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    戌丸アット@94

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    戌丸アット@94

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    移動させました。

    #ナギカン

    虫刺され注意報「うぅ…なんでありましょう…」

    痒い!と言う感覚で朝、目を覚ましたカンタロウは慌てて服を脱ぎながら時間を確認して風呂場へ駆け込んだ。
    すると見事な虫刺されが、ぷっくりと出来上がっており絶望する。
    何故なら虫刺されは右胸、もとい乳輪辺りに出来ており、少し汗を流したが痒さは上がるし身に覚えのある違和感。
    もとい快感に風呂場の壁へと額からの頭突きを一つすると恥ずかしさを持ちつつも朝から抜く羽目になった。

    「………うーん、仕方ないでありますな」

    はぁ、とため息をついてバスタオルで身体を拭いてみる。
    だが結局、痒みは居座っており、絆創膏で患部を封印する事にした。
    そして真面目に薬まで塗ってしまったカンタロウは、そんな行為が逆効果の敏感になる方法だなんて知らなかったのだが彼は真面目な馬鹿であった。

    「おはようございます!!!」
    「おはようございます、朝からよくそんなに元気ですね」
    「えへへ、お褒めの言葉ありがとうであります!!!サギョウ先輩!」
    「いや、褒めてないです」

    あれぇ!?と驚いてしまうカンタロウに慣れてきたのかサギョウは、アッサリと「そんな事は良いから、さっさと巡回を済ませて来て下さい」と呆れているのか疲れているのか。
    それとも両方かもしれない表情で武器保管庫の鍵を渡してきた。
    どうやら今日はサギョウが鍵当番らしい、と察したカンタロウは受け取った後、いつも通りパイルバンカーの動作確認や警棒の装備、そして防刃ベストの着用をする。
    その後は鍵を締めて、当番であるサギョウに返すと早速、巡回へと向かう。
    吸対の制服だけでなく防刃ベストまで着用するのは辻斬り対策だ。
    だがカンタロウは、その肝心の防刃ベストにより見事に痒みが再発していた。

    絆創膏を貼っていなかったら防刃ベストが直に当たっていたかもしれない!
    これなら本日の勤務にも集中出来るであります!
    など内心、最初はひと安心していた。
    しかし残念な事に不運というのは度重なる事があるのは一般的ではないだろうか。

    「っひ、うわ!?」
    「ぐぁ!?っお前は何処を見てッヒュ!またオマエかッ!」
    「あ、つ、辻田さんっ…ぶつかってしまい、申し訳ありません!!!」

    この時お互いに意味は違えど、マズイ!!!と脳内でシンクロしていた。
    勿論、辻田さんことナギリは前々から妙に懐いてくるカンタロウも彼が所持するパイルバンカーも苦手である。
    そして肝心のカンタロウは。

    「相変わらず煩いって…お前なんで顔が赤いんだ」
    「へっ!?!!?あ、いや、ちょっと制服が熱いからかもしれません!ご心配して頂き、感謝であります!」
    「嘘つけ、明らかに血色が可笑しいだろうが!」

    なんだコイツ、いつにも増して怖い…と引いているナギリの様子に、冷や汗が止まらないカンタロウは一歩も動けずにいた。
    今は動かないことにより冷や汗を出しているだけで済んでいるが、ぶつかってしまった自分の胸から全身へと快感と痺れが駆け巡ってきて動けないのだ。
    そもそも痒いだけだと思っていた虫刺されは今となっては異常であると流石のカンタロウにも分かるが、どうしようもない。
    正直すぐにでも公園などの何処かのトイレでも行って、サッサと済ませてしまって職務に戻れないだろうか?と逆上せそうな頭で考える。

    「ほ、本当に申し訳ありませんでした!お詫びは日を改めてさせて頂きたいであります!」
    「詫びなんぞ必要ないから来るな!!!」
    「し、しかし!…ぅっ!」
    「……はぁ、お前、本当は熱がっ冷た!」

    熱があるんじゃないか?とナギリが聞こうとした時だった。
    ゴロゴロと聞き慣れた空からの音がしたかと思えば、あっという間に雨が降り注いできた。
    ゲリラ豪雨である。

    「くそっ!これだから雨は嫌いだ!鬱陶しい!!!最悪だ!くそっ!」
    「辻田さん!あそこの廃ビルの下なら入れそうであります!!!」
    「なんでお前と雨宿りなんぞっ………ぐぅぅううう!走れ!!!馬鹿!!!」

