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    kszm_ota

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    kszm_ota

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    ※勇尾
    ※ギャグ・あほ・ばか
    ※途中でつまんなくなったので止めた

    勇尾ボツ1 ドッ パパパパパッ
     銃声が響き渡る。俺は地面に伏せ、小隊の仲間に指示を出した。
    「十四時方向から敵襲! 突撃兵は俺と左翼から回り込んで敵を撃破、狙撃兵は各自ポイントを抑えろ! メディックと工兵は車両を鹵獲して目標地点へ向かえ!」
    「了解」
    「隊長、ありがとう」
     部下は即座に散開し、各々の目標に向かって走り出した。俺はもう一人の仲間と匍匐で建屋の壁に身を寄せ、なんとか体勢を整えた。打たれっぱなしでは敵の思うつぼだ。反撃して、少しでも敵人員をここに足止めせねば。必死に脳内地図を検索した。向かいのビルなら可能性がある。二階のバルコニーへ入ってしまえば、身を隠しつつ狙撃できるだろう。
    「あのビルに入る!」
     部下へ指示を出すと同時に駆け出した。弾丸が降り注ぐ二車線の道路を駆け抜けロビーに転がり込んだ。もう勝ったも同然だ。
     喜びと共に非常階段のドアを開けると、ザクッと音がして体が崩れ落ち、俺は死んだ。
     一体何が起こったんだ。敵のいる方角からは弾が入らないし、駆けつける頃にはもう二階へ駆け上がっているはずだ。
     うつ伏せに倒れた自分の背中を呆然と見つめていると、ポンと間の抜けた音が鳴って、画面の右上にメッセージが表示された。
    〈お前の環境遅すぎじゃねえ? 階段の前でムーンウォークしてたぜ。ナイフキルごちそうさま~♡〉
     俺を倒した杉元からだ。どおりで銃声がしないと思った。インターネット回線が貧弱すぎて、CGが描写される前に殺されてしまったようだ。
    「……クソ!」
     ゲームのコントローラーを手放し、ベッドに身を投げた。モニターは自分視点からまだ生き残っている仲間の視点に切り替わった。
    「え、尾形ちゃん死んだの! やば! 早く逃げ……おわーっ!」
    「白石どけ! 手榴弾投げ……ああーっ!」 
     先に行かせた白石が確認せずに飛び出し、敵の砲火を食らって死んだ。その後ろにいたキロランケは死んだ白石に自分の投げた手榴弾が跳ね返って自爆。まだアシリパが生きているが多勢に無勢、すぐに負けるだろう。もういい。やる気がなくなった。杉元から回線速度の改善策とかヴァシリからオススメの業者とかメッセージが送られているが、金がないからどれも不可能だ。
     俺ほど世界に愛された者もいない。抜群の勘と強運、どんな状況も見極める目をもって生まれた、天性のスナイパーだ。しかし現代日本では俺のような人間に居場所はない。勉強も社交もそこそこできるが、天職を知りながら己を偽って食う飯は味気ない。一度就職したが馬鹿らしくなってすぐ辞めた。今はデイトレで食っているが、けして豊かではない。月十数万の収入では家賃と食費でほとんど尽きる。部屋なんて狭すぎてまさに兎小屋だ。窓も小さいしベッドも安いし、トイレと風呂が一緒になっているなんて人権侵害もいいところだ。俺は世界に愛されて生まれたが、家と社会に恵まれなかった。父は大企業の総裁、母は銀座のクラブの女だ。これがアメリカの軍人家系だったら、士官にだってなれたのに。
