凛と一緒(5) 順調な時にこそ致命的な損傷が生まれやすい。蟻の穴から堤崩れる、という諺通りの事故が、突如として起こるものだ。
十月半ばの日曜日の朝、スマホの目覚まし機能で覚醒した潔だが、画面の時計表示を見るなり、ぎょっと跳ねた。今日は吉良とのデート日だ。
やば。布団から飛び起きて急いで身を整える。母が用意してくれた朝ごはんを急いで掻き込んで時計を見ると、ぎりぎり間に合う時間だった。
行ってきます、と飛び出そうとしたところ、母が呼び止めた。
「世っちゃんどこ行くの?」
「と、友達と遊びにいく!」
吉良とのことは家族にも内密なので、心苦しいがそう嘘ついた。母は困ったわ~と顔色を変えた。
「今日は凛くんがご家族さんと一緒にうちに来る日なんだけど…」
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