    はい!と意気揚々と答えたカンタロウだったが不幸続きは雨では洗い流せないらしい。
    ゲリラ豪雨で濡れた身体は痺れが残っており、真っ白な吸対の制服が汚れるくらいには壮大に転んだ。

    「この馬鹿ーーーっ!!!…っあ?おい、警官?」
    「っヒュ、す、すいません!今、行く、で、あります!!!」
    「お、おう……気のせいか?」

    この時カンタロウは自分が制服を汚して転んだ事に辻田さんは引いてしまったのだと思っていた。
    勿論、恥ずかしいが今は恥ずかしがっている場合じゃない!と辻田さんを雨宿りさせた後でトイレでも探そう、などと考えながらガムシャラに走った。
    だがナギリが困惑していた本当の理由は別にある。
    いつもならナギリはカンタロウの様子を好都合と捉えて始末しようとするか、早く目の前から消えてほしいと思って気にしないようにしていただろう。
    だが今日のカンタロウは明らかに体調が悪そうな事もあったが、妙にカンタロウから吸血鬼の気配を纏っていた気がしたのだ。
    それも自分ではない誰かの吸血鬼の気配が色濃く。
    だが彼も吸対の所属なのだから退治でもしたのだろうと、吸血鬼の気配が鬱陶しく、何より謎の苛立ちがナギリの逆鱗を刺激していたが藪蛇はゴメンだと考え直し、気にしない事にするつもりだった。
    だがナギリもまた厄日だったのかもしれない。

    「ふぅ、とりあえず雨宿り出来て何よりでありますね!」
    「……あぁ」
    「あれ、辻田さん?ハッ!もしや身体が冷えてしまいましたか!?」
    「違う!」
    「えっと…では、どうされました?その、凄い近い気がするであります!」
    「やはりこの気配…って、おい!顔を赤くするな!殺すぞ!!!」
    「あ、あれ!?本官、赤いでありますか!?」

    は?と流石にナギリもカンタロウの言葉に驚いた。
    まさか赤面している自覚がないと返ってくるとは思わなかったのだ。
    先程から自分とカンタロウ以外の気配を感じて落ち着かないし、明らかにカンタロウは普段と違って何処か怯えているような印象を受ける。
    ましてやカンタロウを馬鹿警官と認識しているナギリではあるが、自分が赤面しているか分からないのは明らかに可笑しい。

    「……お前なにか隠してないか?」
    「ふぁっ!?え、な、何故そうお思いに?」
    「はぁ、予想できたが本当に隠すの下手だな?」
    「うぅ!た、確かに何故か、よく嘘がバレる事はあるであります!…その、実は先程から胸が痒くてぇ…!」
    「……は?」
    「正確には右胸に虫刺されのような痕があるのでありますが本官には身に覚えがないにも関わらず痒みが酷くてですね!」
    「具体的に言わんで良い!!!そういうプレイは一人で静かに外から出ずにやれとかの前に仕事中に何してるんだ貴様は!!!死ね!!!」

    一息でかなりのお叱りをしてくる辻田さんに、うぇーん!!!誤解でありまぁぁぁ!!!と流石のカンタロウも勘違いされた事に慌てた。
    呆れて顔を背けてしまった辻田さんにカンタロウは普段通り、肩か腕でも掴もうとした。
    だがカンタロウの手は何処も掴めずに失敗に終わり、受け身も取れずに突然、膝から崩れた。
    これには自他共に体力には自信のあるカンタロウは勿論、目の前で突然、倒れて四つん這いになったまま動かないカンタロウの様子に流石のナギリもビビる。

    「お、おい!どうした!」
    「あ、ぐぅ!?っー!つ、じたさん!!!はっ、う、本官は急用、思い出し、たので失礼します!!!」
    「そんな事はまともに立ち上がってから言え!チッ、とりあえずもっと建物の奥に入れば服を脱げるだろ!」
    「え?本官、別に露出する趣味は…はっ!別に辻田さんの趣味を否定したい訳では!」
    「やかましい!!!俺に露出趣味はない!!!」

