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    CrO3K2Cr2O7

    忍🥚雑受けを描いております。小説もあります。支部で投稿できないものも投げてます。
    支部より過激な表現の絵もあります。不快感を覚える可能性があるのでキャプションを確認してからご覧ください。閲覧は18歳以上の方が自己責任でお願いします。絶対ないと思いますが転載不可です。



    支部:https://www.pixiv.net/users/69304176

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    CrO3K2Cr2O7

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    タソガレドキの七夕、尊くん視点の短いお話です。山本さんが雑渡さんをひっぱたたいたりします。ご注意を。カプは無いけど雑渡さんへの気持ちが暑苦しめの山本さんが出てきます。有名なキャラのあの言葉を雑渡さんに言わせたくて書きました。
    ※父上を亡くした雑渡さんを山本家で引き取った、などのつどい設定前提の描写があります。

    #雑渡昆奈門
    #諸泉尊奈門
    morozumiZonamon
    #山本陣内
    yamamotoJinnai

    星空への梯子七月。タソガレドキ領内の笹は大量に刈り取られる。タソガレドキ恒例の七夕祭りのためである。

    忍者隊は城下の祭りに参加する暇などもちろん無いわけだが、立派な竹は敷地内に飾り付けられていて、願い事の短冊を重そうにまとっている。紙なんか貴重品だから、この日のために買っておいた綺麗な紙を使う人もいれば、失敗書類の白い所や薄色の布の切れ端を使っている人もいる。みんな思い思いの願い事を書いている。妙に古びたものもある。誰かお古の褌、使ってないよな。

    「尊奈門、お前はもう書いたのか」

    「高坂さん。書きましたけどまだ付けてません。高坂さんは?」

    「いの一番に、今日のために都合した紙に書いて吊るした。願いは勿論、組頭…」

    「想像つくからもういいです」

    「お前ちょっと失礼だぞ」

    「いひゃいいひゃい」

    高坂さんにほっぺたを伸ばされて思わず大きな声が出てしまう。気が付くと私たちを組頭と山本さんが見ていた。

    「若い子たちが犬のようにじゃれあってるのっていいよねえ山本」

    「何してるんだみっともない…と言いたい所ですが、こんな時くらいはね」

    「必要な時に狼になれればそれでいいさ。…尊奈門。お前まだ手に短冊持って。早くつけないと願いが叶わないよ?」

    「あっ、はいっ。…えへへ、欲張って出来るだけ高い所につけようと思って、踏み台探してたんです…」

    「欲ねえ…今年こそ土井半助に勝ちたいとか、そんなもんでしょ。お願いよりまず動体視力上げなさい」

    「…はい」

    弱い所を意地悪く突かれて項垂れていたら、組頭がため息をつきながら私の頭をがしがしと荒っぽく撫でた。

    「貸してみろ。私が背伸びすれば、お前が踏み台を使うより高い所に付けられる」

    「組頭ぁ」

    「組頭!またそのように尊奈門を甘やかしながら、本人がやるべき事を取り上げて」

    「いーじゃないめんどくさい。お願い事、読んじゃうけどねムフッ。…なになに『私の大切な」

    「くみがしらッ!」

    「『…私の大切な人たちが、一人も欠けることなく、元気に生きられますように。また来年も一緒にいられますように』…確かにこれは欲張りだねぇ」

    組頭が苦く笑う。強い風がさらさらとわずかに残った葉の音を鳴らす。


    だって。仕方ないじゃないですか組頭。我が儘なんです私は。

    今にも途切れそうな、あなたの呼吸を聞いて越えた夜。広範囲の火傷で汗がかけなくなり、高熱と吐き気と痙攣で苦しむあなたがやっと眠れた朝。そんなあなたを十歳から毎日見ていたら、トラウマもんです。命の重みにだって人一倍ナーバスになりますよ。

    先輩や仲間を亡くしてその度に深く傷つきすぎて、自分には忍者の適性がないなとしみじみ思った。山本さんにそう言ったら、山本さんは私にゆっくり語り掛けてくれた。

    『お前のような奴が組織には必要だ。組頭から良い所だけ学んで強くなれ』

    「尊奈門」

    組頭の大きな手が、短冊を結び付けて一瞬、私の肩に触れる。今日もちょっと熱い。

    「…お前たちは死なないよ。私が守るから」

    「え…」

    「上に立つものは目下の者を守らなくてはいけない。私は山本を助けて亡くなった父上を尊敬している。私は父のように生きたい。そして私は山本たちの助命嘆願と尊奈門の看護で生き延びた命だ。恩義は返す。お前たちを守り通してから死ぬ。だから大丈夫だ」