     いや、そうでなくとも幸次郎が俺を跡取りにしていればこんな苦労せずに済んだ。運の悪いことに、俺のすぐ後に本妻との間に弟が生まれてしまった。弟は俺のような才能はないが、顔も頭もいい。学校で良い成績を取れる。性格も穏やかで聞き上手の勇作は、子供の頃から次期社長になるんだと言われて育っている。馬鹿な。俺は長男だぞ。先に生まれたんだから欲しいものは何でも一番に手に入れて然るべきだ。だいたい父も勇作の母親も、あいつの本性を知らない。勇作は俺が食い飽きたハッピー○ーンをやると言ったら「残ってる粉も下さい」と言って兄の顔面をなめ回し、挙げ句手足までベロベロするような卑しい性根だ。花沢の屋敷に行けばおやつも小遣いも貰えるから毎週末通っていたが、あいつといるとゲームをしても外で遊んでもすぐ俺にひっついてベロベロなめられるから、やがて行くのをやめてしまった。おかげで小遣いが足りず好きなゲームを買えなかった。退屈な少年期を過ごしたのは勇作のせいだ。幸次郎ともっと沢山過ごしていれば、俺の才能に気付いて跡継ぎにだってなれた。今こうして貧乏な暮らしをしているのも、全部全部勇作のせいだ。考えたら腹が立ってきたぞ。
    「尾形ー、二戦目いくぞー」
     キロランケの声かけで再びコントローラーを握った。怒りのままに暴れ回り、開幕数分で敵を皆殺しにした。白石が地面に散らばった敵の装備を見ていう。
    「うわ、これ高級武器だ! 尾形ちゃん三八だけあればいいよね? もーらい! 持って帰って売ろ!」
     他の物も大喜びで俺の獲物を漁っている。それを見ていてふと思いついた。
    「そうか……殺しちまえばいいんだ」
    「なんだか不穏な言葉が聞こえたぞ。今のは尾形か?」
    「アシリパちゃんシーッ! 放っておこ! あっ、ほら、コレも売ったら高いよ!」
     弟を殺してしまえばいいんだ。そうしたら花沢家の跡継ぎは俺だけ。会社も財産も全て俺の物だ。父は俺だけを見てくれるし、母だってきっと褒めてくれる。人を殺すなんて想像したこともないが、ゲームでなら俺はプロ級だ。死体はどこぞに埋めちまえばいい。
     そうと決まれば遊んでいる場合ではない。ゲームの電源を落とし、急いで部屋を出た。
     弟とは中学に入った頃から会っていない。勇作は通う学校も生活圏も全く違う坊ちゃんだったから、俺が屋敷に泊まるのを止めたら会う機会が全くなくなった。花沢グループの跡取りとして本社に勤めていることは知っているから、会社の前で待っていれば出てくるだろう。空腹に駆られて兄の汗を舐めるような卑しいやつだ。睫毛が長くて丸々したやつを探せばいい。
     電車に乗って都心へ向かうと、ちょうど退勤ラッシュにぶつかった。もみくちゃにされながらなんとか花沢グループ本社前にたどり着いたが、多くの人が行き交っている。これでは勇作がどんな巨体でも見つけられそうにない。ぶっ殺すと思い立ってすぐ会おうだなんて無謀だった。トメに電話して幸次郎づてに勇作へ取り次いでもらうか。幸次郎ともしばらく話していない。定職についていないことを詰られたりしたら嫌だな。弟を殺したらあいつもやっちまうか。
     スーツで武装した人間達に囲まれて居心地が悪い。退勤の波が収まるまで待とう。ビル脇のベンチにぼんやり座っていると、突然誰かが駆け寄ってきた。
    「す、すみません」
     綺麗な男だった。スキッとした目尻はともすれば冷たく感じそうだが、眉の印象が柔らかい。左右対称に上がった口角も嘘なんて一切ついたことがなさそうだ。ジメジメした都心で、こいつだけ干したてのシーツみたいな乾いた匂いがする。一瞬政治家かと思ったが絶対に違う。人の良さが全体からにじみ出ているし、ブランドものを纏いすぎだ。
     息を切らした男は俺の顔を覗き込んで叫んだ。
    「やっぱり兄様だ!」
    「え?」
    「俺です! 勇作です!」
     これが勇作? 『あにさまの汗おいしい』とヨダレびちょびちょになって笑っていた勇作? 嘘だろおい。幸次郎のずんぐりDNAが一切みられんぞ。ほとんどヒロさんじゃないか。幸次郎が社長と言われても偉そうにしやがって髭モジャめとしか思わんが、こいつが社長なら納得だ。デカい旗なんかで先導された日には機関銃の雨の中だってついていってしまう。これが祝福された人間。それなら、九十九.九九パーセント幸次郎と被っている俺は一体……?