    明らかに服が雨で濡れたせいでカンタロウの調子は悪くなっている。
    そう判断したナギリは、よろけながら立ち上がったカンタロウの前を通って廃ビルを探索した。
    温まる物があるか分からない状況だったが風が吹いて冷えるよりマシなのはナギリも同じだ。
    そして何より、もう一つ。
    痒いだけにしては妙な反応をするカンタロウの患部、いわゆる痒いところを確認したくなった。
    ナギリの予想が正しければ、カンタロウの痒いと言う部分は何処ぞの吸血鬼が仕込んだものかもしれないと考えたのだ。
    見たことのない態度のカンタロウの腕を引っ張ることで廃ビルの中を進んだナギリは、ふっと今の状況は普段とは逆だと頭に過ぎって頭を振って冷静になる。
    馬鹿が移ったかもしれない、と自分の考えに嫌気が差しながら先程、先回りして見つけておいた部屋へと入った。
    この部屋には大量に座布団やクッションが置いてあったので、かき集めてボロボロのシーツを被せてマットレスの偽物を作る。
    今はナギリとしても休める場所が欲しかった。

    「まぁ、こんなものか…っておい!?どうした!?」
    「ハァ、っ、ぅ、アレ?辻田さ、ん…?」
    「…チッ!そこだ、そこに座れ」
    「ハ、イ…っうぅ!」

    マットレスを完成させた頃になるとカンタロウは完全にいつもの大声を出せない程、弱り始めていた。
    ナギリが準備をしている時などは何故か腹を抱えるように自分の身体を抱き締めて、足は纏めており、まるで赤子のように身体を縮めていた。
    呼吸のリズムもどんどん早くなっており、赤面した顔から汗が大量に流れて襟足は色が代わっている。
    ズリズリ、と肩を壁に預けたりしつつ移動したカンタロウは何とか倒れずにマットレスに座る事に成功した。
    このように移動できたのは明らかにカンタロウの化物じみた体力のなせる技でしかない。
    ナギリから見ても分からないしカンタロウ自身に自覚はなかった。
    だが、この時。
    常人なら軽く意識が飛びそうになる程の熱と快感がカンタロウの身体の中には渦巻いていた。
    そして体力が化物じみていようと、症状が収まらないようなら、その体力もいずれ尽きるのは当然の結果だろう。

    「脱がせるから大人しくしてろ」
    「へ?あ、いえ、大丈夫で、す!せ、せめて自分でします!」
    「……あのなぁ!そういう台詞は俺の手を払い除ける事が出来てから言え!抵抗もまともに出来ない癖に動くな!邪魔だ!!!」
    「うぅ…申し、わけ、ぁりません…」
    「はぁ…くそっ!なんで、おれ、が……って、おい、なんだコレは」
    「コレとは?……え!?な、ななっ!コレ、なんで、あります、か!?」

    見慣れた筈のポロッと大粒の涙を溢して泣くカンタロウに何処か居た堪れない気持ちを感じ、困惑する。
    何故なら普段は人の手を掴んで離さないカンタロウの手は面白いほどアッサリ、ナギリの手に負けるとマットレスに放り出していたからだ。
    そんなカンタロウの姿に、ナギリは謎の満たされている感覚があった。
    だが自分の意志とは違う!と思い、明らかに自分の中にあるものが満たされる感覚に動揺する。
    所謂、他の吸血鬼が欲しがる畏怖欲に近いのだろうか?と考えたが深く考える暇はない。
    そんな風にお互いが余裕もなくなってきた頃、ナギリにとっては忌々しい防刃ベストも外す事に成功すると、カンタロウの右胸もとい乳首の横辺りから絆創膏では隠せないほど大きな茨模様がはみ出している光景に絶句した。
    しかも模様は、そのまま胸を覆い隠すように茨が絡まっている形で不規則に少しずつ拡がっている。
    一瞬なんで絆創膏を貼っているんだ?と思ったがカンタロウの様子を参考にせずとも異常な光景だったのだ。
    だが犯人は分かる。
    模様からは吸血鬼の独特の気配があるからだ。
    この茨模様の印は、カンタロウの胸にアッサリと居座っていると思うとナギリは、まるで辻斬りでありながらカンタロウの行動を気にする自分が馬鹿にされたような気がしてシンプルにムカついた。
    こんな模様なんぞに負けはしない。

    「おい、触るぞ」
    「えっ?…ッひ、ぁああ!?ぁ、ぐっぅんんん!!!んんんーっ!!!」
    「ど、どうした!?……まぁいい!この際、声はどっちでも良いからじっとしてろ!」
    「んんんーっ!!!エホッ、っぁあ!!!ま、待って!待って欲しいで、ありまっっっひぅう!!!」

