夏祭りの夜 夏祭りに行こうと決め、けれど一緒に行くのではなく待ち合わせて行こうとなった。わざわざそんな面倒を掛けなくても、なんて思ったのだが、いざ指定された場所へ行って目に飛び込んだ、浴衣姿の恋人。
いつも通り前髪は垂らしているが、後ろは纏めて簪を…それも、以前凝り過ぎて装飾過多になってしまったものを差していて、空色に大きな朝顔が映える浴衣を落ち着いた緑の帯で締めている。初めて見るそれはどう見ても女物だが、元々中性的な見た目も相まってとてもよく似合っていた。
「……似合っ、て、る…?」
恐る恐る訊いてくるのに言葉を返せず、ただ抱き寄せて他の男の目から隠すくらいしか出来なかった。
手を繋いで歩くのは嫌がられることが多いが、今夜ばかりは文句も言わずに隣に並んでくれた。こう人が多くてはいちいち他人を気にしてはいないし、はぐれる危険性を考慮すれば繋いでいた方がいい、と思ってくれたんだろう。
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