    あまりの事に、思わず何も言えなくなってしまった。いや違うでしょうそれ。でもどうして父を庇って組頭が死にかけたのか、その精神性を垣間見た気がした。

    …組頭の大事な信念だ。反論しちゃいけない。でも嫌だ。甘ちゃんって言われてもいい。…私の父上は助かってから毎日、泣いておりましたよ…。

    静まり返った空気の中、今度はシャラッと葉が鳴った。強い風が吹いたのかと思った。でも違った、山本さんが風の速さで動いて、組頭の左頬を平手で張り飛ばしていたのだった。

    「…大馬鹿者が!貴方の死骸の上に生き延びて、私たちが自分を誇れるとお思いか!」

    山本さんは怒りで震えていて、組頭は右目を丸くして山本さんを見ている。

    「え、ちょっ、なにいきなり。ひどくないか?私、父上にもぶたれた事ないのに」

    「あなたのお父上はあなたと同じ性格の方でしたからね!…だから二十歳かそこらの若造を庇って死んだりしたんですよ」

    「あれはお前のせいじゃないよ。父上は成すべき事を成して立派に死んだ」

    「そう…立派でしたね。十二歳のあなたを独り遺して死んで。私は山本家に貴方を引き取り育てながらも、雑渡様の面影に苦しんだのに」

    どんどん深くにこやかになっていく、山本さんの笑顔が心底恐ろしい。気圧されて組頭が後ずさる。その襟首を剛腕で掴み上げて、山本さんは猫でも乗せるかのように膝に乗せてしまった。山本さんが組頭の尻をぽんぽんと軽く叩く。組頭は全身を突っ張ってフシャーとでも言いたげに抵抗する。本当に猫みたいだ。こんにゃもんだ。

    「あなたはお父上の死に傷ついているだけです。…そんなことも分からないのか、昆」

    「ふん。全く分からないね。こういう時だけ昆って呼ぶのは卑怯だよ」

    「なら昔みたいに言い聞かせるまでだ」

    「ぎゃん」

    組頭の叫び声と、パァンという小気味いい音が七夕の夜に響く。

    「それもう一発」

    「ふぎゃん」

    私は今、信じられないものを見ている。恐ろしいことに山本さんが組頭の尻を叩いている。これ「言い聞かせて」ない。おもいっきり体罰してます山本さん。

    …うん、山本さんのスパルタへの反発でお父上を求めた面もあるのかもな…。山本さんはにこやかで一見知的だけど脳筋だからな…。

    いつの間にか人が集まって、やんややんやと公開尻たたきを見ている。さすがに恥ずかしくなった組頭がどうにか逃げようとして、高坂さんに秒速で両手足を縛られる。

    「申し訳ありません組頭。私の願い事と小頭の願い事は同じなのです。何を犠牲にしても組頭に生きていて欲しい…だから今日は黙ってぶたれて下さい」

    「勝手な事いうな~ッ、私の命をどうしようと私の、ひぎゃっ」

    「勝手なのはどちらですか」

    「尊奈門んんんんん~助けてェェェェ」

    組頭が私に向かって手を伸ばす。ひらりと短冊が私のほうに飛んで来た。

    『今年も来年も、皆と美味い酒が飲めます様に』

    ……組頭も出来ることならば、自分を含めた平穏の日々を望んでいるのだ。ただ、どんなに望んでも誰かが死ぬのなら自分が、と思っているだけで。思っていたら口にしないと、朴念仁の烏帽子親子には伝わりませんよ。私は笑いを噛み殺しながら、組頭を助けにいくことにした。

    見上げれば金、銀、真珠をばら撒いたような星空が広がる。手を伸ばせば届きそうな、夜の向こうへの梯子。

    まだ連れていかないで下さい、今はまだ。

    見たこともない組頭のお父上に、胸の中だけでそっと囁いた。




    END
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