「せーんーせー」
「なぁ、って」
聞いてる?なんて見ればわかることを改めて聞いてみたところで答えはない。ネロの声には耳を貸さず、けれど上機嫌な気配はしている。
つまり、ファウストはめちゃくちゃ酔っている。
なんでこうなった。
晩酌の誘いを受けた。それはいい。
ネロは自分の部屋でつまみを作って準備していた。
そこに酒瓶を抱いたファウストがやってくる。
うん、それもいつもどおり。
最近はすっかりベッドを椅子に飲むことが増えた。テーブルの代わりに小さなトレイを間に挟んで、以前よりも緩んだ距離が落ち着くようになっていた。
まぁ、なんだ、ベッドだと酔っぱらってそういう気分になったときにももつれ込みやすいっていうのもいい。
だから珍しく酔いが回るのが早くて上機嫌だったファウストが、肩に手を回してきたから今日はそういう日かなと思えば――ファウストに膝枕された状態でグルーミングよろしく頭を撫でられ続けている。
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