     勇作は俺の前に跪き、涼やかな目元に憂いを浮かべて言った。
    「ああ兄様、ひとりぼっちで一体どうしたのです。父上に会いに来たのですか?」
    「……いや、あなたに会おうと思って」
    「俺!」
     勇作は突然のけぞり、空に向かってガッツポーズを繰り出した。
    「俺に会いに! 兄様が! わああ! 嬉しい! 嬉しい!」
    「勇作さん、声を抑えて下さい。目立ってます」
     勇作の派手な挙動に周囲は釘付けだ。そこかしこから「あれ、常務だよね」とか「あの人ホームレス?」と不審がる声が聞こえる。
    「ハッ……申し訳ありません。取り乱しました。ここでは落ち着いて話せません。よろしければ俺の部屋へ来て下さい」
    「あ、はい」
     弟はキリッとしたサラリーマンに戻り、俺に手を差し伸べた。立ちあがっても離さず、自然に自分の肘にかけさせてエスコートする。
     このまま駅へ向かうのかと思うと、勇作は社屋へ戻ってエレベーターで地下へ向かった。
    「あれ、電車で帰るのでは?」
    「いえ、いつも車通勤です。先ほどふと窓を見下ろしたら兄様が見えたので飛び出してしまいました。ははは」
     いくら血が繋がっているとはいえ、十何年も顔を合せていない相手をあの人混みで判別出来るだろうか。俺は多分無理だ。なんだかそら恐ろしくなって話題を逸らした。
    「勇作さん、ご結婚は」
    「はい、兄様とならいつでも」
    「そうじゃなくて、一緒に暮らしている相手はいないんですか」
     弟はポッと頬を染め、声を潜めた。
    「実は兄様のお部屋を用意して、一緒に暮らしているつもりでいたのです。想像するだけでも元気がでるので」
    「そうですか」
    「はい、このまま一緒に暮らして下さい」
    「ははは、相変わらず狂った冗談がお上手で」
    「いえいえ、冗談などでは」
     なんだ。昔と変わらないじゃないか。外見が良すぎて少し臆したが、頭の中が残念なのはちゃんと父親に似ていて安心した。
     勇作の車は高そうな外国車だった。格好良いですねと褒めると良かったら差し上げますと言われた。貰うまでもなく俺のものになるので断った。
     マンションも凄かった。五十階建てハイタワーの最上階で、ワンフロア占有。他人の家を土台にした大豪邸だ。高層のため窓は開けられないが換気システムがしっかりついていて、バルコニーの代わりにサンルームがあった。リビングは俺が暮らす安アパートが丸っと一つ入ってしまいそうなくらい広い。天井も高くて二メートル以上ある。リビングは東京の摩天楼を見下ろす大パノラマ。本革ソファは俺と勇作が並んで転がってもまだ余裕がある。もはやベッドだ。
    「今日からここが俺の家か……」
     感激して思わず本音を漏らしてしまったが、勇作は馬鹿なのでうんうん頷いた。
    「ところで兄様、俺に一体なんの御用ですか?」
    「あ……えーと」
     まさか殺しに来たとは言えない。兄ならば弟を制圧するのも楽勝だろうと高をくくってきたが、勇作は俺より十五センチも背が高い。思えば昔からこいつを押え込めたためしがない。今も両腕でぎっちり捕まえられてしまっているし、殺すなら寝込みを襲うしかない。
    「随分会っていなかったし、さみしくて」
     喜びそうな答えを言ったのに、勇作はスンッと表情を落とした。
    「嘘です。兄様は俺を嫌って避けていました」
    「き、気付いていたのか」
     勇作は動揺する俺を真っ直ぐ見据えた。
    「なんの御用ですか。兄様のためならば粉骨砕身なんでも致しますが、結婚の許可だけはどんなお相手でも承服できかねます」
    「いや結婚に誰かの許可はいらないし、ただ顔を見ようと思って」
    「いいえ、最後にお会いしたとき、次会うときはお前の葬式だと仰っていました。だから俺は兄様より先に死なないよう気をつけていたのです」
    「お前さっき会社飛び出してきたよな」
    「だってこんなに立派になられた姿を見たら我慢出来なくて」
     勇作は俺の上に全身でのしかかった。
    「お、重い」
    「兄様、何しにいらしたんですか」
     勇作は俺の履いているジャージの上から内股を擽った。
    「あっ、ばかやめろ」
    「正直に答えて下さるまで止めません」
     長い指が緩んだウェストの間から滑り込み、腹や脇を撫でさする。これだから嫌なのだ。勇作は昔からすぐ俺を擽る。
    「あっあっ」
    「相変わらず色が白くて敏感ですね……ああ、兄様の匂い」
     勇作は俺のへそに鼻をつっこんでグリグリする。
