ココ武「苦手なもの」
なんの脈絡もなくぶっ込まれた質問をオウム返しする。
「ああ、そうだ」
アジトのソファに座るイヌピーがどこかソワついた仕草で指を組んでいるのを視界に収めながら、らしくねぇ質問をしてくるなと視線を手元の携帯に戻そうとした時に気づいた。
薄く開いた扉からチラリと見える靴先。
扉の向こうで落ち着きなく踏み変えられるスニーカーに察してしまう。
イヌピーがらしくない質問をした理由なんざひとつだ。
どんな魂胆があるのかオレたちとナカヨシごっこをしたがる花垣が戦犯だろう。
それで「苦手なもの」を聞くとかガキかよ。
ハッと鼻を鳴らしたくなったがイヌピーの強い視線を感じてため息に切り替えた。早く答えろと目力で急かす幼馴染に思考を巡らせる。
3387