青い星を追って アステラでの生活にも大分慣れ、ハンターとしてだけでなく加工屋としても腕を奮う機会が持てた。本当はアイツの装備を造ってやりたかったんだが、まだこれといって使いたいものが見つからないらしく、お預けになっている。
そんな折、更に船を走らせた先の拠点セリエナ、其処から調査班リーダーが久しぶりにアステラへ戻った。まだちゃんとした挨拶をしていない面子で集まって顔合わせも済み、その夜は宴会になった。
「よう、活躍目覚ましいんだって?」
そうジョッキを掲げてみせたのは調査班リーダーその人で、鈍い音で乾杯した。
「…そうだ、お前達もセリエナに来てみないか?」
「セリエナに?」
「あっちはまだ人手不足でなぁ…。ハンター業は青い星に任せっきりになっちまってさ、そろそろハンターを融通して貰えないかと思って来たんだよ」
総司令からは気に入ったハンターに声を掛けろ、と言われているらしく、それに選ばれたというのは誇らしい。
「どうする?」
オレは行ってみたいが、ひとりで決める訳にはいかない。振り返ればキラキラした目とぶつかり、笑ってその場で了承した。
セリエナに着いて、調査班リーダーに話を聞いていると不意に誰かを呼び止めた。
「アステラから来て貰ったぞ、これでお前も少しは楽が出来るな」
成程、相手は青い星か。
翡翠の瞳がオレ達に真っ直ぐ向けられ、ひとつ瞬く。
「それは…」
それ、と指すのはオレの装備。
「コレか?アオアシラって牙獣種の素材を使った装備だよ」
「アオアシラ……ユクモの?」
「ああ、よく知ってるな」
「色んなハンターからノートを見せて貰うのが趣味でね」
ふ、と笑ってみせたその顔は案外幼く、もしかしてオレよりずっと若いのかも知れない。
「ああ…じゃあ、ジンオウガを知ってるね?」
「ジンオウガ?」
そりゃあ勿論知ってるが、まさかこんな所まで来てその名を聞くことになろうとはね。
「最近現れるようになったんだけど、中々手強くてね」
手伝ってくれるハンターが欲しかったんだ、と笑うのに曖昧に返して、その場は後にした。
部屋に戻って抱き寄せると、抗わずに体を預けてくる。その肩をゆっくり撫でながら少し話をして、ジンオウガ狩りへの意気込みを尋ねた。
「…正直複雑だけど、でも…吹っ切るのに、丁度いいのかも」
オレとしても、此処で未練を綺麗さっぱり断ち切って身も心も手に入れられたら、という下心があった。