    「ばかっ、はなせっ」
     身を捩っていると衣類がよじれて脱げていく。腹を空かして喘ぐ勇作の下で腹と股を晒してしまった。勇作は俺の膝を持ち上げ、内股をさすってため息をついた。
    「はああ……こんなにむちむちに育って。なんて美味しそうな太ももでしょう」
     ぬるるるっ、べろお、んちゅんちゅ
    「はあっ、はあっ、うう……っ、ああっ、あっ」
     勇作は人の脚を涎まみれにすると、おもむろに顔を上げて「はあ」とため息をついた。脚を掴む指に力がこもって少し痛い。優しげな目元がキリッとつり上がり、欲望に燃えている。なぜかつられて下半身が反応してしまった。当然勇作はすぐに気付いて顔を上げた。俺の勃起を見ても引くどころか、ぐっと根元を握りしめる。
    「兄様、俺に、なんの御用です?」
    「はあ、はあ、別に、何も、なんでもない」
    「へえ、言えないようなことをしにきたんですか」
     勇作が口を大きく開けた。綺麗な歯並びが俺の内股を捕らえる。
    「た、食べるなっ」
     かぷっ
    「あっ」
     じゅるるるるるる――っっ
    「んあッッ」
     食いついた顎の中で、水気たっぷりに柔肌を吸われ、同時にちんぽを揉まれる。人に触られるのは初めてだ。自分のとは全く違う加減、手触り、リズムに腰がずくずく重くなる。
    ぺろぺろぺろぺろ~、ねろん、ねろん、ちゅっちゅっちゅ
     ぐいー、ぐにっぐにっ、ぎゅっ、ぎゅ~~
    「はあ、はあ、ああ、うう、勇作」
     体に力が入らない。俺の脚は吸った跡と歯形で真っ赤、使い古して薄い下着は濡れて黒ずんでいる。弟の手の中でピクピク震えるなんて屈辱だ。
     勇作は口を離さぬまま、じっと俺を見下ろしている。
    「こ……殺しにきた。お前がいなければ、父上が俺を認めてくれるはずだ。跡継ぎになれば金に困らないと、思って」
     殺しに来た相手に擽られた挙げ句、白状させられるなんて。まあ外でも殺す方法はいくらでもあるし。
     今すぐ出て行けと放り出されるかと思ったが、勇作は涎まみれの口でにこっと笑って朗らかな声を上げた。
    「なんだ、そんなことでしたか。それならそうと早く仰って下されば良いのに」
    「嫌じゃないのか」 
    「俺は生まれた瞬間から兄様のものですから。体だって命だって兄様の好きにしてくださっていいのです」
    「そうか。じゃあ早速」
     勇んで起き上がると、勇作は急に縮こまって俯いた。
    「でも、一つだけ心残りが。それを果たすまでは死んでも死にきれません」
     大金持ちになれると思うと急に心が広くなった。多少のわがままは聞いてやろう。
    「じゃあそれを果たしてから殺します。なんでも言って下さい」
    「兄様とセックスがしたい」
    「今なんと?」
     聞き間違えたかと思って尋ねる。勇作は俺の上でしなをつくり、うるうるした上目遣いで繰り返した。
    「兄様とセックスがしたい」
    「では女性を手配します。俺は外で時間を潰していますから」
    「兄様と、セックスが、したい」
     だめだ。勇作はこうなると要求を呑むまで頑として動かない。
    「……なぜ俺なんです?」
    「俺が身を捧げる相手は兄様以外ありえません。精通する前から心に決めておりました」
    「う」
     まっすぐに狂気を突きつけられてひるんでしまった。勇作はここぞとばかりに俺を押し倒し、下着越しに股をぴったり寄せた。
     ……勃起してる。
    「ゆ、勇作さん。これから死ぬって時に冗談はやめましょう。俺たちは兄弟ですよ。いけません」
    「同じ種で生まれ、一緒に遊んで食事をして風呂に入って床へ就くのは良くて、どうしてセックスはいけないのです」
    「倫理的に駄目だからです」
    「これから死ぬ人間にそんなもの意味ありませんよ」
    「お、俺は嫌だ」
    「なら仕方ありません。おそらく成仏出来ずに毎晩兄様の枕元へ立ってしまうと思いますが……さ、どうぞ兄様、ひと思いに」
    「ぐっ」
     参ったな。それはウザいことこの上ない。オバケは殺せないし。
    「ああでも万が一、あなたに受け入れて貰えたら、思い残すことはありません」
     勇作はLEDの後光を背負い、俺のちんぽに自分を当てて前後に擦り始めた。
     ずり……ぐりぃ……ぐっ……ぐっ……
    「おっ、押すな、別の要求なら飲むから」
     ちんぽをぐりぐりされて頭が働かなくなってきた。勇作はリズミカルに腰を振り、セックスの予行演習をしながら今にも泣きそうな顔で俺を脅迫した。
