ストロベリー事務所を少し空けると留守をアニエスに託し用事を済ませ戻ると、甘ったるい造られたような香りが鼻を掠める。
「妙に甘い香りがするな」
「あ、今キャンディが……」
もごもごと話し辛そうに頬を膨らませ、口元を押さえるアニエス。
口内に食べ物があるのに話してしまい行儀が悪かったとでも言いたげな顔で、目を逸らされた。
「悪い悪い。俺が話しかけた所為だな」
控えめに首を横に振り、何かを思い出したかのようにポケットを漁り始める彼女。キャンディでもくれるのだろうかと期待していると、彼女の表情が徐々に曇っていく。どうやら彼女の口にあるもので最後だったらしい。
そこまで欲しいという訳ではないものの、深く落ち込まれるとどうにも惜しくなってくる。
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