧嘩してるの、とシデンとカサネのやりとりを見て困り顔になったキョウカが顔を出してきた。
「ここまでくると、喧嘩するほど仲が良いって感じかしら」
「な、仲良くなんかあるもんか!」
聞き捨てならないせいか、シデンはカサネと口喧嘩してるくせに外野へすかさず反論をする。
「はーい、シデン。笑顔笑顔」
「うわぁキョウカおねーさま、このタイミングで言うんだ」また吹き出しそうになるカゲロウと釣られて笑うアラシ。
「......」
シデンは言われた通りほんの少し、口角をあげるものの「笑うのが本当に下手なのねシデン」カサネもすかさず茶々を入れる。
「なっ!」
「いつもなんでもない時はちゃんと笑えてるくせに、こういう時に下手なの、あなたらしいわね」
あまりにも自分より自然に笑うものだから、少し照れ臭くなってしまうシデンだった。