    「あなた以外に望むものなどありはしない」
     しゅりっ、しゅりっ、ぐい~、ずるんっ
     格好つけやがって、キザな台詞と下品な腰の動きが全く一致していない。勇作のちんぽは俺より二回りデカい。ぶっとい尿道に俺のカリが包み込まれてしまう。こんなの入れたら絶対裂ける。
    「俺は初めてだし、あなたのはデカすぎる。痛いのは嫌だ」
    「兄様の体を傷めるようなことは絶対にしませんから」
     そう言って俺の胸元に顔を沈め、シャツ越しにつまつまと乳首を食んだ。
    「あ、ちょっと、そこはずるいっ、あ、はあ、ああ~」
     勇作は俺の乳首の先端を歯で捕らえたまま吸った。強烈な刺激で俺の腰も一緒につき上がる。
     ぎゅう~~、ぐりぐりぐりっ 
    「あああやだやだやだやだ、離れろ」
     勇作の頭を押し返すと乳首も伸びた。しくじった。これじゃ余計に気持ち良くなる。手足がピンと伸び、腰が勝手に揺れる。
    「ハアッハアッ、イ、イッ……」
    握ってこする以外知らないのに口が勝手に予告する。しかし乳首もちんぽも刺激が強くて絶頂を迎える余裕がない。俺の体は俺と違って奥ゆかしく、か弱いのだ。
    「ううう……するから……も……やさしく……」
     自分の耳でも聞き逃しそうな小声だったが、勇作はちゃんと聞いていた。俺の腰に腕を回し、ぐっと抱きしめる。筋肉で豊満な胸の谷間にちんぽが挟まれた。
    「あっ」
     ほかほかした予感にぶわああと鳥肌が立つ。勇作は顎を開き、俺の乳首をぱくっとくわえた。
     ぢゅううううう
     布越しの乳首を吸われた。勇作の暖かい胸に抱かれたちんぽがびくびく震える。
    「ああああっっ」 
     ビクッ、ビクッ
    「はふっ、はあっ、ああ……っ」
     イケそうでイケなかった屈辱に震える。勇作は飛び起き、クソ広いリビングを跳ね回って喜びの声を上げた。
    「やった――!」
    「はあ、はあ、ああ……ちくしょう……」
     なんでこんなことになってしまったのだろう。下半身が言うことを聞いていればキッパリ断れたのに自分から強請るなんて。全部父のせいだ。あいつが堪え性のないちんぽ野郎だから息子の俺もこんなことに。よし、勇作を殺したら幸次郎も殺そう。
     ソファで伸びて血を呪っていると、走り回って満足した勇作が戻ってきた。すごい笑顔だ。
    「兄様、さあ準備をしましょう。初めてと仰ってましたよね。こんなこともあろうかと道具は揃えております。お手伝いしますから」
    「準備ってなんですか」
    「直腸内をぬるま湯で洗浄し、潤滑剤を使って肛門を解します」
    「洗浄」
     それはケツの中身を洗われるということか。俺に人前で汚水をぶちまけろと? 想像しただけで血の気が引いた。
     いやちょっと待て。思い切り汚ない姿を見せたらさすがに萎えるのでは? そうしたら穏便に抜きっこで終わるだろ。
     それに人の死体はドラマや映画より壮絶だと聞く。排泄くらいなんだ。勇作だって絞殺したり刺殺したりすれば腹の中身ぶちまけるだろう。
     おあいこだと覚悟を決め、勇作と風呂場へ向かった。
     勇作は紳士だった。洗浄用の柔らかいノズルをそっと挿入するといちにいさんしい……と一緒に数を数え、適量の湯が溜まると「どうぞ」と耳を塞いで後ろを向いた。おかげで想像以上に楽だった。
     五回ほど中を洗い、風呂場を出た。セックスの前準備と言うより、人間ドックで検査を受けるときのような感覚。拍子抜けだ。
     ふわふわ厚手の高級バスタオルで包まれ、シルクのバスローブを堪能しつつベッドルームへ案内された。広い家だと自然と生活感が薄れるものだが、勇作のベッドは少し寝乱れていて、ようやくこいつも生きているんだなと実感を得た。
    「では兄様、こちらへどうぞ」
    「絶対痛くするなよ。ちょっとでも切れたりしたらその場でぶっ殺してやる」
    「はい、肝に銘じます」
    「……一発だけだからな」
     ダブルベッドの真ん中で仰向けになると、勇作がそっと俺の膝を開いた。そのままぐっと尻を高く持ち上げ、腰の下にクッションを挟まれる。実の弟に股間を丸出しにしているのが忍びなく、なんとなく腕で顔を覆った。勇作は俺の尻を鷲づかみ左右に開いた。指がそっと肛門のふちをなぞり、くにくにくぱくぱ押し開く。
    「っ」
     ケツを天井に向けるなんて赤ん坊みたいだ。一体どんな面で兄貴の股を覗いてるんだろう。
     ちら、と腕をずらして様子を窺うと、弟は大きい口を開け、長い舌を尻穴に突き刺そうとしていた。