    ナギリは触れただけだ。
    だがイヤイヤ、と子供がするように顔を振りながらカンタロウは必死に嫌がり、普段では信じられない程の弱々しい手がナギリの手や身体を押し返してきた。
    だが振り払う必要がない程にチカラは弱く、ナギリは無視することにした。
    しかも一瞬のムカつきから何も考えずに触れてしまい、カンタロウの尋常ではない様子が気になったが今は負けん気の方が優先していた。
    カンタロウが騒がしいのは珍しいと思わなかったのだ。
    なので結局カンタロウがマットに倒れた事で、ようやく様子を気にしてナギリは驚いていた。
    カンタロウが嗚咽を漏らし、泣いていたが顔は見せまいと両腕で必死に顔を隠し始めていたからだ。

    「お、おい?」
    「ぅ、グスッ!ヒック、ん、つじたさぁっ!」
    「は、はい!?いや、違う!その、なんだ!」
    「ほ、本官、こんな、どうしたらぃいか、わからなっくてっ!こんな、つもりじゃっ!」
    「わ、分かった!引いてる訳じゃないから泣くな!」
    「ホ、ント、ぇ、あり、ます、ぁ?」

    声は喋る度に泣き声と喘いで掠れた声、そしていつもの聞き慣れた声がごちゃまぜになりながらカンタロウが聞いてくる。
    ナギリも至近距離なので、カンタロウが動揺している理由は分かっている。
    雨に濡れているので分かりやすくなっているカンタロウの様子や、匂いから察してカンタロウは何故か射精してしまっている。
    だが不用意に触った自覚はあるので、まさかあのカンタロウがここまで恥じて泣くとは思わず動揺したが不思議と引く事はなかった。
    寧ろ身に覚えのある多幸感に今、自分は畏怖欲が満たされているとナギリは自覚していた。

    「もう分かったから泣くな!!!…その、俺も不用意だった」
    「っいえ!辻田さんは悪くなっ、ヒャっ!!?え、辻田さん?ぁ、まって!ま、本当にマズ、いでありまっ、ヒァ!」
    「…俺が治してやる」
    「えっ?それはっぃ、っんん!なぁ、んで、つじた、さ、はぅ!」

    治してやると言って再び胸を触る辻田さん、そして再び右胸を襲ってきた快感はカンタロウの頭の中を真っ白にした。
    目を見開いているのに何も見えず、目の前はパチパチとある筈のない光が弾けていて、掻き集めた理性が何とか声だけでも出ないように!と自分の左腕を噛む。
    だが先程よりも襲ってきた快感は強く、ヒンヤリとした温度に身体は勝手に跳ねて、優しく撫でてきた手に声が勝手に泣き声をあげていた。
    何よりカンタロウが我慢しようと顎にチカラを入れると、何故か容赦なく右胸を掴まれた。
    先端に位置する乳首はカンタロウの様子に合わせて、摘まれたり押されたりと容赦がない。
    まさかあの辻田さんが自分の反応を楽しんでいるのだろうか?とカンタロウは考えたが、すぐに右胸からの苦しいほどの快感でそんな考えは消えた。

    「ぁあ、あ!ま、またダメ!ダメ、でありまひぅっ!も、許しっんん、ぁあ!」
    「……ぐっ」
    「つ、じたさっ!ほ、んかん、こぇ、がっ!」
    「っ出したければ勝手にしろ!……あと少しだ」
    「ふぇ?ッッヒァ!?んんっ!」

    熱に溶けたような思考で、なんとか辻田さんにまた嫌われてしまう!と思ったカンタロウは必死に言葉を出そうとするが、身体が快感で震えて自分でも信じられない声しか出てこない。
    だが重かった身体は辻田さんが触り始めてからは何故か少しずつ楽になっている感覚があった。
    その楽さは逆効果で、身体に熱が篭もるのを感じていたので意味はなかったが。

    「んんっ!つじた、さぁ!もう、本かっマズイ、でありま、すっ!」
    「煩い!あと少しで解除できる!」
    「で、でもぉ!っぅあ!」

    もう少しで解除出来ると聞いて、辻田さんは模様を消そうとしてくれているのか!と感激したが解除できると言われても快感はどんどん強くなっていく。
    流石のカンタロウも手が触れただけで身体のチカラが抜けるほどの強い快感に、口を閉じる事も出来ずに快感はいつまで続くのだろうと途方に暮れた。
    すると。

