ある兵士の回想彼は文官として皇城へ上がったが、人手が足りず兵士になることになってしまった。
そこで初めて侍大将ベナウィと出会う。
雄々しくもない、男にしては小さく中性的な姿に、こんな人がこの国の侍大将なのかと不安になる。
彼は兵士としてはまあまあの働きをし、時々小隊長などを任されるようになった。
親の趣味でウマによく乗ってたので騎兵に
割とセンスがあったらしい
(親戚がウマの繁殖をしていたので幼い頃からよく乗って遊んだりしていた)
ある時、国のあちこちで反乱が起き、何度か鎮圧に赴いたものの、ついには皇城
まで武装した民たちが押し寄せてきた。
それまではかろうじて持ちこたえてはいたが、ついに皇は破れ新たな国が出来た。
彼はこの戦でひどい怪我を負い、兵士として戦場へ出るのが難しくなってしまった。
数日後の深夜、夜警の交代のため廊下を歩いているとそこにベナウィの姿を見つける。
ベナウィは廊下から城の外を眺めていたが溜息を付きまぶたを閉じる。その時一筋の涙が静かに頬を伝わったのを見た。
彼はなにかいけないものを見たような気がして、踵を返した。
(ベナウィは何を見て何を思っていたのか)
その後、やはり怪我の予後が思わしくない彼はベナウィに相談する。
元々文官として城に上がったが兵士になったこと、怪我のせいでもう戦場には出られないこと。
ハクオロ皇に、どうか文官として働かせてもらえないだろうか、と願いでる。
あの時に見た涙を思い出し、私は死ぬまであなたの役に立ちたいのだと話す。
それを聞いたベナウィは分かりました、聖上に相談してみましょうといい
ハクオロに話をして彼を文官として取り立ててもらう。
文官となった彼は以前よりもベナウィと会う機会が増えた(ハクオロさんが遠征したりして不在がちだった)。
あの時のベナウィ様は一体どんな気持ちだったのか。
自分が命をかけて護っていた国が滅んで、どんな思いだったのか。
新しい皇の下で、今までと同じ侍大将として仕えるのはどんな気持ちなのか。
彼にとっては、インカラ皇はあまりいい皇とは言えなかったし、だからこそハクオロ皇がよい皇なのが分かる。
でもそれは自分にとってであり、ベナウィ様やその副官のクロウ様からはどう見えるのだろうか。
ベナウィ様は、今、幸せなのだろうか、とふと思った。
(結末はまだ決めていない)
幸せですか?
えっ?
ああ、申し訳ありません、変なことをお聞きしました
いいえ、構いませんよ
……そうですね、あなたの言うようにこれが幸せというものなのかもしれませんね
仕える国があり、素晴らしい皇がいて、私はまた侍大将としてここにいられる。あなたは?
私ですか、もちろんです
もう戦には出られませんがようやく文官としてハクオロ皇の、ベナウィ様のお役に立てるのですから
これが幸せでなくて何でしょうか
そうですか、これからもよろしくお願いします
はい