    「ま……っ!」
     っぬぶ
     ぞわわわわっっ。さっきの比じゃない刺激に襲われ、全身の毛が逆立った。衝撃で胸がきゅうと締め付けられて苦しい。
    「っっっは、はあっ、なに、して」
     身を起こそうと体を丸めるも、ますますケツを高く上げてしまう。弟は尻たぶを揉みしだきつつ、俺の粘膜を浅く短く掘る。
     ぬるっぬるっぬるっぬるっぬるっぬるっぬるっぬるっ 
    「ひっ、はっ、はっ、やめっ、んおっ、おおっ」
     どんなに心で拒絶しようと体は受け入れてしまう。萎えきっていたちんぽも一気に膨張し、透明の液体をつらつら吐いて喜んでいる。鳥肌が止まない。膝も腰も無様にカクカク揺れている。抵抗する力もでず、俺は涙目で喘ぐしかなかった。
    「はぁっ、はぁっ……うっ、ふかっあああっ」
     ずぶう~、ぢゅぶっ、ぬぶりゅっ、ぐっ、ぐっ 
     勇作は俺の尻を目一杯押し開き、顔面を押しつけて舌を入れる。勃起により敏感になった会陰を硬い鼻先でぐりぐりされると腹に力が入ってしまう。波打って異物を押し出そうとするのだ。当然勇作は波に抵抗して出て行くことはない。俺の自律神経は一人で頑張って、反動で腸が緩む。そこを狙って勇作は舌を暴れさせた。
     びちびちびちびちびちびちっ
    「おあああああ」
     ガクガクガクッッ、きゅうっ、きゅんきゅんっ
     刺激でまた腹が締まり、括約筋が舌を捕らえようとする。勇作は抗い、腸が脱力するまで待ってからさらに掘り進める。
     りゅん、ぬりゅう、ぬりゅりゅりゅっ
    「はぐっ、くううっっ」
     ぎゅううう、ぎゅっ、ぎゅっ
     ずるううう、ずぬっずぬっ
    「ああああっ」
     きゅううううううっっ、ガクガクガクガクッッ
     ぬろろろろろっっ
    「ううううっ」
     締める、抵抗する、痙攣。その繰り返し。全身運動をしている俺は分が悪い。やがて締め付けるより痙攣の割合が増え、最終的には疲れ切って抵抗もろくに出来なくなった。涙と鼻水を垂れ流し、全身をきゅんきゅん震わせるだけの人形だ。
    「はひっ、はひっ、も、やめ……」
     ぬぢぬぢぬぢぬぢぬぢぬぢぬぢっっ
    「んんんんっっっ」
     ぷしゃっ……がくがくがくがくっ……ぷしゃっ……ぷしゃっ……
     腹筋の間を液体が流れ落ちる。勢いよく出てはいるが精液ではなく先走りだ。勇作はようやく口を離した。
    「はあ……っ、はあ……っ」 
    「はあ~、想像以上にお可愛らしい。こんなに濡らして。肌も桜色に染まっていますね」
     俺の濡れた腹をすりすり撫でると、透明の体液をぬろぉと舐めとった。息をするのが精一杯で悪態を吐く元気もない。
    「ふぐう……」
    「ふふふ、しょっぱい……。次の支度をしてまいります」
     勇作が退いてようやく脚を伸ばすことが出来た。うつぶせに願えると、こわばり続けた太ももの筋肉がじわあと伸びていく。
     開放と痙攣をプログラムされた肛門は勇作の舌が抜けても勝手にくぱくぱぴくぴく動いている。その度に爪先まで痺れるような感覚がする。こんなに長く強い性感に晒されたことはない。神経が拡張されているみたいだ。
     血圧がちんぽと粘膜に行ってしまったため、頭はぼんやりとろけて鼓膜もぼわぼわして遠い。全身汗だくだし、痙攣しすぎて腹は半分攣っている。目玉がうろうろするのに任せていると時計が目に入った。この家に来てから二時間以上経っている。
     勇作は別室をのそのそ歩き回っている。もう挿入するのだろう。痛くてもいいからさっさと終わらせろクソが。いっそ全てを忘れてこのまま寝たい。マットレスに沈んでいると、勇作が戻ってきた。
    「お待たせしました」
     手にローションと水色のシートを数枚持っている。アダルトビデオで見た。ペットシーツだ。うんざりして見上げると、弟はおよそスケベとはほど遠い綺麗な笑顔で言った。
    「準備運動が終わったので、指で解していきますね」
     二時間も尻をべろべろして、まだやるのか?
    「死んでしまう」
     正直な感想が口をついて出た。
    「兄様、死んだら俺を殺せませんよ。頑張ってください」
     勇作はうつ伏せた俺の下にシーツを差し込み、ケツの割れ目にローションをひり出した。ぬくい。キッチンで湯煎でもしてきたのか。逆に腹が立つ。
     だがこの屈辱を耐えれば夢に見た生活が待っている。俺を神童と崇める父、感激して抱きしめる母、なんでも買える金、才能を発揮できる環境、超高速ネット回線、パソコン、あとは……高級車?