    「大体、ずっと気になってたがお前はなんで絆創膏をこんな所に貼ってるんだ?邪魔だ、馬鹿!」
    「っひゃあぁああ!!?」

    正直、カンタロウは指摘されるまで存在を忘れるほど快感に翻弄されていた。
    それに剥がされた感覚は、カンタロウにとって今日一番強い快感となって声を我慢する間もなく達するには充分だった。
    そして達した感覚はカンタロウにとって自分の身に起こった事だと信じられなかった。
    だが丁度、辻田さんも起き上がって身体を離してくれたので少しホッとする。
    元々、好かれていない事は薄々気付いてるので今更、気持ち悪がられても同じでありましょう!と思いつつも少し落ち込む。
    そして何より、もしかして本官は胸だけで達してしまったのでは?と言う事実に気付いてしまったので自分の頬を叩いて気合いを入れ直す。

    「その、お前、喉は大丈夫か?」
    「はっ、ふー…辻田さん!!!申し訳ありません!!!」
    「煩い!!!って、そうじゃなくて」
    「起き上がるのは難しそうでありますが平気であります!!!」
    「おい!人の話を逸らすな!」
    「ほ、本当にご迷惑をおかkッケホ、ゴホッ、グッ!」
    「馬鹿!喋るな!」

    呆れたいつもの声だったが、いつもなら当の昔に気配を悟らせないようにしながら姿を消していた辻田さんが今も側に居ることがカンタロウには嬉しくもあり、不思議でもあった。
    辻田さんは優しい方なので心配して、側に居てくれているのだろうか?と思ったりもした。
    だが自分は更に濡れてしまったので身体を無理にでも動かし、辻田さんが居なくなってから何処かで服が洗えないか探さないと巡回から帰れない、と焦って咽る。
    そんな風にカンタロウの中で辻田さんに対する好感度が勝手に上がっている事を知らない辻田さんことナギリもまた焦っていた。
    カンタロウの胸に出来ていた模様に対して詳しい訳ではなかったが吸血鬼の仕業である事だけは分かっていた。
    その証拠にカンタロウは女にも負けないほど乱れていたし、今も体力のお陰で気絶せずに済んでいるが起き上がれずにいるのは明らかに何か施されていたのは明白だ。
    ちょっとした意趣返しのつもりで触れて、それが解除方法となったのは偶々だ。
    それよりもナギリは自分の下半身が身に覚えのある重みを持っている事実の方が焦る。
    恐らく自分も勃っているからだ。
    だが確認なんて出来ない、自分が恐ろしくて。

    「ケホッ、申しわげ、ありまぜっ!模様も、ょぐ、分からな、て…」
    「俺も知らん、それよりお前は服を着ろ」
    「あ……そ、それは…」
    「なんだ?早くしろ」
    「す、いません…少しだけ、待ってほし、ぃ、であります」
    「はぁ?まさか…お前、動けないのか!?」
    「うぇーん!申し訳、あ、りません!」

    でも何とかします!と声は大分、元気を取り戻していたがカンタロウの動きは何もかも遅く、まともにマットレスからも起き上がれずに元に戻っている始末である。
    ふっとそんな様子のカンタロウを見て、ナギリは気付いた。
    これは普段、邪魔をしてくるカンタロウを斬るチャンスだと。
    そう、ナギリは完全に畏怖欲に酔っていた。

    「わっ!?辻田さん?どうしたでありますか?」
    「貴様、いい加減にしろよ」
    「え!?すいません!!!あ、でも本当に腕が上がらないだけでなので、もう少し休めば動けそうであります!」
    「いいや、それじゃ遅いぞ、ノロマぁ」
    「辻田さん、本当にどうされたのでありますか!?っぁ、ぐっ!?」

    ようやく目の前の目障りな男を斬れるのだ、と気分が上がるのを自覚しつつもナギリは自分を止めようと思わない。
    チカラの抜けているカンタロウには痛いらしいが自分の指が肌に沈む感覚。
    そして濡れた瞳で見つめてくるカンタロウが、ナギリにとって心地良かった。

