「了解、すぐ行くよ」
セルリーダーからの出動要請に、リネンは笑顔で応えた。
通話を切って立ち上がり、自分の戦装束に着替える。黒と緑のトップス、靴と一体になった煽情的なボトムス。
黒い外套に袖を通したところで、ふと彼は足元に視線を落としため息をついた。
「……俺は、あと何回受け止めればいいの……?」
「何ですの?これから新作を試すところだったのに」
お気に入りのカップ麺を開けようとした直前に電話を取った魅朕は、明らかに不機嫌そうな声を上げた。
「……あたしにしかできない?」
しかし、セルリーダーの次の言葉を聞いた瞬間、魅朕は誇らしげに笑った。
「本当でしょうね?嘘だったら許さないわよ」
「うん、いいよ~」
表の仕事を終えて夜の街を歩きながら、ザイカはのんびりと返事をした。
「能力抑えて平凡な社会に溶け込むのも、いい加減飽きてきたからね」
次の瞬間、雑踏からザイカの姿が突然消えた。しかし、今日を生き抜く人々はそれに気づくことはない。夜の喧騒が、何もかもをかき消す。
「………………」
冷たい月光が降り注ぐ路地裏で、俜迓は空を見上げた。飼い主が自分を呼ぶ声が聞こえる。
「…………行かなきゃ」
俜迓は立ち上がり、その場を後にする。物音のなくなったそこにはただ、始末対象の死体だけが残っていた。
「いい夜(グゥッドナイト)、可愛い悪魔ども(マイデビルズ)」
セルの本拠地である廃墟。
傍らに白い髪の少年を侍らせた赤い巨大な悪魔が、指をパチンと鳴らす。
「エンドロールを始めようじゃねェか」
集まった部下たちの顔をぐるりと眺め、悪魔が合図を出すと、皆それぞれ散会し位置につく。
ある者は迷いを笑顔で隠しながら。ある者は当然自分が勝つのだという自信に満ちた顔で、ある者はただ楽しそうに、そしてまたある者は操り人形のような無表情で。
闇夜の宴が始まった。