     勇作の言うとおり、頑張るんだ百之助。弟を殺し、欲しいものを手に入れるためなら、尻が切れるくらい。
    「兄様に才能があってよかった。楽しんで貰えて嬉しいです」
    「何も楽しくない! いいからさっさと済ませろっ」
     地の底を這うような声を出しても、弟は全く萎える気配がない。なめらかなシルクの丘にボコッと不自然な隆起を起こして俺の横に寝そべった。尻の割れ目に手を入れると、肌の上でローションをぴちょんぴちょんと叩いた。
    「んっ」
    「ああ、しっかり緩んでいますね。指一本くらいなら奥まで……」
     ぬぷぷぷっっ
    「うあああ……っ」
     勇作は中指を挿入した。舌とはまったく感触が違う。径は小さいが長いし、存在感が強い。根元まで沈めたり関節の節を出し入れしたり、少し折り曲げて背骨側を抉ったりそのまま手首をひねったり。
     ぬっ、ぬぽっぬぽっ、ぐりぃ……くりくりくりくり
    「アッ! はあああ、はんっ、ふ、ふ、うううう」
     刺激を受ける度足が跳ねる。頑張れ俺、負けるな、負けるな。
    「兄様、上手に力を抜けていますよ。ほら、ここが分かりますか」
     勇作が俺の中のどこかを押し込んだ。
     ぐりぃ……ぐうう~……
     腹の底に知らないダイヤルがある。それが一気に最大まで回った。
    「あっ? あっ、な、な、なん、はぅ、はっ、はっ、はっ」
    「気持ちいいでしょう?」
     ぐに、ぐに、ぬるぅ~
    「ああ、なんだ、俺に何を……っ、うう~、そこ、おすなっ」 
     インターバルでしおれていたちんぽがムクムク起き上がり、冷め切ったはずの興奮が舞い戻って俺のへそから下を包み込む。勇作はそれを見透かしたようにふくらはぎから太ももまでをさらりとなで上げた。尻がずっぽりハマった指を締め上げた。締めて、緩めて、震えて、締めて。繰り返しが止まない。
    「ちくしょう……っまた勝手に……ううう」
    「その調子です。もっと動いて、気持ち良いところに当てて」
     勇作に言われて自分が尻を浮かせて振っていることに気付いた。
    「へ……あっ、あっ、くそっ」
     勇作が俺がカクカク揺する腰の下に手を滑り込ませた。再びだらだら濡れるちんぽを握り、根元からいやらしくしごく。
     ぬる……っ、ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ
    「アッ! だめっ! 握るな! しごくな!」
    「駄目? どうして。気持ち良いのは悪いことではありませんよ。ほら。兄様の喜びに触れて、俺もこんなになってしまった」
     勇作が俺の脚に身を寄せた。湿った熱の塊がシルクの裏で脈打ち、俺の肌を濡らす。勇作は官能的なため息を吐いた。
    「ああ……兄様」
    「うーっ」
     耳の中に息を吹き込まれて歯を食いしばる。尻の奥とちんぽを握られて動けない。シーツを握り絞め、子鹿のようにぷるぷる震えている。勇作は自分も感じながら、指をゆっくり引き抜いた。
     ぬちゅううう……っ
     抜ける寸前で爪先だけ残し、ぬかるみとなった粘膜を擽った。
     くちゅくちゅ、くちゅくちゅくちゅくちゅ
     中を押されるより甘やかで、舌より確かな形。喉の奥から恍惚が湧き上がり、唇からこぼれ落ちる。
    「はふぇぁあぁあぁ」  
     信じられない。舌ならだいたいどこでも気持ち良いとは思うが、尻に指を突っ込まれて感じるなんて。
    「素晴らしい。先に進んでもよさそうだ」
     愉悦でぷるぷる震えている間に勇作がローションを足した。さっきより体温が上がったせいで冷たく感じる。ペットシーツは俺の吐き出す粘液とシリコンでぬとぬと。不織布と肌の擦れ合うぴったり絡めた二本を右に左にねじりながら、収縮する腸に割り入る。さっきより太くて存在感がある。圧迫感も大きい。これがいつもの排泄ならしんどくて一旦諦める太さだ。だが体は一度拾ってしまった快楽を手放さない。拡張の背徳感が肌の下を駆け巡っている。
     ぐちょ、ぬちゅりゅ、ぬりゅ、ぬぷううう
    「ハアッ、ハアッ、だめだ、勇作、ふかいの、だめ」
     駄目といいつつ股が勝手に開く。マットレスの上で尻を高く上げ、もっと深く刺してくれと強請ってしまう。勇作は俺の耳を愛撫しながら囁く。
    「もう止めますか? 残念ですが、あなたが眠る時そばにいられるのなら、それもいい。ねえ兄様。毎晩俺を思って下さいますよね」