    「覚悟しろ!」
    「ぐっ!これは血の!……血の、えっと花、でありますか?」
    「な!?はぁあ!!?なんだこの気色の悪いものは!」

    次の瞬間、ナギリの手の上。
    更に説明するとカンタロウの左腕を傷つけたのは、ダーツの矢の様に刺さった薔薇だった。
    どうやら花に詳しくないのか、カンタロウは薔薇の形とは気付かなかったらしい。
    すると窓の方から聞き慣れない声が入ってきた。

    「もうーっ!ようやく見つけたぞ!せっかく付けた印を消したのは、そこの貴様かっ!」
    「やかましい!!!邪魔するな!くそ吸血鬼がっ!」
    「あれ、貴様も吸kぶぇーーーっ!!!!!」
    「わーっ!?落ち着いて下さい、辻田さぁぁ!!?」

    突然の第三者に完全に最悪のタイミングで現れた吸血鬼をナギリは名乗る前に思いっきり殴るしかなかった。
    このやり場の無いチカラを逃がす場所がないので虚しいのだ。
    すると吸血鬼が殴られて気絶したことで術も解けたのか、薔薇はポタポタとカンタロウの左腕を汚して消えていく。
    そんなカンタロウの姿は、色んな意味で頭に血が上ったナギリには目に毒だった。
    気付けば血濡れのカンタロウの左腕に再び噛み付いていた。
    そして不味い血の味が口に広がってきて驚く。

    「いや、本当に不味い!!!」
    「吸血鬼の方でないと血液は確かに不味いと思うのであります!」
    「な、ちがっっっくそっ!!!」

    本能からか無意識に舐めてしまったが吸血鬼の血なのだと気付いて納得する。
    血は不味くて吐いたからかカンタロウは吸血鬼の血が混ざらないように応急処置をしてくれたのだと勘違いした。
    だがナギリにとって今は勘違いが有難い。
    もうヤケクソだ、勘違いを利用してやる!と改めて開き直って、ナギリはカンタロウの腕に口を当ててみた。

    「あいてて!申し訳ありません、処置していただいて…またお詫びの品を持っていくであります!」
    「チッ、来なくていい!」
    「え、でも」
    「お前は、まず服を着ろ!」
    「それは勿論でありまっっあーっ!?今、何時でありますか!?急いで帰らねば!!!」

    流石に怒られてしまうであります!と慌ててシャツを締めて防刃ベストと上着をひとまとめに持って慌ただしくするカンタロウの姿は先程の弱々しさはない。
    何より気絶している吸血鬼を俵持ちしたカンタロウの姿に、元気になるのが早すぎるだろうとナギリは引いた。
    先程までの軟弱な姿は嘘か夢だったんじゃないか?と考えないようにすることに決めた。
    ただカンタロウの耳や首筋が、やけに赤く染まっていたので不思議だったがナギリは、ハッと気付いた。
    カンタロウは吸血鬼の血が入らないように処置していると勘違いしていた。
    なら久しぶりの食事の為に少し位は血を抜いてしまえば良かったと後悔した。
    だが後の祭りなので致し方ない、と不貞寝する事にしたのでナギリは、カンタロウの空元気に気付かなかった。
    限界の来ていたカンタロウはアッサリと空元気を使い切ると少し先に進んだ廊下で気絶している吸血鬼と共に蹲る羽目になっていた。
    流石にマズイと思った時だ。

    「居ました、副隊長!」
    「っぅ、あ…副隊ちょ、はんだ先ぱぃ………」
    「おい、カンタロウ大丈夫か!?凄い汗だな…もう大丈夫だぞ!喋らずとも良い、安心してくれ」
    「血を吸われたのか?とりあえず騒がれていた吸血鬼と合致して…カンタロウ、どうした?」
    「え…カンタロウ?ちょ!?しっかりするんだ!カンタロウ!」

    ヒューと過呼吸のように喉が息を通す音を立てつつ、カンタロウは瞼が重くて堪らず、目を閉じる。
    すると瞳の外でヒナイチ副隊長と半田先輩の慌てているような声が聞こえたが、カンタロウは答えられそうになかった。
    ただ意識が落ちる直前、少し間を開けてカンタロウ!?と驚く声と共に居る筈のない辻田さんの声がした気がした。
    折角、自分の名前を彼の声で呼んでくれた気がしたのに、と思ったがカンタロウは疲労感から耐えられず、そのまま気を失ったのだった。



    END?
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