ワンドロ【噂話】【ラッピング】 女性というのはいつの時代も噂話が好きらしい。
夕方の知恵の殿堂。資料を返すために知恵の殿堂にいたアルハイゼンは、近くの椅子に座った学生たちの声に手をとめる。
「ねぇ、フォンテーヌで広まってる噂のこと知ってる?」
「十二月のある夜に、枕元に届くプレゼントの話?」
「そうそう! スメールでは聞かない風習だけどロマンがあるわよね」
『素敵な風習でしょう?』
ゆっくりと話す声が、女学生たちの声に混じって聞こえた気がした。幼さを残したアルハイゼンの頬をシワの多い手が優しく撫でる。その手のひらはゆっくりと頭の上に乗せられ、少しはねた銀髪をまるく撫でおろした。
その噂は幼い頃に祖母から聞いたことがある。
妙論派としてフォンテーヌへ勉強に行った祖母は、冬の街が美しく輝き、赤色と緑色に染まっていたことに驚いたという。フォンテーヌには、十二月の夜にいい子のところへプレゼントが届くという言い伝えがあるそうだ。
1997