【幽桑】恋.
繋いだ手が熱をもつ。
見下ろす互いの肌はまさに燃えるような橙色で、そろって炎の中にでもいるようだった。桑原の背後、炎の源たる太陽がギラギラと彼の輪郭をまばゆいものにする。
季節はもう冬。光は激しく目を刺すばかりで、見た目ほどぬくもりを齎すものではない。だから、右手に感じる温度が特別に温かいのだ。
浦飯は唇をきゅっと結んだ。
ただの、何の変哲もない、いつもの帰路だったはず。
どうしてこうなったのか。
自分達にしては珍しく何の挑発もせず、だから道草も食わず、ふたり並んで歩いていた。どうでもいい話をしながら差し掛かった分かれ道で、じゃあなと背を向けたとき、手をとられた。
無言だった。
逆光で相手の表情がうまく見えない。
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