     勇作は情けない声を上げつつ、一切止める気配がない。指をわずかに折り曲げ、カーブの真ん中を縁でしごく。
     ぬぽっぬぽっぬぽっぬぽっ
    「あああ無理、むり、はあ、はあ」 
    「さあ、どうぞ勇作を殺してください。素手ですか? 道具を使いますか? 叶うなら、兄様の唇で溺れて死にたい」
    「そんなことしたら、もう絶対に」
     勇作は俺の肩を押し、仰向けに返した。勇作は涼しい表情にきらきらと汗を纏っていた。濡れた短い前髪が束になって額に張り付き、同じく睫毛濡れて、目元を妖艶にしている。
    「もう絶対に、どうなりますか」
     絶対にケツだけでイっちまう。オナ禁一ヶ月目のちんぽよりも穴がヒクついている。もはや恐怖より期待の方が大きい。
    「兄様、口づけても?」
     勇作の口元を凝視した。下唇に噛みしめた跡が付いている。これだけ好き勝手やっといて我慢してるアピールかよ。うざったい。
     顔がぐっと近づいて絡んでいた視線が解ける。柔肌同士がわずかい擦れ合って、ビリッと電流が走る。
    「は……んっ」
     ひるんだ俺の唇を、勇作はかぷっと奪った。最初は本当に唇だけを確かめた。色の境目、高い縁を舌先でそろそろなぞり、俺の口が緩むと今度は歯列を確かめる。
     勇作の唾液は甘かった。舌は押しつけられた股ぐらと同じくらい熱くて重たい。
    「はぶ、じゅるう、ねちょ、ぬるう」
    「ふんん、は、は、はふ」
     やはり粘膜と粘膜の触れ合いは刺激が強すぎる。細胞の粒と粒がぶつかってぞろりとしなる感触で全身の神経がビンと張り詰めた。
     その間も指はずっぶり根元までハマっていて、俺が飛び跳ねない程度に押しつけられている。キスと同じ調子で性器に集まる器官をこね回され、腰が浮く。 
    「は、あ、あ、あ」
     カクカクカクカクッッ ビクッビクッ 
     勇作は調子に乗って俺の舌に舌を重ね、前後にぬぷぬぷピストンした。当然、突っ込んでる指も前後に動く。
     ぬぷぷぷっ、ぬろ~~、ぬるんっ、ぬるんっ、にゅる~ 
    「ふぐっ、ふんんっ、んんっ、ンふ~~」 
     だめだ。気持ち良すぎる。痙攣が止まらない。もしかして本当にケツだけでイってるのかもしれない。こんなの最後まで頑張れない。あれ、何を頑張るんだったか。全然痛くないし、尻穴が裂けるような気配もない。このまま身を任せて問題ないのではないか。
     そんな甘い考えが湧いて目の前のうなじをそっと握ると、勇作はビクンッと体を震わせた。体に入っている指がぐいと折りまがり、例の感度が馬鹿になるダイヤルをぐりいと押し込む。柔らかい舌での交接と、硬い指にほじられる感覚を合せたら、それはもうほとんど本番セックスだ。
     本能がせがむままに勇作の肩や背中を引っ掻いて身もだえた。勇作は堪えきれんという様子でのしかかり、二本の指で俺を犯す。行儀の良かった舌も正体を現わし、口内を獰猛に引っ掻き回している。
    「じゅるう、ぢゅぼっ、ちゅうう、ちゅぷっ」
    「は、フウ、フー、うううっ、ハアッ、あふっ、はあ、ふあ」
     夢中で口を吸い合っているうち、脚も絡め取られた。発熱した筋肉質な手足にガッチリ捕まってもう逃れられない。
    「ハアッ、兄様、あまり急かさないで……っ」
     余裕を無くした弟は幼い頃のように俺と頬ぺたを合わせてぐりぐり押しつけた。大人の男の甘ったるいフェロモンが顔面に張り付いて意識がくらりと揺れる。その隙に弟は指を増やした。
     ぐちゅ……ぬるり、ぬる、ずっ、ぐちっ
     小さな生き物みたいに、三本の指を順番に繰りだし、俺の中を少しずつ少しずつ進む。 
    「ひ、広がってる、俺の、あなが、あながぁ」
    「あっ、兄様、逃げてはいけない。あと少しですから」
     恐怖と快楽の狭間でのたうち回った。勇作は俺を強く抱きしめた。無我夢中で太い指を迎え、肌と肌の間が汗で馴染みきったころ、ずるりと体の中が空いた。
    「ハッ……ハッ……」
     朦朧として視界が霞む。勇作が俺の足元で膝立ちになった。
    「はあ、はあ、兄様……」
     しっとりした光を纏う体の真ん中がそそり立っている。支度が終わった体はそれを見て心臓をきゅんきゅん戦慄いている。
     この後に及んで後悔が湧き起こってきた。本当に馬鹿なことをした。家に入ったら問答無用でぶっ殺しちまえば良かったんだ。こんな湿った心持ちでする行為は取引じゃない。ただのセックスだ。
    <未完>
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