わたしはカボチャ 一瞬、自分の睡眠時間はそんなに足りなかったのかと、火村は心の中で実際何時間寝たのかを指折り数えてしまった。
寝不足から頭が動いていないから聞き間違えをしたのではないか。そうとしか思えないことを目の前の男は言ってのけたのだ。
「やから、心斎橋のあの店、知っとるやろ? 予約しといたから十五日は絶対に明けとけって。ついにボケたか、センセイ」
「俺が聞いてるのはそこじゃない。いや、そこも大いに問題だと思うんだが、その前」
「その前……、君の誕生日やから盛大に」
「そこだ」
火村は座りなれたソファに深々と背を預け、「そこが、って?」ときょとんとしたままの友人を見た。間もなく最新作が発売されるという彼は、しばしの休息に入っているらしい。床屋に行ったのだろう、すっきりとした髪型の下の顔は、顔色がとてもいい。
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